周波数特性ができる限りフラットなスピーカーを使いたいと思ったんだ
世界の各都市で活躍するビート・メイカーのスタジオを訪れ、音楽制作にまつわる話を聞く本コーナー。今回登場するのはニューヨークを拠点とするウェイビー・べーグルズだ。今年6月に発売した最新アルバム『BAVY』では、ビート・メイキングだけでなく、ボーカル、レコーディング、ミックス、マスタリングまで自身で手掛けている。サンプリングを土台とした、チルでオーセンティックなヒップホップ/R&Bを得意とする彼に話を聞いた。
キャリアのスタート
僕はティーンエイジャーの頃からヒップホップに夢中で、18歳のときにビート・メイキングを始めて以来、12年間ずっと制作を続けている。いつも兄はヒップホップを聴いていたし、母はオールディーズ、姉はR&Bをかけていたから、常に周りには音楽があった。ある時YouTubeを観ていたら、ジャスト・ブレイズがインタビューを受けながらその場で即興でビートを作っていて、“DAWはIMAGE-LINE FruityLoops(現在のFL Studio)を使っている”って言ったんだ。それをきっかけに、僕も自分のコンピューターにFruityLoopsをインストールしたよ。それからビートを作り、レコードを買い、ほかの機材も使うようになったんだ。2010年以降は、グリーン・スタジオNYCでメンターであるジェフ“モロッコ”デラ―ムからエンジニアリングの仕事を学びはじめた。同時にいろんなアーティストにビートを作るようにもなったんだ。ウータン・クランのU-ゴッドの息子、iNTeLLにビートを作ったこともある。
初期の機材
FruityLoopsの次にゲットしたのは、MIDIコントローラーのAKAI PROFESSIONAL MPD32。モニターはSONYのスピーカーを使っていた。当時の僕はビート・メイカーだったから、レコーディングやミキシングのエンジニアになろうなんて考えてもいなかったんだ。その後、KRK RokitシリーズのモニターやAVID Mboxシリーズのオーディオ・インターフェース、コンデンサー・マイクはAUDIO-TECHNICA AT2035を手に入れた。AT2035はすごく安いけどパワフルなマイクだったね。NATIVE INSTRUMENTSの音楽制作システムMaschineや、AKAI PROFESSIONALのMIDIキーボードなども使っていた。
現在の機材
今はAPPLE iMacにLogic Proをインストールし、NATIVE INSTRUMENTS Maschine Studioをデスクの中心にセットしている。モニターはADAM AUDIO T8Vだ。以前使っていたRokitシリーズのスピーカーは低域がブーミーだからヒップホップ向きで、多くのスタジオで使われている。でも僕は、ミックス・エンジニアとしては周波数特性ができる限りフラットなスピーカーを使いたいと思ったんだ。API 500互換モジュールのSHADOW HILLS Mono Gamaはマイクプリで、オールドスクールなサウンドなんだけど良い仕事をしてくれる。そして、このスタジオで最も重要なのがコンデンサー・マイクのNEUMANN U 87 AI。スタジオ用マイクとしてはスタンダートなモデルで、幅広いレンジを収音できるんだ。
ビート・メイキングの手順
まずはレコードやWeb上で古い音楽を聴いて、インスピレーションが湧くものを探すんだ。そして、印象的な部分があればサンプリングする。それをチョップしたり、ピッチを変えたり、ドラムを足したりして好みのサウンドに仕上げていくんだ。
ビート・メイキングの醍醐味
ビート・メイキングに没頭して、辛い現実から逃れられるところ。人生って常に笑顔でいられることばかりってわけじゃない。悪い日もあれば、悲しいことだってある。
今後の展望
当面は、レコーディング・アーティストとして自分の作品を極めていきたい。
クリエイターへのアドバイス
どんな理由があっても、途中で止めないことだ。自分が好きでたまらないことは、止めちゃだめだぞ!
SELECTED WORK
『BAVY』
ウェイビー・べーグルズ
(Break All Records)
僕のレコーディング・アーティストとしてのデビュー作でもある。アルバム全部の録音/ミックス/マスタリングを手掛けているんだ。自分としては過去最高作品だと自負しているよ。