AUSTRIAN AUDIO CC8 レビュー:AKG C451にインスパイアされたペンシル型コンデンサー・マイク

AUSTRIAN AUDIO CC8 レビュー:AKG C451にインスパイアされたペンシル型コンデンサー・マイク

 AUSTRIAN AUDIOからペンシル型のスモール・ダイアフラム・コンデンサー・マイク、CC8が発売されました。AKG C451のCK1カプセルからインスピレーションを受け作られたというCC8。筆者は同社のコンデンサー・マイクOC818を所有しており、その完成度の高さと扱いやすさは体験済みです。個人的にも期待していた新製品を、早速試してみたいと思います。

個体差が少ないためステレオ・マッチングが可能

 まずは見た目から。マイク上部の赤いラインが印象的で、スタイリッシュな仕上がりです。とてもしっかりとした作りでずっしりとした重みがあります。ペンシル・マイクにしては本体が短めなので、セッティング場所に困らなくてよさそうです。

 CC8には名機AKG C451に搭載されているカプセルCK1からインスピレーションを受け作られた、ハンドメイドの単一指向カプセルOCC7が搭載されています。このカプセルとトランスレス回路を組み合わせ、リニアな周波数特性とひずみの少ないサウンドを実現しているとのことです。0/-10/−20dBのPADスイッチ、オフ/60Hz/120Hzの切り替えができるハイパス・フィルターが搭載されています。この辺りは実際の現場での使い勝手が良いポイントでしょう。最大SPLは156dBで、大音量のドラムやギター・アンプなどを録音する際にも安心です。

マイクの背面。0/−10/−20dBのPADスイッチ、オフ/60Hz/120Hzの切り替えができるハイパス・フィルターが備わる。XLR出力端子はマイク底面に装備

マイクの背面。0/−10/−20dBのPADスイッチ、オフ/60Hz/120Hzの切り替えができるハイパス・フィルターが備わる。XLR出力端子はマイク底面に装備

 また、特筆すべきなのは個体差による誤差が少なく、どの個体でもステレオ・マッチングが可能ということ。これはとてもすごいことですね。マイク×2本に加え、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、ステレオ・バー、専用ケースが付属したステレオ・セットがありますので、ステレオで録ることが多い方はこちらを購入することをお勧めします。マイク×1本の標準セットには、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、専用ケースが同梱されます。

ステレオ・セット。マイク×2に加え、マイク・ホルダー×2、ウィンド・スクリーン×2、ステレオ・バー、専用ケースが同梱される

ステレオ・セット。マイク×2に加え、マイク・ホルダー×2、ウィンド・スクリーン×2、ステレオ・バー、専用ケースが同梱される

標準セット。マイク×1に加え、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、専用ケースが同梱される

標準セット。マイク×1に加え、マイク・ホルダー、ウィンド・スクリーン、専用ケースが同梱される

アタック感や中域の密度を感じるサウンド

 単一指向のスモール・ダイアフラム・コンデンサー・マイクの定番の使い方として、まずはアコースティック・ギターを収録してみました。全体的に落ち着いたトーンでギラギラした高域がうまく抑えられ、フラットでバランスの良いサウンドです。鈴鳴りから胴鳴りまでしっかり収録されていました。僕はよくスモール・ダイアフラム・コンデンサー・マイクとダイナミック・マイクを組み合わせてアコースティック・ギターを録音します。これはコンデンサー・マイクでは足りない中低域をダイナミック・マイクで補うためですが、バランスの良いCC8であればこれ1本で録音できるシチュエーションも多そうです。

 次にドラムのハイハットで試してみました。C451では高域のギラギラした部分が気になることがあったりするのですが、CC8は高域の痛く聴こえるピーク成分が程良く抑えられ、まとまりのあるサウンドで収録できました。僕は生ドラムを録音する際、ポップス系の楽曲でクリアな音に仕上げたい場合はコンデンサー・マイクで、ロック系のサウンドの場合はダイナミック・マイクやリボン・マイクで録ることが多いです。CC8の音は抜けが良く芯があるので、新たな選択肢として重宝しそうだと思いました。

 ドラムのトップ・マイクとしてステレオで立ててみても、ハイハットと同じように高域のピークがうまく抑えられナチュラルに録音できます。トランスレスということが、オープンでナチュラルなサウンドで収録できる理由の一つなのでしょう。スネア・ドラムでも試したところ、アタック感もあり胴鳴りのどっしりした部分もキャプチャーできていてとても好印象でした。コンガなどの皮モノのパーカッションにもよく合いそうです。

 最後にギター・アンプにも立ててみました。僕はダイナミック・マイクのSHURE SM57とリボン・マイクROYER LABS R-121の組み合わせで録ることが多いのですが、今回はSM57とCC8をオンマイクで立てて比較します。ドラムのハイハットやシンバルと同じように、ギターの耳に痛いピークの角が取れ、とてもフラットなサウンドで録音できました。アタック感や中域の密度もしっかりあって、とても好印象です。違いが大きく出たのはダイナミクスの表現の部分。波形を見てもピークをつぶさず繊細なフレーズもしっかり捉えてくれました。

 ざっと駆け足でCC8を試してみました。作りがしっかりしており、音は現代の音楽のニーズやレコーディング環境にチューニングされ、とても扱いやすいマイクだと思います。ナチュラルなサウンドなのでルーム・マイクとしても活躍するでしょうし、ライブ収録の際の会場収録マイクにもピッタリでしょう。手に取りやすい価格帯ということもあり、レコーディング・スタジオからプライベート・スタジオまで、新たなスタンダードになり得るペンシル型コンデンサー・マイクだと思いました。

 

鈴木Daichi秀行
【Profile】幅広い音楽性を生かして活動するサウンド・プロデューサー。家入レオやYUI、miwaらをはじめ、トップ・チャートに輝く楽曲に多く携わる。レーベルStudio Cubic Recordsを運営している。

 

AUSTRIAN AUDIO CC8

オープン・プライス

(市場予想価格:標準セット/59,400円前後、ステレオ・セット/117,700円前後)

AUSTRIAN AUDIO CC8

SPECIFICATIONS
▪指向性:カーディオイド ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪感度:15mV/Pa ▪インピーダンス:275Ω ▪最大SPL:156dB ▪PAD:−10dB、−20dB ▪ノイズ・レベル:16dB ▪ハイパス・フィルター:60Hz、120Hz ▪外形寸法:23(φ)×140(H)mm ▪重量:160g(本体)

製品情報

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