UNIVERSAL AUDIOは、オーディオI/OのApollo Solo(写真左)とApollo Solo USB(同右)をリリースしました。これらは同社が手掛けるApolloシリーズの中で、一番コンパクトなモデル。なおApollo SoloはThunderbolt 3接続、Apollo Solo USBはUSB3.0接続かつWindows専用となっています。早速レビューしていきましょう。
Windows 環境でも使用可能
Unison で実機アンプの音をリアルに再現
Apollo SoloとApollo Solo USBは、最高24ビット/192kHzの録音/再生に対応するアナログ2イン/4アウト(ライン2系統+ヘッドフォン)のオーディオI/O。ボーカルや楽器の録音からストリーミング配信サービスなどへの納品まで、音楽制作全般において十分使える高品質なAD/DAを搭載しています。
先述したようにThunderbolt 3端子のあるコンピューターをお持ちの場合は、Apollo Soloを購入してThunderbolt 3ケーブルで接続。Windowsマシンをお使いの場合はApollo Solo USBを購入してUSB 3.0 SuperSpeed対応のUSBケーブルで接続可能です。なおApollo Soloはバス・パワー駆動ですが、Apollo Solo USBはそうでないため電源アダプターが付属しています(それぞれ接続ケーブルは別売り)。
Apollo SoloとApollo Solo USBが他社のオーディオI/Oと大きく違うのは、UNIVERSAL AUDIOが開発するUnisonテクノロジー搭載のマイクプリと、UAD-2 Soloコア・プロセッサーと呼ばれるDSPを内蔵しているところ。両機種共、このマイクプリを2基とDSPを1基搭載しており、Unisonテクノロジー対応のものを含むUAD-2プラグインを併用することによって、さまざまなマイクプリやギター・アンプ/ベース・アンプのサウンドをリアルに再現することができるのです。
つまりApollo Solo/Apollo Solo USBが1台あれば、本格的なスタジオ・クオリティでの録音が可能。しかも、このUAD-2 Soloコア・プロセッサーによって自分の演奏音とモニター音の間にほとんどズレが生まれない、ニアゼロ・レイテンシーでのレコーディングを体験することができます。
また、Apollo Solo+Mac環境ではUNIVERSAL AUDIO製ソフトウェアを含めたレコーディング環境Luna Recording Systemを構築できるのもポイントです。
Apollo SoloとApollo Solo USBの外観は、リア・パネルを除いて全く同じ仕様です。トップ・パネルの右側には大きなレベル・ノブを採用し、この下部にあるPREAMPスイッチを押すと入力ゲインを、MONITORスイッチを押すと後述するメイン・アウト/ヘッドフォン・アウトの音量を調節することができます。
トップ・パネルの左側には入出力レベルのインジケーターと、その下部に6つのボタンを搭載。左から、入力の切り替えを行うINPUTボタン、ローカット・ボタン、48Vファンタム電源ボタン、PAD(−20dB)ボタン、位相反転ボタン、ステレオ・リンク・ボタンと、レコーディングに必要な機能がずらりと並んでいて便利です。
フロント・パネルには、ギターやベースなどのハイインピーダンスの楽器接続に適したHi-Z対応入力端子(フォーン)と、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)を装備。
またHi-Z対応のライン入力端子にケーブルを接続すると、リア・パネルにあるマイク/ライン・イン1(XLR/フォーン・コンボ)は自動的に無効となる仕様になっています。
Apollo SoloとApollo Solo USBのリア・パネルも見てみましょう。まずApollo Soloですが、左からコンピューターと接続するためのThunderbolt 3端子のほか、メイン・アウト(TRSフォーンL/R)、マイク/ライン・イン1&2(XLR/フォーン・コンボ)を搭載。バス・パワーで動作するため非常にシンプルな印象です。続いてApollo Solo USBのリア・パネル。左から電源スイッチ、DC 入力端子、コンピューター接続用のUSB Type-C端子があり、そのほかの入出力はApollo Soloと同じ仕様です。
密度の濃いローミッドが得られるメイン・アウト
UAD-2プラグイン9種類が付属
ここからは、実際にApollo Solo USBをWindowsマシンに接続して使ってみましょう。まずは普段からリファレンスにしている音源を再生したところ、筆者がいつも使用している環境と比べてハイが滑らかな印象。とても聴きやすいです。
次は、筆者が現在制作中の楽曲を再生。業務上聴こえていないと困る繊細なノイズが問題無く確認できたので、出音の再現性は高いと言えるでしょう。
メイン・アウトの全体的な感想としてハイ/ミッドは滑らか、150〜600Hz付近のローミッドは密度が濃い反面、50Hz以下のローエンドは控えめだと感じました。
ヘッドフォン・アウトもチェック。音の輪郭や硬さを印象付ける2〜6kHzはくっきりしており、明りょうだと感じます。一方、量感を担うローミッドは控えめ。これはネガティブな意味ではなく相対的に音量が若干小さいというだけで、ROLAND TR-808系キック・ベースを鳴らした際のピッチや楽曲全体におけるバランスは、むしろこのくらいの方が把握しやすいでしょう。
今度はレコーディングで試してみます。まずはギターやベースをHi-Z 入力に直差しして録音。素のままの録り音は、色付けの無い“ 素直なサウンド”です。ちなみにApollo SoloとApollo Solo USBには、内蔵DSPで動作するUAD-2プラグイン・バンドルRealtime Analog Classics Bundleが付属。ギター・アンプのMarshall Plexi Classic Amplifierや、ディストーションのRaw Distortion、コンプレッサーのTeletronix LA-2A Classic Leveling Amplifier (Legacy)や1176SE/LN Classic Limiting Amplifiers (Legacy)、EQのPultec Pro Equalizers (Legacy)、そのほかチャンネル・ストリップやリバーブなど全9種類のUAD-2プラグインが収録されています。
今回は、この中からプリアンプ/EQプラグインのUA 610-B Tube Preamp & EQを入力チャンネルにインサートし、エフェクトのかけ録りを行います。
真空管シミュレートの恩恵を最大限に得るべく入力ゲインを+10dBにし、音が大きくなった分レベルを下げます。
Unisonの特徴として、使用するプラグインに合わせてインピーダンスなどがハードウェア上で変更されるため、モデリングだけでなく入力信号特性までも含めた再現が可能となっています。この結果、より豊かなサウンドで収録することができました。素直に“ 太くて格好良い音”と言え、いつまでも演奏していたくなります。
10kHz付近が明りょうなUnisonマイクプリ
システム全体として即戦力となり得る
次にマイクをXLRケーブルでマイク/ライン・イン1に接続し、自分の声を録音。入力した音声は内蔵マイクプリで増幅されDAWに送られるので、マイクプリの特性を知っておくことはとても重要です。録音した声を確認すると、若干輪郭がはっきりした傾向。ボーカルのシビランスやアコギのギラつき感にかかわる帯域である10kHz付近は敏感に反応しますが、500〜900Hz付近の中域はやや控えめな印象です。その一方、Unisonで先ほどのUA 610-B Preamp & EQを用いてかけ録りすると、太く存在感のある音色が得られました。
マイクプリ特有の色付けは各社どの製品にもあるものなので、“良い/悪い”という判断ではなく、マイクプリの傾向を把握してサウンド・メイクすることが大切。そうすることによって、イメージ通りの録り音を得ることができるのです。
§
ここまで駆け足でApollo SoloとApollo Solo USBを見てきましたが、いかがでしたでしょうか? これからDAWを使った音楽制作を始める人には、少々価格が高いと感じる方も居るかもしれません。しかしここまで述べてきたように、Apollo SoloとApollo Solo USBは録音/再生においてプロの制作で使用しても十分なレベルの完成度。付属のUAD-2プラグインのバンドルも即戦力です。
プラグインは一度インストールしてしまえば末永く使えるものなので、その観点から見ても“ 非常にコスト・パフォーマンスに優れている”と言えるでしょう。特にUAD-2プラグインは高品質なので、ビギナーにもまずはこれをお薦めします。それ以外にも多数のUAD-2プラグインがリリースされているので、別途購入すればさらに音作りの幅が広がることでしょう。
レコーディングは、音源完成までの長い道のりの出発点。そのスタートが良い状態だと、後々の作業がとても楽になります。モバイル環境での作業用に、筆者も1台購入したいと思いました。
SUI
【Profile】作曲、トラック・メイクからボーカルのディレクション、ミックス・ダウン、マスタリングまで手掛ける作家/プロデューシング・エンジニア。近年は劇伴やCM音楽にも活躍のフィールドを広げている。
UNIVERSAL AUDIO Apollo Solo/Apollo Solo USB
オープン・プライス(市場予想価格:54,000円前後)
SPECIFICATIONS
●Apollo Solo
▪接続:Thunderbolt 3 ▪電源供給:バス・パワー
●Apollo Solo USB
▪接続:USB 3.0 ▪電源供給:電源アダプター(付属)
●共通 ▪オーディオ入出力:最大2イン/4アウト ▪ビット/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪内蔵マイクプリ数:2 ▪ダイナミック・レンジ:118dB(マイク入力)、115dB(出力) ▪外形寸法:179.9(W)×46.7(H)×121.1(D)mm ▪重量:0.63kg
REQUIREMENTS(コンピューター接続時)
●Apollo Solo
▪Mac:Thunderbolt 3 搭載のAPPLE Macコンピューター、macOS 10.14、macOS 10.15(MacBookのUSB Type-Cポートは、Thunderbolt 3をサポートしていないため動作不可)、AAX/AU/VST対応の64ビット・ホスト・アプリケーション
▪Windows:Thunderbolt 3 搭載かつ、Windows 10 Fall Creators Update 対応済みのコンピューター(64ビット・エディション)、AAX/VST 対応の64ビット・ホスト・アプリケーション
▪共通:Thunderbolt 3ケーブル(別売)、INTEL Quad Core I7プロセッサー以上を推奨、6GB 以上の空きストレージ、8GB 以上のRAMを推奨、インターネット接続環境
●Apollo Solo USB
▪Windows:Windows 10(64ビット・エディション)、コンピューター本体にネイティブで搭載されているUSB 3.0 SuperSpeed(USB Type-A/Type-C)空きポート、別売のUSB 3.0 SuperSpeedケーブル(USB Type-A to Type-C/USB Type-C to Type-C)、6GB 以上の空きストレージ、INTEL Core IシリーズもしくはXeonプロセッサー(Quad Core I7 以上を推奨)、6GB 以上の空きストレージ、8GB 以上のRAMを推奨、3年以内に製造されたコンピューター推奨、インターネット接続環境、AAX/VST 対応の64ビット・ホスト・アプリケーション
製品情報
UNIVERSAL AUDIOの関連記事