SUGIZO × HATAKEN インタビュー序章:SUGIZOのモジュラー・シンセとの出会い〜アルバム制作までの経緯を語る

SUGIZO × HATAKEN インタビューを一部公開! SUGIZOのモジュラー・シンセとの出会い〜アルバム制作までの経緯を語る

LUNA SEAやX JAPANのギタリスト&バイオリニストとしても活躍しているSUGIZOとモジュラー・シンセ界の雄HATAKENがタッグを組み、SUGIZO×HATAKEN名義での初のオリジナル・アルバム『The Voyage to The Higher Self』をリリース。2人のコラボレーションは、2020年に発表されたSUGIZOのソロ作『愛と調和』でも大きな成果を挙げたが、それを深化させたのが本作と言える。全7曲のアンビエントは、古来からインド哲学に伝わる、人の心身を整える7つのエネルギー“チャクラ”をモチーフとしつつ、SUGIZOの過去2枚のアルバム『音』『愛と調和』の収録曲を解体/再構築したもの。聴きどころは、モジュラー・シンセを通し新たな生命が付されたギター・サウンドだ。ミキシングを手掛けたスタジオ・サウンド・ダリの大野順平氏を交え、SUGIZOのART TERROR STUDIOで話を聞く。

唯一無二の楽器から音の感動は生まれる

ギターの音をモジュラー・シンセで加工したいと思ったのは、どうしてなのですか?

SUGIZO 自然とそうなりました。長年シンセ・フェチですので、自分の主力兵器であるギターといかに結び付けるかを試行錯誤し続けてきました。幼少期からバイオリンをやっていて、弦楽器がフィジカル的にしっくりくるという理由からギターを自らの表現のツールに選びましたが、実はその何年も前からシンセサイザーにハマっていた自分が居て。きっかけはYMOで、中学1年のときでした。SEQUENTIAL Prophet-5やMOOGのシンセにあこがれ、キング・クリムゾンの『ディシプリン』でROLAND GR-300にもハマって……“楽器として格好良い”という思いが強かったですね。その後、高校2年でギターを始めましたが、ノーマルな入り方ではなかったので、エフェクターをたくさん使っていかに変な音を出すかとか、そういう部分に興味がありました。ベルリン期のデヴィッド・ボウイやジャパンに強く影響を受けていて、そういうシンセ・サウンドの質感をどうやってギターにトレースするかということが、デビュー前からの自分のテーマでした。

 

ギター型のMIDIコントローラーという選択肢もあったかと思いますが。

SUGIZO MIDIギターには全くピンと来なくて。“これ一本でどんなシンセも鳴らせる”ってなったときに、もう全然、音の力が無くなってしまったなと……僕個人としての感覚ですが、やっぱり唯一無二の楽器で、唯一無二のモジュールでないと、震えるような音の感動は生まれないんだなと1990年代から思っていて。

SUGIZO

それで近年、ご自身のギターを掛け合わせるシンセとして、モジュラー・シンセに関心を?

SUGIZO まだ6~7年の付き合いですけどね。で、モジュラー・シンセにハマり始めると、絶対にHATAKENさんを知ることになる。避けて通れないんです。それこそサンレコでHATAKENさんの記事を読んで大いに興味を引かれ、三軒茶屋space orbitで開催されているModular Cafeに足しげく通って知り合って、“一緒に音を出したいんですが、どうでしょうか?”とお声掛けしたんです。2016年くらいですね。

HATAKEN で、翌2017年5月に僕が主催しているTokyo Festival of Modularが旧SuperDeluxeであって、SUGIZOさんとのライブが急きょ決まりました。そのときのセッションの手応えが、今につながっているのだと思います。

SUGIZO そして同じころ、HATAKENさんに自分の曲のリミックスをお願いしたんです(編注:リミックス・アルバム『SWITCHED-ON OTO』に収録されている「The Eternity Voyage Remix by HATAKEN」)。僕のギターのオーディオが変調されて、すごい音になって返ってくるという感覚が非常に面白くて。そのときは、いわば録音済みのギターがオシレーター代わりになっていたわけですが、“リアルタイムに演奏したものをモジュラー・シンセに通しても面白いんじゃないか”と思い始めたんですね。

2019年7月8日に中野サンプラザで開催された『SUGIZO 聖誕半世紀祭 <DAY2>』の様子

2019年7月8日に中野サンプラザで開催された『SUGIZO 聖誕半世紀祭 <DAY2>』の様子

2019年7月8日に中野サンプラザで開催された『SUGIZO 聖誕半世紀祭 <DAY2>』の様子

2019年7月8日に中野サンプラザで開催された『SUGIZO 聖誕半世紀祭 <DAY2>』の様子。SUGIZOとHATAKENのコラボレーションは2017年リリースのSUGIZOのアルバム『ONENESS M』にさかのぼり、以降、2018年のリミックス・アルバム『SWITCHED-ON OTO』や2020年の『愛と調和』などで、互いの感性をぶつけ合ってきた。ライブでのインプロビゼーションで培った“あうんの呼吸”も、作品の精度を高めていると言えよう
Photo:Keiko Tanabe

オシレーターとギターには、モジュラー・シンセの音源として、どのような違いがあるのでしょう?

HATAKEN オシレーターは、どういった挙動にするかを自分自身がコントロールしますよね。だから出音についても事前に察しが付くんですけど、ギターはその意味でインプロビゼーションのようなものだから、先が読めなかったりする。また、SUGIZOさんがエフェクターで加工した音色なので、倍音成分などが豊かです。モジュラー・シンセ側のエフェクトのかかりが良いという特徴もありますね。

SUGIZO 当時のリミックスがとても良く、“このテイストでアルバムをまるまる作りたい”と思ったのが『The Voyage to The Higher Self』の発端になっています。今回は、まず僕の曲をHATAKENさんに解体/再構築してもらいたかったんです。次に、そのリミックスされたトラックに対して僕が新たに“作曲”を加えて新しい曲に変容させる。そして再びHATAKENさんに“こういう音を追加したいんです”とオーダーして……みたいなやり取りを行いました。そのキャッチボールには、主にデータのまとめや管理で大野君にも参加してもらって、リコンストラクションとコンポーズとミキシングをシームレスに行き来するような作り方をしましたね。

 

リミックスでもなければ、純然たるオリジナル作品の制作でもない、不思議なプロセスだと思います。

SUGIZO 既存の曲をあくまで“素材”として扱いつつ、そこから新しい曲を構築するという点では、DJやトラック・メイカーたちが実践してきたサンプリング・ミュージックの作り方に近いと思います。僕が多大なる影響を受けたジ・オーブとか、DJシャドウやDJ KRUSH氏もそうですが、過去のレコードの最高に良い部分を抽出して新しい音楽を生み出すというアプローチは、あらためて考えてみてもむちゃくちゃクールな行為だと再認識しています。その感覚を受け継ぎつつ、自分の曲を素材にしてやってみようと思ったんです。元の音をDNAとして残しながらも進化/変容させて新しいものを生み出すというアプローチが、すごく新鮮でした。

HATAKEN

 

このインタビューの続きはこちらでお読みいただけます(後編は会員限定):

 

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Release

『The Voyage to The Higher Self』
SUGIZO×HATAKEN
SEPHIROT:SPTC-1010

Musician:SUGIZO(g、vln、syn)、HATAKEN(syn)
Producer:SUGIZO×HATAKEN
Engineer:SUGIZO、HATAKEN、大野順平
Studio:ART TERROR、HATA KENKYUUJYO、Sound DALI