SOFTUBE Celestion Speaker Shaper レビュー:CELESTIONとコラボしたギター/ベース用スピーカー・シミュレーター

SOFTUBE Celestion Speaker Shaper レビュー:CELESTIONとコラボしたギター/ベース用スピーカー・シミュレーター

 昨今は多くのブランドからスピーカー・シミュレーターやIRローダーなどがリリースされており、“いかにギター・キャビネットのサウンドやフィールに近付けるのか”を競い合うかのごとく、多彩な製品が次々と生まれている。そんな中で満を持して登場したのが、SOFTUBEとCELESTIONのコラボによって生まれたCelestion Speaker Shaperだ。

多彩なサイズの11種類のスピーカーを搭載。8種類のマイクから3本をブレンドできる

 早速エレキギターのトラックに挿してみたところ、早々に心を撃ち抜かれ、そのサウンドやフィールのあまりの素晴らしさに驚愕してしまった。とにかくあらゆる要素がリアルであり、聴こえてくるサウンドのクオリティの高さはもちろんのこと、特に演奏時の感触の素晴らしさに心が躍った。もちろん世にあるすべてのスピーカー・シミュレーターと比較したわけではないが、筆者にとってはこれまで試してきた製品の中でも群を抜いてリアルで気持ちの良いフィールが得られるスピーカー・シミュレーター・プラグインだと感じる。

 

 これまでのスピーカー・シミュレーターやIRローダーでは再現が困難だったであろう低域のレスポンス。Celestion Speaker Shaperにおいてはその部分も超リアルで、まさしく実機を使って弾いているかのような感覚を覚える。ギター・サウンドの低域はただ量感たっぷりで分厚く高密度であれば良いわけではなく、そこに鋭いエッジや空気感、そして鳴らした時間とともに変化する複雑な表情が重要なのだが、その点を高次元で実現できていた。

 

 ここですべての機能を詳細に解説することは難しいので、幾つかの特徴をピックアップしてみたいと思う。スピーカーの種類は明確なキャラクターを持った11機種の中から選択可能。2種類を同時に使用でき、それぞれをブレンドすることもできる。また、とても面白いのがスピーカーの口径を8/10/12インチなどのスタンダードなもの以外に、15/18/21/24インチのような大口径スピーカーにも変更できる点。キャビネットのスピーカー搭載数を最大8基まで変更することも可能なので、例えば24インチVintage 30×8基というような、現実ではありえないモンスター・キャビネットにカスタムすることもできる。

 

 マイクは8種類で、ダイナミック・マイクからコンデンサー・マイク、リボン・マイクまで、ギターやベースのレコーディングで定番のものがそろっている。スピーカーにつき3本のマイクを同時に使用してミックスでき、各音量も調節可能だ。もちろんマイク位置の設定も自由自在。位相の乱れを自動的に解消して整列させる機能も備えている。

インピーダンスやマグネット素材も変更可能。アンビエンスを追加できるROOMも用意

 Celestion Speaker Shaperではさらに細やかな設定も可能だ。スピーカーの劣化具合の選択(NEW/RUN-IN AGE)、過大入力によるひずみ具合の調整、さらにはインピーダンスの選択(8/16Ω)までできてしまう。また、マグネットの素材(フェライトM/フェライトH/アルニコ/ネオジム)や、マグネットの磁力増減など、よほど詳しく熱意がない限り実機ではなかなか触ることのないであろうファクターまで調整できる。サウンドやフィールは緩やかに、しかし明確に変化し、コンプレッションやドライブ感をお好みにコントロール可能だ。

SOFTUBE Celestion Speaker Shaper スピーカーの設定項目。経年劣化具合やひずみ、インピーダンス、マグネット、スピーカー数、オープン/バックなどの設定ができる

スピーカーの設定項目。経年劣化具合やひずみ、インピーダンス、マグネット、スピーカー数、オープン/バックなどの設定ができる

 これらの設定項目はサウンド面に関してはもちろんのこと、特に弾き心地において非常に重要な役割を果たしており、多くのプレイヤーにとってありがたいポイントだと思う。他社製品では、弦を弾いたときの感触が異様に硬くペタッとしていたり、逆に柔らかくクリーミー過ぎて張りが足りなかったりして演奏時にストレスを受けてしまうこともあるが、Celestion Speaker Shaperではそういったことも無いだろう。

 

 プラグイン画面右上にはROOMという設定項目があり、ここでアンビエンスの調整が行える。個人的にはこのROOMの効果が最も感動した。“NEAR”と“FAR”のパラメーターを調整してギターが鳴り響く音場の質感をコントロールでき、この効果が本当に絶大。まさにその場で実機のギター・アンプ+キャビネットが鳴っているような感触を体感できる。筆者が初めてROOMを試したときは深夜でヘッドフォンをした状態だった。弾き始めてしばらくして“マズい、ヘッドフォン以外にモニター・スピーカーも鳴っている!”と勘違いして焦ってしまったほどだ。それほどギター・サウンドに広がりや立体感、リアルなアンビエンスが付与され、実際に部屋やスタジオでギター・アンプを鳴らしているような自然な感触が得られた。もちろん完全なドライ・サウンドにも調整可能なので、シチュエーションに応じてコントロールするとよいだろう。

SOFTUBE Celestion Speaker ShaperのROOMではアンビエンスの設定ができ、実際にスタジオ内でキャビネットを鳴らしているようなサウンドへと仕上げることが可能だ。NEARとFARの2種類のアンビエンスを組み合わせることができる

ROOMではアンビエンスの設定ができ、実際にスタジオ内でキャビネットを鳴らしているようなサウンドへと仕上げることが可能だ。NEARとFARの2種類のアンビエンスを組み合わせることができる

 今回は極めて高次元なスピーカー・シミュレーターのCelestion Speaker Shaperを紹介した。それなりの専門的知識を用いてあらゆる要素のバランスを考える必要があるプラグインだが、ファクトリー・プリセットがずば抜けて素晴らしい内容で、とても優秀。プラグインの謳い文句で“即戦力になるプリセット“というワードをよく見かけるが、Celestion Speaker Shaperのプリセットはまさに即戦力となっている。一から感覚で作り上げるより、まずはこれらのプリセットを基本とし、目的に合わせて微調整をしていくことをお勧めしたい。

 

山本安男
【Profile】ギタリスト/演奏メカニズム研究家。アーティストのライブやレコーディングに参加するほか、複数の音響機器メーカーのプロモーター、専門学校のインストラクター、音楽誌への執筆なども行う。

 

SOFTUBE Celestion Speaker Shaper

オープン・プライス

(市場予想価格:10,890円前後)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.12以降、AAX Native/AU/VST/VST3に準拠、同社Amp Roomモジュールを同梱
▪Windows:Windows 7(64ビット)以降、AAX Native/VST/VST3に準拠、同社Amp Roomモジュールを同梱
▪共通項目:INTEL Core 2 DuoまたはAMD Athlon 64 X2以上のプロセッサー、1,280×800以上のディスプレイ解像度、8GB以上のRAM、8GB以上の空きディスク容量