「ARTURIA KeyStep Pro」製品レビュー:4trステップ・シーケンサーを搭載する37鍵キーボード/コントローラー

ARTURIAより発売された「KeyStep Pro」

撮影:川村容一(メイン)

 ARTURIAより4trステップ・シーケンサーを搭載したMIDIキーボード/コントローラーのKeyStep Proが発売された。Mac/WindowsのほかAPPLE iPad Camera Connection Kit経由でiOSデバイスにも対応し、スタンドアローンでの動作も可能な本機。早速見ていこう。

tr1には最大24パートのドラム・シーケンサー
tr2〜4にはアルペジエイターを内蔵

 まず、37鍵のキーボードはベロシティ、アフタータッチ対応。4trステップ・シーケンサーは、各ステップに16ノートまで、1パターンにつき最長64ステップ(ポリ対応)の入力が可能だ。ミュート・ボタンも装備しており、tr1には最大24パートのドラム・シーケンサーを、tr2〜4にはアルペジエイターを内蔵している。ドラム・シーケンスでは、パートごとにステップの長さを変えることが可能。またスプリット機能も備えているため、キーボードの高音部でアルペジオを、低音部でシーケンスを演奏させることも可能になっている。

KeyStep Proは4基のポリフォニック・ステップ・シーケンサーを装備し、最大4台のハードウェアやコンピューター上のソフト音源などを同時にコントロールすることができる。付属のDCアダプターから電源供給を行い、スタンドアローンでの動作も可能

KeyStep Proは4基のポリフォニック・ステップ・シーケンサーを装備し、最大4台のハードウェアやコンピューター上のソフト音源などを同時にコントロールすることができる。付属のDCアダプターから電源供給を行い、スタンドアローンでの動作も可能

 ピッチ、ゲート、ベロシティ、タイム・シフト、プロバリビリティはノートごとに設定ができ、5つのLEDリング付きエンコーダーによってパラメーターも視認しやすいデザインだ。入力方法はリアルタイム/ステップどちらにも対応する。

 

 さらに、ピッチとモジュレーション用のタッチ・ストリップも用意。メトロノームも内蔵するため、本体からクリックが聴こえるのは面白い。メトロノーム・アウトからのシグナルは、モニター用に共有したり、アナログ・シーケンサーのトリガーとして使うことも可能。ほかにも、シーケンスやアルペジオを演奏させながら6種類のスケール・プリセット(メジャー、マイナー、ドリアン、ミクソリディアン、ハーモニック・マイナー、ブルース)とカスタム・スケールを設定できるスケール機能や、キーボードにコードを記録できるコード機能も搭載している。

 

 リア・パネルには、アナログ・シンセ用の2系統のCVアウト(ピッチ+モジュレーション/ベロシティ)と1系統のGateアウトのセットを4ボイス分用意。8系統のドラム用Gateアウト、クロック・イン/アウトとリセット・アウト、MIDI INと2系統のMIDI OUT、メトロノーム・レベル・ノブ、メトロノーム・アウト、サステイン・ペダル・イン、USB Type-B端子(MIDIクラス・コンプライアント。Mac/WindowsのほかAPPLE iPad Camera Connection Kit経由でiOSデバイスにも対応)を実装。充実の入出力がコンパクトな筐体に搭載されている。ピッチ、Gate、CVのアウトが分かれており、特殊な規格のビンテージ・シンセとも相性バッチリ。もちろんコンピューターと接続してDAWを介したMIDI信号のやり取りもできる。

 リア・パネル。2系統のCVアウト(ピッチ+モジュレーション/ベロシティ)と1系統のGateアウトの組み合わせを4ボイス分、8系統のドラム用Gateアウト、クロックイン/アウトとリセット・アウト(以上、すべてミニ・フォーン)、MIDI INと2系統のMIDI OUT、メトロノーム・レベル・ノブ、メトロノーム・アウト(フォーン)、サスティン・ペダル・イン(フォーン)、USB Type-B端子を備えている

リア・パネル。2系統のCVアウト(ピッチ+モジュレーション/ベロシティ)と1系統のGateアウトの組み合わせを4ボイス分、8系統のドラム用Gateアウト、クロックイン/アウトとリセット・アウト(以上、すべてミニ・フォーン)、MIDI INと2系統のMIDI OUT、メトロノーム・レベル・ノブ、メトロノーム・アウト(フォーン)、サスティン・ペダル・イン(フォーン)、USB Type-B端子を備えている

パターン同士をつなぐチェイン機能
シーン機能で各種設定の本体保存が可能

 一通り仕様を見たので、早速KeyStep Proにハードウェアを接続してコントロールしてみよう。まずは、KeyStep Proとモジュラー・シンセをじかに接続してCV/Gateの送信を行う。モジュラーのVCOとエンベロープ・ジェネレーターへつなげば、すぐに演奏が可能。さらにモジュレーション/ベロシティ・アウトをVCFのCVインにパッチすると、打鍵の強さでフィルターのかかり具合を変化させられる。

 

 また、tr1のDrum Gateアウトはアナログ・リズム・マシンのトリガー・インに接続してパターンを打ち込んでみた。1ステップずつトリガーのオン/オフをボタンで設定していくとLEDが点灯するので、初めて触れるユーザーでも直感的に操作できると感じた。

 

 さらに、2系統のMIDI OUTのうち、片方をシンセと接続してコード・シーケンスを鳴らし、片方をリズム・マシンと接続してテンポ同期させるといったことも可能だった。

 

 同時に4台のハードウェアをKeyStep Proでコントロールした際には、シーケンス全体のタイミングが非常にタイトだと感じた。これは、KeyStep Pro一台でMIDIなどの信号を統合/制御するメリットと言える。打ち込みやすさも秀逸で“Step Edit”ボタンで各ステップのコードやゲートの長さなど細かなパラメーターを編集できる。エディット中のトラックとLEDのカラーがリンクするので、編集中のトラックが一目りょう然だ。“Shift”ボタンを押しながら対応した鍵盤を押すと、アルペジオのパターンや分割数などの変更のほか、さまざまな機能の呼び出しが可能。シーケンスが走る最中でも、シーケンスの逆走、全体のノートを半音移動させたり、パターンを1ステップ左右にずらす、ボタン一つで任意のパターンを呼び出すといった操作などが行える。パターン同士を組み合わせられるチェイン機能で楽曲を作成し、各種設定を記録するシーン機能を使うと、これら作業結果の本体保存もできる。

 

 このほか、ARTURIAが無償で提供しているソフト、MIDIControl Centerを用いたMIDIコントロール・チェンジ設定など、細かい値もトラックごとに設定可能。ここには書き切れないほどの多くの機能を搭載しつつもコンパクトという、至れり尽くせりの仕様のため、さまざまなハードウェアを使用して制作を行う方には、特にお薦めの一台だ。

 

佐藤公俊
【Profile】電子音楽バンドMother Terecoのメンバー。ソロ名義ではミックス・エンジニアやDJとしての活動に加えて、パブリック・スペースやWebコンテンツのサウンド・デザインなども行っている

 

ARTURIA KeyStep Pro

オープン・プライス(市場予想価格:57,000円前後)

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SPECIFICATIONS ▪鍵盤数:37鍵 ▪外形寸法:589(W)×38(H)×208(D)mm ▪重量:2.7kg ▪付属品:12V DCアダプター、USBケーブル
REQUIREMENTS(コンピューター接続時) ▪Mac:OS X 10.8以降 ▪Windows:Windows 7以降 ▪共通:2GB以上のRAM、INTEL Core 2.0GHz以上のCPU

製品情報

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