「PRESONUS IOStation 24C」製品レビュー:オーディオI/OとDAWコントローラーを1台に集約したデバイス

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撮影:川村容一(メイン)

 フィジカル・コントローラーとオーディオI/Oが一体となった話題のハイブリッド・オーディオ・インターフェースPRESONUS IOStation 24C。同社製のDAWソフト、Studio Oneユーザーの筆者としても注目の製品です。

 

心地良いトルク感を誇るセンター・ノブ
高ヘッドルームのXMAXクラスAプリアンプ

 まず外箱から取り出して驚いたのですが、意外にも筐体がかなり大きいです。16インチAPPLE MacBook Proの半分ほどのサイズ感でしょうか。筆者自身、フィジカル・コントローラーはPRESONUSの初代FaderPortを使用しており、そのギャップに少々意表を突かれました。コントローラー+オーディオI/Oという機能を考えれば当然ですが、卓上型の機器としては大きく感じます。

 

 触ってみたところ、ノブ、フェーダー、スイッチ類などに安っぽさは無く、センターの大きなノブには心地良いトルク感を、小さいノブには重みを感じました。外で制作する際の持ち出し機としては少し大き過ぎるかもしれませんが、据え置きで使用するものと考えると非常に安定感があります。

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本体左には100mmタッチセンス・モーター・フェーダーを搭載。中央にはStudio OneをはじめとするDAWソフトの制御用ボタン、ノブが並ぶ。右上には入力レベルの調整用ノブを搭載。下には、インプットとプレイバックの出力バランスを調整するMixノブ。ヘッドフォン/メインの出力音量は個別で設定可能

 オーディオ・インターフェースとしては2イン/2アウトで最高24ビット/192kHzに対応。Mac/Windowsで使用できます。入力端子はマイク/インストゥルメント/ライン・インのXLR/TRSコンボ・ジャックを2つ搭載。出力端子はラインL/R(TRSフォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)が備わっています。そのほか、電源スイッチ、コンピューターと接続するためのUSB Type-C端子、再生/停止やパンチ・インのコントロールに使用できるフット・スイッチ端子(フォーン)が、すべて背面部分に集約されています。

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本体背面。左からUSB Type-C端子、フット・スイッチ(フォーン)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、ライン・アウト(TRSフォーン)×2、マイク/インストゥルメント/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)×2が搭載されている

  ヘッドフォン出力だけは筐体手前に欲しかったなぁ、という筆者の勝手な希望もサラリとお伝えしつつ、ここからは肝心の各部の音に関してです。AD/DAや各入出力を一通り試した中で、特筆したいのがマイクプリ。“高ヘッドルーム、XMAXクラスAプリアンプ”というこのプリ、良いです。通常この価格帯のオーディオI/Oに搭載されているマイクプリは、決して性能の良いものばかりではありません。大抵はダイナミック・レンジや上下のレンジが狭く、それでいて中域、中低域の芯が無いので、高域だけがシャリシャリしがちです。しかし、このXMAXクラスAプリアンプにはその印象がありません。アコースティック・ギターで試し録りを行いましたが、チリチリとする高域は少しだけ残るものの、基本的にはスムースで奇麗に伸びています。中域もちゃんと密度があり、低域も必要十分。非常に気持ち良く演奏、録音が行えるマイクプリでした。

 

モーター・フェーダーやオートメーション入力など
DAWの作業効率を上げる操作性の良さ

 続いてコントローラー部の使用感です。そもそもフィジカル・コントローラーとは、DAW上のパラメーターを物理のスイッチやノブで操作するための機器ですが、もしかしたら“これって本末転倒では?”と思う方も居るかもしれません。“大型スタジオの設備を凝縮したのがDAWというデジタル・ツールなのに、その操作にハードウェアのコントローラーを持ち出しては、逆行しているじゃないか!”と。しかし、僕らが作っているのは“音楽”です。フィジコンの一番の利点は“数字を見ずに音量を含めた各種バランスが取れる”こと。デジタル・ツールの前でも、“自分の耳だけを頼りに音楽を作る”という選択肢を持つことは、制作における可能性を広げてくれます。

 

 IOStation 24Cには、再生、録音、ループやソロ、ミュート、オートメーション用ボタンのほか、パン、チャンネル選択、スクロールのボタンなどを搭載。Mackie Control/HUIモードもあるので各種DAWで使用できますが、デフォルトではStudio Oneの動作モードになっています。今回Studio Oneで試したところ、その連携は“さすが”の一言。センターのノブでは、選択したボタンに応じてパラメーター値の調整や再生/録音位置の変更ができます。パンやボリューム調整のみならず、画面のスクロールやクリックのオン/オフもマウスやキーボードを触らずにコントロール可能。モーター・フェーダー部は反応が良く、レベル書きのオートメーションも楽々で、作業効率は上がるのみです。

 

 基本的に分かりやすくできているので、恐らくほかのDAWで使用する方やフィジコンをこれまで使ったことのない初心者の方でも、あまり取扱説明書を読まずとも直感的に操作を行っていけると思います。しかも、このIOStation 24CにはStudio One Artistがバンドルされているとのこと。つまり、これ1台でその日から音楽制作が始められるのです。

 

 これからエンジニアを目指す方の初めてのシステム、あるいは外スタジオがメインのエンジニアのちょっとした自宅作業用システム、“初めてのオーディオI/Oをそろそろ質の良いものに買い替えたい! でもフィジコンも欲しい!”といった機材欲あふれる方などに、このIOStation 24Cはお薦めできます。

 

毛蟹

【Profile】 LIVE LAB.所属の作曲/編曲/作詞家。ReoNaなどさまざまなアーティストへ楽曲提供を行うほか、スマートフォン向けゲーム『Fate/GrandOrder』のCMソングやBGMにも参加する。

 

製品情報

www.mi7.co.jp

PRESONUS IOStation 24C

オープン・プライス

(市場予想価格:33,455円前後)

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SPECIFICATIONS
▪ダイナミックレンジ:107dB/マイク・イン、113.9dB/ライン・イン、110dB/インストゥルメント・イン ▪ビット/サンプリング・レート:24ビット/44.1/48/88.2/96/176.4/192kHz ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪入力インピーダンス:1.6kΩ(マイク)、10kΩ(ライン)、1MΩ(インスト) ▪外形寸法:172(W)×61(H)×244(D)mm ▪重量:1kg

REQUIREMENTS
▪Mac:Mac OS X 11以降(64ビット)、INTEL Iシリーズ2GHzマルチコア・プロセッサー
▪Windows:Windows 7以降、INTEL Iシリーズ2GHzマルチコア・プロセッサーまたは同等のAMD製プロセッサー
▪共通:USB Type-CまたはType-A 2.0ポート、インターネット接続、1,366×768ピクセル以上の解像度のモニター、32GB以上のハードディスク容量

 

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