SLATE DIGITAL Custom Opto レビュー:5種類のトーン・カラーを備えるオプティカル・コンプ・プラグイン

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 SLATE DIGITALが新たなプラグイン、Custom Optoを発売しました。プラグイン内のラックに好きなモジュールをインサートして、自分好みの組み合わせでチャンネル・ストリップやエフェクト・チェインをプリセットしておける、VMR(Virtual Mix Rack)用のモジュール製品です。早速試してみたいと思います。

サウンドがアグレッシブに変化するTONEキャラクター

 VMR用プラグインはこれまで数多くリリースされており、Custom Optoと同じオプティカル・コンプのプラグイン、TELETRONIX LA-2AをインスパイアしたFG-2Aというプラグインが既に存在しています。FG-2Aのパラメーターはとてもシンプルで、PEAK REDUCTION、GAIN、COMPRESS/LIMITの切り替えと、Dry/Wetのミックス・パラメーターを加えたとてもシンプルなもの。ボーカルやベース、キックなど、ピークを自然に削ったりなだらかにするのに効果的で、ナチュラルで独特な押し出し感が魅力的なプラグインです。

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左がTELETRONIX LA-2Aモデリング・プラグインのFG-2A(オープン・プライス:市場予想価格20,350円前後)。Custom Optoと同じVMR用モジュールで、2つのオプティカル・コンプを併用すると、より幅広い音作りが可能となる

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SLATE DIGITAL VMR。API 500シリーズのように、エフェクト・モジュールをプラグイン内のラックにインサートして、好みのエフェクト・チェインを構築することが可能。なお、ラック自体は無償でダウンロードすることができる

 Custom Optoは同じオプティカル・タイプのコンプでありながら全く新しい設計。パラメーターは拡張され、キャラクター付けや音作りを積極的に行えるプラグインという印象です。パラメーターを見てみると、PEAK REDUCTIONとOUTPUT GAINはFG-2Aと同じですが、Custom OptoはRATIOやSPEEDが可変タイプ。RATIOは1〜10の範囲で設定でき、10にするとコンプのかかりが最大限に強くなります。0〜10の範囲があるSPEEDパラメーターは、10で最速の設定に。アタック/リリースはリンクされており、SPEEDツマミだけでかかり方をイメージ通りに調整できるでしょう。

 

 そして、何と言っても特徴的なのはTONEセクションの存在です。シェルビングEQのように単純なトーン・コントロールでは無く、EQやサチュレーション効果なども加わり積極的にトーン・カラーのコントロールが可能になっています。

 

 TONEはFLAT/SMOOTH/WARM/AGGRO/AIRYの5種類から選択。FLATはその名の通りベーシックでフラットな特性、SMOOTHは滑らかな特性でナチュラルなボーカル処理などに良いと思いました。WARMは重心が下がり、温かみのある落ち着いたサウンド。AGGROは中域がブーストされアグレッシブになり、AIRYは高域が奇麗に伸びてきらびやかなサウンドに仕上げることができます。

 

 トーン・カラーは、TONEツマミ左の±表記があるネジを模したツマミで100〜200%までキャラクターを付加する量をコントロールできます。オン/オフだけではなく、ブレンド量を調整できるのはとても良いですね。基本的にはどれもキャラクターが濃いめなので、200%まで上げるとかなり過激にかかります。通常はサウンドを聴きつつ100%から少しずつ上げていき、好みの量に調整するのが良いでしょう。アグレッシブでエフェクティブなサウンドに仕上げたい場合は200%にするのも面白いと思います。

ベースのライン録音と好相性。FG-2Aとの併用も効果的

 TONEセクションだけでもさまざまな用途に使えそうなので、コンプはスルーさせる設定にしておいてトーン・コントローラーとして使うのも良いと思います。僕が普段ミックスする場合だと、ボーカル処理はオプティカル・コンプやFETコンプ、EQなどで調整した後、サチュレーション・プラグインで倍音をコントロールしているのですが、Custom OptoであればTONEセクションのキャラクター・コントロールだけで済んでしまいますね。

 

 近年のレコーディングでは、ベースはアンプを通さずにラインで収録した音を使う場合も多いと思います。ベースとオプティカル・コンプの相性はとても良いですし、ライン録音でもCustom OptoのTONEセクションでのキャラクター付けはサウンドになじませやすいと思います。前段にFG-2Aでピークを自然になじませて、後段にCustom Optoをインサートして積極的に音作りをするような使い方も良いのではないでしょうか。Dry/Wetをミックスするツマミも搭載されており、コンプレッションしたサウンドと原音のバランスを調整するパラレル・コンプのような使い方も簡単に行えます。

 

 Custom OptoはVMRモジュールなので、ほかのEQやコンプなどを合わせたエフェクト・チェインを、あらかじめお気に入りのプリセットとして用意しておけば、ミックスや楽曲制作の時間短縮になりますね。

 

 シンプルなオプティカル・コンプでありながら、サウンド・キャラクターを激変させることもできるCustom Opto。シンプルな操作性で直感的に音作りをしたいクリエイターから、積極的な音作りを求めるエンジニアまで、幅広いニーズに応えられる製品だと思います。

 

鈴木Daichi秀行
【Profile】幅広い音楽性を生かして活動するサウンド・プロデューサー。家入レオやYUI、miwaらをはじめ、トップ・チャートに輝く楽曲に多く携わる。レーベルStudio Cubic Recordsを運営している。

 

SLATE DIGITAL Custom Opto

オープン・プライス

(市場予想価格:20,350円前後)

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REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13〜10.15、64ビット、INTELのプロセッサー、AAX/AU/VSTに準拠
▪Windows:Windows 8/10(64ビットのみ)、INTELまたはAMDのプロセッサー、AAX/VSTに準拠
▪共通項目:4GB以上のRAM、iLok 2または iLok 3

製品情報