SYM・PROCEED SP-DI500 レビュー:現代の録音環境に最適化したAPI 500互換の楽器用DI/プリアンプ

SYM・PROCEED SP-DI500 レビュー:現代の録音環境に最適化したAPI 500互換の楽器用DI/プリアンプ

 今回は楽器用DI/プリアンプのSYM・PROCEED SP-DI500をレビューします。高解像度かつワイドな周波数レンジ、立ち上がりの速さなど現代のレコーディングにマッチした性能で、非常に高い評価を受けるSPシリーズです。DIと言うとどうしてもオーディオI/OのHi-Z端子やスタジオの備品を使用することが多いと思いますが、実際はマイクやマイクプリと同じくサウンドに大きくかかわる大事な機材です。早速、見ていきましょう。

3dBずつの12ステップで最大33dBゲイン

 まず見た目は、同社の他機種と同じくアルミ削り出しのシルバーのパネルで、現代的で洗練された高級感が漂います。ツマミの操作感も良く、モノとして非常に丁寧に作られているのが伝わってきました。内部回路は無駄なく少ない部品で構成され、これが余計なロスを省いて原音に忠実なサウンドを得ることに貢献していると思います。

一般的なDI回路に比べて部品点数を1/3以下にまで絞り込み、厳選した部品で構築。また、チップ抵抗に比べ割高な帰還抵抗を採用しているという

一般的なDI回路に比べて部品点数を1/3以下にまで絞り込み、厳選した部品で構築。また、チップ抵抗に比べ割高な帰還抵抗を採用しているという

 フロント・パネルを見ていきます。まず最上部に3dBずつ12ステップで最大33dB(バランス出力時)のゲイン・ノブがあります。その下左側には2/4/8/12/24kHz/オフで6段階切り替えのハイカット・フィルター・ノブ。これは弦楽器の演奏時に、意図しない弦のビビリなど高域に現れるノイズを抑えるためとのことです。その右には2MΩ(M)、100kΩ(H)、10kΩ(L)の3段階切り替えのインピーダンス・セレクト・スイッチ。下には楽器およびアンプ用のアンバランス・アウトのゲイン・スイッチ(0dB、+6dB、+12dB)があり、使用楽器に合わせて設定が可能です。

フロント・パネルは上から、3dBずつ12ステップで最大33dB(バランス出力時)のゲイン・ノブ、ハイカット・フィルター・ノブ(2/4/8/12/24kHz/オフ)、その右にインピーダンス・セレクト・スイッチ(2MΩ/M、100kΩ/H、10kΩ/L)、アンバランス・アウトのゲイン・スイッチ(0dB、+6dB、+12dB)

フロント・パネルは上から、3dBずつ12ステップで最大33dB(バランス出力時)のゲイン・ノブ、ハイカット・フィルター・ノブ(2/4/8/12/24kHz/オフ)、その右にインピーダンス・セレクト・スイッチ(2MΩ/M、100kΩ/H、10kΩ/L)、アンバランス・アウトのゲイン・スイッチ(0dB、+6dB、+12dB)

 使用してみたところ、確かにいずれかの周波数ポイントでハイカット・フィルターを入れた方が音が落ち着き、余計なノイズを抑えることができました。またインピーダンス・セレクト・スイッチは切り替え時に多少ノイズが出ますが、そこまで大きくないので、音を聴きながら変更し、気に入ったところで使用すれば良いと思います。機能面はこのようにシンプルですが、過不足なく必要な機能を備えており好印象です。また資料によると、周波数特性は驚いてしまうほどの直線。低域から4MHzまではほぼ認識できる誤差が無いとのことなので、完全なフラットと言って差し支えないでしょう。そのほか、データ的な部分ではほぼ隙の無い作りです。

クリアで重心が安定し低域の表現力が抜群

 さて、実際に録音でテストしてみます。まずは個人的にDIが最も重要と思えるエレキベース(4弦)から。今回はA-DESIGNS AUDIO REDDIとAVID HD Omniのインスト・イン、API 3124のDIインで比較しました。この中ではHD Omniの音に比較的近く、よりワイド・レンジでクリアな音質です。こういった傾向の音はミックスの際に少し腰高に感じることも多いですが、SP-DI500はそうではなく、整った形でしっかり中央に座ります。低域の特性や位相の良さがそうさせるのか、これは印象的でした。そして、低域の表現力は群を抜いています。低音弦の音程感がハッキリと感じ取れて、クリアながらも重心の安定した音で録れました。5弦ベースの確認はできませんでしたが間違いなく良いと思います。REDDIの持つチューブっぽい太さやAPI 3124の持つ質感を伴ったひずみはあまり無いので、ある程度アンプやペダル、プラグインなどでひずみを付加して音作りすることになります。今回は試しにSP-DI500を通して録った音にプラグイン・エフェクトのAVID SansAmp PSA-1をかけてみました。すると、とてもクリーンかつ力強い音が得られたので、そういった太さを求める方向での使用も全く問題ないと思いました。

 次はエレキギターで、REDDIを除いた同じラインナップでテストしました。基本的には明りょうでハッキリした音質ですが、腰高にならず意外に落ち着いた印象です。何もせずに直接録ったクリーンのカッティングは、そのままでもかなり音が良いと感じられるクオリティでした。試しに録り音をプラグインのアンプ・シミュレーターでひずませたところ、予想通り立ち上がりが速く、低音がしっかりしたディストーション・サウンドになりました。筆者が普段愛用するAPI 3124が少し味のあるにじんだひずみ感を出すのとは正反対だったので、もしそういったキャラクターの機材を所有する人は、楽曲との相性やパートの役目によって使い分けると、音作りの幅とクオリティが大きく上がるのではないかと思います。

 以上テストしてみましたが、非常に高性能のDIであり、楽器を選ばず誰にでも薦められると感じました。特に低域の特性は素晴らしく、シンセ・ベースや5弦ベースのDIとしてはベストの選択肢になるのではないかと思います。さらに非常に音のバランスがよく、音数が多かったりテンポが速いアレンジの楽曲でも、埋もれにくく聴き取りやすいサウンドで収録できます。そのため、そういったケースにおけるギターやベースのDIとしても非常に優秀です。また、宅録でライン録りしてプラグインで音作りしている方は、入り口をSP-DI500にすることによって全体的に大幅なクオリティ・アップが期待できます。ぜひ一度試してみることをお薦めします!

 

檜谷瞬六
【Profile】prime sound studio formやstudio MSRを経て、フリーランスで活動するレコーディング/ミキシング・エンジニア。ジャズを中心にアコースティック録音の名手として知られる。

 

SYM・PROCEED SP-DI500

127,600円

SYM・PROCEED SP-DI500

SPECIFICATIONS
▪最大ゲイン:33dB(バランス出力)、12dB(アンバランス出力) ▪最小ゲイン:0dB(バランス出力)、0dB(アンバランス出力) ▪周波数応答:0.1/−0.1dB ▪全高調波ひずみ率:0.0006%以下@12dBゲイン(+4dBuの入力信号) ▪相互変調ひずみ:0.0007%以下@12dBゲイン(+4dBuの入力信号) ▪入力インピーダンス・セレクター:2MΩ/100kΩ/10kΩ ▪出力インピーダンス:150Ω(±7.5V、120mAで最小出力スイング) ▪ハイカット・フィルター:2〜24kHz(バランス出力) ▪最大入力レベル:+18dBu ▪最大出力レベル:+24dBu ▪外形寸法:37.8(W)×133.25(H)×157(D)mm ▪重量:295g

製品情報