ケロケロ・ボイスとしても有名なピッチ・シフター(オートチューン)の作り方

ケロケロ・ボイスとしても有名なピッチ・シフター(オートチューン)の作り方

ピッチ・シフトをはじめ、ボコーダーやトークボックス、ラジオ・ボイス、そして米津玄師「海の幽霊」で話題となったデジタル・クワイアなど、プラグインを使ったボーカル・エフェクトの作り方を紹介する本特集。ここでは、中田ヤスタカがプロデュースするPerfumeの楽曲でも有名なピッチ・シフターを紹介。“ケロケロ・ボイス”や“オートチューン”とも呼ばれるエフェクトの作り方を、プロデューサー/DJのTeddyLoidが解説します。

ピッチ補正ソフトの効果を活用したボーカル・エフェクト

 世間では“ケロケロ・ボイス”や“オートチューン”と呼ばれることもあるボーカル・エフェクト、ピッチ・シフター。もともとはボーカルのピッチ補正ソフトとして使われていましたが、補正を強くかけたときに表れるケロケロしたサウンドが印象的だったため、それを逆手に取ったアーティストが独自の表現として使い始めたのがきっかけだと言われています。日本のアーティストだと、中田ヤスタカさんがプロデュースしているPerfumeが有名ですね。

 自分も以前からピッチ補正プラグインのWAVES Tuneを愛用しています。最近はANTARES Auto-Tune Proもよく使っているので、今回はこちらを使ったケロケロ・ボイスの作り方をお届けしましょう。

 参考音源 

STEP 1:Auto-Tune ProをCLASSICモードに変更

 ボーカル・トラックにAuto-Tune Proを挿したら、画面最上段に備わる“CLASSIC”ボタンを押しましょう(赤枠)。するとCLASSICモードになります。これはどういうことかというと、最新版であるバージョン9のサウンドから、バージョン5のサウンドに変わるということ。Auto-Tune 5のサウンドは“オートチューン・ブーム”を巻き起こした当時のポップスで多用されていたため多くのアーティストやエンジニアから人気を博しており、Auto-Tune 9ではめでたくCLASSICモードとして復活したのです。なので、ケロケロ・ボイスを目的とする今回、この機能を使うことは必須だと言えるでしょう。

ANTARES Auto-Tune Pro。“CLASSIC”ボタンを押すと、Auto-Tune 5のサウンドに変化する

ANTARES Auto-Tune Pro。“CLASSIC”ボタンを押すと、Auto-Tune 5のサウンドに変化する

STEP 2:ボーカル・タイプ/キー/スケールを設定する

 Auto-Tune Proはオート・モードとグラフ・モードの2種類を搭載しており、オート・モードでは曲のキーやスケールを設定するだけでリアルタイムにボーカル・メロディが修正される仕様です。一方のグラフ・モードでは、一度Auto-Tune Proにボーカルを読み込ませることで内蔵ピアノロールにMIDIノートが自動生成されていくため、後からこれらを調整することが可能です。

 今回はDAW初心者のためにも、圧倒的に簡単なオート・モードでケロケロ・ボイスを作っていきましょう。それでは、画面最上段の中央にあるAUTOをオンにしてオート・モードに設定したら、同左側にあるSCALEとKEYを曲に合わせて設定します。今回の用例音源となるボーカルの声は高めなので、INPUT TYPEではSOPRANOを選択してみました。

ANTARES Auto-Tune Proの画面最上段。ボーカル・タイプ/キー/スケールの設定のほか、オート/グラフ・モードの切り替えなどが可能だ

ANTARES Auto-Tune Proの画面最上段。ボーカル・タイプ/キー/スケールの設定のほか、オート/グラフ・モードの切り替えなどが可能だ

STEP 3:RETUNE SPEEDを最大にして機械らしさを演出

 ケロケロ・ボイスの作成でポイントとなるのが、画面左上にあるRETUNE SPEED(黄枠)。正確なピッチに修正するまでのスピードのことですが、この値が大きいとケロケロ具合が強くなり、小さいと弱くなります。もちろん、ここは最大値にしておきましょう。

 同時に重要なのが、同右側にあるHUMANIZE(青枠)やNATURAL VIBRATO(緑枠)。これらの値が大きいほど人間らしいサウンドに近付くので、ここは両者とも最小値、0にしておきます。これでケロケロ・ボイスが出来上がりました!

画面左上のRETUNE SPEEDは、値が大きくなるほどケロケロに……すなわち、ケロらせることができる

画面左上のRETUNE SPEEDは、値が大きくなるほどケロケロに……すなわち、ケロらせることができる

STEP 4:フォルマントを調整してかわいい声色に!?

 余談ですが、さらにもう一つのお薦めテクニックをご紹介。CLASSICモードを解除して通常モードに戻すと、“CLASSIC”ボタンの下にある“FORMANT”ボタンが使えるようになります。これをオンにすると、フォルマントの調整が可能となるのです。THROAT値を下げると子どもっぽくなり、上げると大人っぽくなるので、自分はこの値を若干下げて“かわいい声色”を演出することも。簡単にできるテクニックなので、ぜひまねしてみてください!

FORMANT機能は、CLASSICモードを解除しないと使えないので注意しよう

FORMANT機能は、CLASSICモードを解除しないと使えないので注意しよう

 完成したケロケロ・ボイスを聴いてみる 

 

TeddyLoid

TeddyLoid
【Profile】m-flo、中田ヤスタカ、ゆず、HIKAKIN & SEIKIN、DAOKO、アイナ・ジ・エンド(BiSH)など、さまざまなアーティストとのコラボレーションやプロデュース/リミックス・ワークを展開。DJとしては2017~18年にワールド・ツアーを敢行し、国内外から注目を集めている。
Photo:Hiroki Obara


 連動音源提供アーティスト 

Yun*chi
【Profile】ポップス/アニメ・ソングからクリエイティブ・シーンまでをつなぐ女性シンガー。TVアニメ『ログ・ホライズン』のエンディング曲「Your song*」や、『うーさーのその日暮らし 夢幻編』主題歌「Lucky Girl*」のほか、タカラトミーのリカちゃんテーマ曲「ゆめみるリカちゃんの歌」の歌唱も担当する。

Musician:砂川 信祐(prog)|Producer:Yun*chi|Engineer:あきお|Studio:studio Mcfly

【特集】ボーカル・エフェクト作成術

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