Awesome City Club × ESME MORI『Grower』インタビュー 〜トラック・メイカーと曲作りするメリットは実験的な音作りにトライできること

f:id:rittor_snrec:20210304153922j:plain

トラック・メイカーと曲作りをするメリットは
実験的な音作りにもトライできることだと思います

2013年にバンドとして活動をスタート。現在は、男女ツイン・ボーカルのatagi(写真左)、PORIN(同中央)とギタリストのモリシー(同右)による3人グループとして活動するAwesome City Club。新体制の彼らは、もともと持ち味だったロック/ソウル/R&Bに現代的な音作りをプラスして、より自由な表現を獲得している。最新アルバムの『Grower』はエレクトロのエッセンスが積極的に取り入れられており、Awesome City Clubの多様なグルーブの解釈が垣間見られる一枚。その背景として、作曲&アレンジに、テクノやアンビエントなど電子音楽への造詣が深く、シンガー・ソングライターとしても活動しながら、iriやASOBOiSMのプロデュースも手掛けている気鋭、ESME MORIが参加している。今回はメンバーとESMEの4名に、本作の制作フローとこだわりのサウンドについて語ってもらった。

Interview:Mizuki Sikano

 

ESME MORI(エズミ・モリ)
サウンド・プロデューサー/シンガー・ソングライター。Awesome City Club 、iri、ASOBOiSM、chelmicoなどさまざまなアーティストの作品を手掛け、CM/広告音楽/劇伴の制作にも参加している

 

ESMEさん発信で曲作りをするのは
僕たちにとって新境地だった

ーESMEさんに依頼したきっかけは何でしたか?

atagi レーベルを移籍したタイミングで、もっとさまざまな音楽性に挑戦するためにも自分たちの感性を広げてくれる編曲家の方と一緒にやりたいというのがスタートでした。

PORIN iriさんとよく対バンしていて、アレンジャーにESMEさんが参加されてるのを知って、素敵だなと。

 

ーESMEさんはレーベル移籍後初のアルバム『Grow apart』から参加されていますが、当初オファーをもらったときはどう思いましたか?

ESME バンドのプロデュースはやったことが無くて……戸惑いがありました。例えばiriさんの楽曲アレンジをしたときは、歌のデモをブラッシュ・アップする感じだったので。

 

ー『Grower』はatagiさん作曲のものが多い中、ESMEさんがかかわる「tamayura」「Fractal」はatagiさんとESMEさんの共作になっていますね。

atagi 実は、これが僕たちにとっての新境地でした。普段は僕が作ったデモから始まるけど、この2曲の出発点はESMEさんなんです。

ESME 前作『Grow apart』では「アンビバレンス」「タイムスペース」「Black and Blue」「ブルージー」「Okey dokey」の5曲をプロデュースしましたが、そのときはatagiさんが作ったコードとメロからスタートしましたよね。今回はそれを僕からやってみようかなという。

 

 

ーこの方法を試した理由は何だったのでしょう?

atagi 『Grow apart』のレコーディングを終えたタイミングで、ESMEさんが “オーサムでちょっとやりたいことあるんですよね”って言葉をポロッとこぼして。そこで提案してくれたのが、すごく興味を持てる内容だったんです。

ESME atagiさんもPORINさんも高い声が注目されがちですが、低い声もすごく良いんです。前回はバンドっぽく演奏的な打ち込みを目指しましたが、『Grower』は必ずしもそうでなくてよいのかなと。

 

ー演奏することを前提としない音楽制作は、Awesome City Clubにとって今回が初めてでしたか?

atagi  そうですね。でもバンドの結成当初から、楽曲至上主義な考え方はしていたんですよ。その後僕らはいろいろ変化をする中で、良い歌、アレンジを作りたいというシンプルな考え方が強まったのかもしれません。

PORIN 私たちは特にエゴが無いタイプなので、曲が本当に良くなる最善の方法を選んで制作しています。これが結果的に、今の私たちの特徴になっているのかもしれない。

モリシー 僕は結成当初よりも“自分はこう演奏したい”みたいなこだわりは無くなってきていて。その理由は、Awesome City Clubの良いところを生かすことを優先するようになったから。その反面、自分のギターをより良く録音するために、機材へのこだわりはすごく強くなりました。

 

ーESMEさんがかかわられた2曲は特にエレクトロの色が濃くて、表現が飛躍的に発展している印象を受けました。

atagi 楽曲のストロング・ポイントをESMEさんが作り、それに僕らがメロディやハモリを作って肉付けをしていく制作方法を採ったからかもしれないですね。

 

ー制作はどのように進んだのでしょうか?

ESME 僕がコードとリズムを簡単に打ち込んだオーディオ・データを4パターン送って、その中からatagiさんが選んだのが「tamayura」と「Fractal」でした。それにatagiさんがメロを重ねて、僕はそのメロを聴きつつアレンジをブラッシュ・アップします。次に、atagiさんが歌詞を入れたオーディオ・データをもらい、アレンジを再考する流れです。

 

ーその後に本番のレコーディングですか?

ESME その前に今回は、僕の家でatagiさんとPORINさんの仮歌を録りました。それを聴いて、僕はアレンジの音を減らしたりもしています。基本的にハモリはatagiさんが作っていて、データもatagiさんが持っています。

atagi ハモリは自宅でレコーディングしながらDAWの中で重ねていきます。その録音データを確認しながら、スタジオで歌の本チャンを録るんです。

PORIN 前回は当日にハモリを作ったりしていたけれど、今回はこの仮歌の過程があったことでレコーディングがスムーズに進行しました。全体的にキーが低めだったので、等身大で、ナチュラルに歌いやすかったです。

 

ーギターの録音はどのタイミングで行うのでしょう?

モリシー 歌録り前に、宅録で行います。僕はこのタイミングで初めて曲を聴くので“良い曲だね”みたいな気持ちもこのタイミングで生まれる。聴きながら僕の家でESMEちゃんと相談しつつ、レコーディングしていきます。

ESME 「tamayura」は僕から具体的なディレクションをしたのですが、「Fractal」はデモ段階でそんなにギターを入れる予定が無かったんです。でもサビだけ入れたら良いんじゃないって話になって、試してみたら結構ハマりましたね。

モリシー そのとき僕はヴルフペックのコリー・ウォンにハマっていたから、サビでそれっぽく単音で弾いてみたら“良いね!”みたいな感じで。それをダブらせて鳴らそうかっていう感じで進んでいきましたね。

 

ー「tamayura」では、ギターは逆再生などの加工が施されている部分もありますね。

ESME ギターを録音する段階で“ここは逆再生しよう”と考えながらディレクションをして、その後は勝手に逆再生をしてしまってるんです(笑)。僕はギターが弾けないからモリシーさんには言葉で伝えるしかないけど、素晴らしく応えてくれます。モリシーさんの自宅スタジオでリラックスしてレコーディングできるのは良いです。

モリシー 僕もESMEちゃんの加工は好きですね。

 

atagi’s Recording Set

f:id:rittor_snrec:20210304162433j:plain

atagiがデモ作りを行う際のセット。オーディオI/OはSTEINBERG UR12で、ヘッドフォンはROLAND RH-300。歌録りに使用しているのはコンデンサー・マイクのAKG C214。椅子の横には、GIBSONのアコギが置かれている

f:id:rittor_snrec:20210304162707j:plain

6年前から使用しているDAWはPRESONUS Studio One。作曲やハモリ作りのための歌録りはもちろん、自ら打ち込みをしてデモ作りを行うこともあるという

 

バンド活動を始めたてのころから
Studio Oneでデモ作りしていました

ー皆さんはどのDAWを使用されていますか?

ESME 僕はAPPLE Logic Proです。オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo X4を使っています。

PORIN なぜLogic Proを使ってるんですか?

ESME 大学時代にAPPLE GarageBandを使っていたからですね。

atagi 僕はPRESONUS Studio Oneです。6年前はBOSSのMTRを使っていて、DAWに乗り換えるときにモリシーがStudio Oneを使っていたので同じものにしました。

モリシー 僕はStudio One以外にAVID Pro Toolsを使っています。でも、宅録はStudio Oneで行うことが多いです。

PORIN 2人とも、何でStudio Oneにしたの?

モリシー 直感的にできるからかな。

PORIN それは、操作しやすいって意味?

モリシー その前はLogic Proを録音に使っていたけど、録音とエディットの操作がしづらいと感じたんですよ。でも、偶然PRESONUSのオーディオI/Oを購入したら、Studio One Artistが付属していて。バンド活動を始めたてのころは、僕のStudio Oneでデモ作りをしていました。Studio Oneなら、基本的にドラッグ&ドロップの操作でいろいろなことができるし、入出力関連の操作も分かりやすい。

atagi 僕はStudio Oneしか使ったことがないけれど、確かに操作は理解しやすかったです。正しい表現かは分からないけれど、Studio OneはAPPLE Macに近いような気がします。Pro ToolsとかはWindowsのようなイメージで。

ESME ショートカットとか覚えたりして慣れれば、Pro Toolsはめっちゃ速く作業できそうとは思うんですよね。

 

ーもしかして、PORINさんは新しいDAWの購入を検討中だったりするのですか?

PORIN いや、そういうわけではないです!

ESME 回答が今日イチで速かったですね。

atagi でも、PORINの中の文明は着実に歩みを進めていて……ついにお互いの宅録したボーカルをオーディオ・データでやり取りできるようになったんです(笑)。

 

ーPORINさんも環境は整えている?

PORIN 一応、リモート・セッションなどもあったのでGarageBandは使っています。ほかにもAUDIO-TECHNICAのコンデンサー・マイクAT2020と、FOCUSRITEのオーディオ・インターフェースScarlett Soloも購入して、デモ用の歌を録ったりもしました。

atagi なぜか、毎回ステレオで送られてくるんですよね。だからほかのトラックと並べると、PORINの声だけめっちゃでかく聴こえてくる(笑)。

PORIN この前はマイクの後ろに向かって歌っていたので、とても小さい音になってしまって……間違えました。

一同 (笑)。

 

モリシーさんの自宅スタジオは本誌1月号で紹介していますが、機材も豊富にそろっていますよね。

ESME モリシーさん家に行けば、結構何でも録れる(笑)。

PORIN いつの間に!?っていうぐらい。

atagi 行くたびに機材増えてるよね?

モリシー atagiとESMEちゃんは結構来てるよね。

ESME 僕はモリシーさんと別の案件でもかかわっていたりするので、家も近いし、よく行くことがあったりして。

atagi 2人はちょっとしたマブ感も出てきてる気がする。

モリシー  よく吸音材や機材のことを相談し合っています。ESMEちゃんは結構刺激になる存在なんですよね。最近こそ僕もアーティストのサポートやプロデュースにかかわる中でトラック・メイクもするようになったけれど「アンビバレンス」のころは特に新鮮だった。送られてくるステム・データを聴きながら、ESMEちゃんのトラック・メイカーっぽい音作りを聴いて勉強していましたね。

 

ー制作環境の写真を拝見しましたが、モリシーさんとESMEさんのデスクは似てますよね。

モリシー 僕のデスクは友達に手伝ってもらってDIYで作ったものなんですよ。

ESME それを見て僕はこの前の夏、制作部屋を構えたタイミングでOUTPUT Platformというデスクを購入しました。アレンジャーになってから、曲のキーを変えなければならないことが増えたので、ハードウェアは少なくて、制作はほぼソフト音源をメインに使っています。シンセはSPECTRASONICS Omnisphere 2やROLAND Zenologyなどを。ミックスに使用するエフェクトもプラグインが多く、EQはFABFILTER Pro-Q3をあらゆるパートで使用していますね。でも、今後はアウトボードをちょっと買おうかなって思ってます。ついつい効率的な作業方法を採ってしまうけれど、飽きずに楽しくやっていくためには機材を買うことってすごく大事ですよね。

 

ーモリシーさんも以前アナログ・ミキサーを導入したいと仰っていましたよね?

モリシー アナログ・サミングをやりたいので、SOLID STATE LOGIC Sixを購入検討中ですね。エンジニアの方にアナログ機材を通してもらった音って、格段に違う。それを知っちゃうと、自分でコンピューター上のみで作った音はちょっと物足りなさを感じるんですよ。

ESME 録り音が良くないと、幾らプロセスしても良くならないですもんね。でも、モリシーさんの録り音はめっちゃ良いなと思います。

 

ESME MORI’s Private Studio

f:id:rittor_snrec:20210304175419j:plain

ESME MORIの自宅スタジオ。モニター・スピーカーはFOCAL CMS40を設置。ヘッドフォン・アンプはCURRENT MP421-Mで、ヘッドフォンはDENON AH-D5200を2年ほど愛用しているという。オーディオI/OはUNIVERSAL AUDIO Apollo X4。「SOFTUBEのプラグインを効率的に扱うために購入した」というSOFTUBE Console 1がデスクOUTPUT Platformの中央にセットされている。右側にはマイクプリのGOLDEN AGE PROJECT PRE-73MK3も見える

 

ライン録りしたギターが好きなのは
生々しさよりも存在感が得られるから

ーギター録音はどのように行いましたか?

モリシー ラインでしか録っていないですね。『Grower』は全部アンプ・シミュレーターのSTRYMON Iridiumで録っていて、あれぐらい太く出てくれれば良いのかな。

ESME 僕はライン録りしたギターの音が、近めに感じられるのが好きで。生々しいギターというよりは、ギターとしての存在感が録れる感じが良いなと思うんです。

モリシー 雑味が少ないよね。

atagi  確かにESMEさんの曲だと、アンプの音よりもライン録りの音の方が合う気はしますよね。

ESME 抜けが良いから打ち込みとも合うんでしょうね。

 

ーミックスはどのように行うのですか?

ESME ボーカル録音後にエンジニアの大西慶明さんに全トラックをお送りします。イメージを伝えるために、自分でできる限り音を作り込みますね。トラック・メイカーが行うミックスは “そんなところは上げないよ”っていう部分を上げたりする。それで格好良くなることもあるんです。例えばコンプのかけ過ぎは良くないけど、かけないと方向性が伝わらないですよね。アレンジャーがバンドのプロデュースをするメリットは、エンジニアの方が行う処理とは違った実験的な音作りにもトライできることだと思います。自分でそうやって作り込むのはもちろん、大西さんに完成度を高めていただくためにも、説明を加えたり、ドライなデータも一緒に送るようにはしています。

 

ーリバーブはセンド&リターンでかけている?

ESME 結構深めにかけたいときは直接トラックにエフェクトをインサートするけれど、基本的にはAUXトラックでエフェクト・チェインを作り、それも書き出して送ります。

 

ーエンジニアに伝わるように丁寧に音を作ることは、Awesome City Clubの皆さんとの円滑なコミュニケーションにもつながっているのではないでしょうか?

ESME 『Grow apart』の制作時期に、そういうところに気を使うとスムーズに制作を進行できると学びました。プリプロのときに、atagiさんが僕の家に来て2人で作業しているときも“これすごく格好良い”みたいな話をずっとしてましたよね。

atagi ESMEさんが最近作った曲とかも聴かせてくれるんですよ。本当にたわいもない話ができたのが良かったなと思っています。日々世の中や自分の中の情報もアップデートされるけど、他人同士が同じ速度でアップデートしていくのはあり得ないじゃないですか。お互いが“今、ここに居る”という、細かい交流をメンバーだけでなく、アレンジャーであるESMEさんとも取りながら制作できたのは、本当に良かったです。あと“この隠し味があるからこの曲は良い”って会話もしました。例えば、“ノイズっぽいサンプリングがめちゃ肝で”とか。音階楽器のどれが泣きのポイントを握っているとか、その感覚を共有するのってすごく大事。

ESME これが無いとダメなんですということを伝えたくて……何か、すごく奇麗な曲の中にめちゃくちゃわけの分からない要素があると人は心がつかまれると思うんです。“ここに何で逆再生のサンプルを入れてる?”っていう違和感。コードの後ろに不思議な音を入れてみたり……普段はそこに耳は行かないけど、実はそれによって、聴者は音像のさまざまなところへ注意が分散するんですよ。そのバランス感が大事で、どの音も奇麗な加工で鳴りそうなタイミングに入れてしまうと、面白みの無い曲になってしまう気がする。

 

シンプルなアレンジにしたいときこそ
一番展開させないといけないと思った

ー加工したボイス・サンプリングも入ってますね。

ESME 「tamayura」はシンプルに聴こえるけれどトラック数はたくさんあって、Aメロが一番多い。一番静かなシーンだからこそ、一番展開させないといけないと思って。左右にパーカッションのサンプルを切り張りしたり、一瞬だけ開放感のあるサウンドを入れたりしています。普通に聴いたら通過してしまうけれど、シンプルなアレンジにしたいときこそ、音をこだわって入れ込むと良いんです。

 

ーサビでは力強いベースとビートが印象的です。

ESME 「tamayura」は結構ブリブリさせて地を這うような雰囲気にしてます。「Fractal」は中低域がブリッとした感じで、その処理はめちゃ難しいので自分で頑張って、大西さんの手もお借りして完成しました。ベースやキックの60Hz周辺を強調する目的で低域エンハンサーのBOZ DIGITAL LABS Bark Of Dogなどを使っています。サビのシンセ・プラックにはNICKY ROMERO Kickstartをかけて、4つ打ちのダイナミクスをより目立たせました。2年前にヘッドフォンをDENON AH-D5200に変えたんですよ。そうしたら低域の聴き方が分かるようになって、ミックスが楽しくなりました。その影響はアレンジにも出ていると実感しています。日本の住居環境では、スピーカーで完ぺきにサブベースの帯域を聴くのは難しいじゃないですか。反射とか気温も関係するし。だから僕は低域の量感チェックはヘッドフォンで行っているんです。こういうトラック・メイカー視点の音を入れると、通常のバンド・サウンドからは脱却できるから良いんじゃないかと思います。

モリシー バンドは人数が決まっていると、出す音も限られてくるからね。そういえばさっきESMEちゃんが言っていたことを、atagiも以前言っていた時期があったんです。“この気の利いた誰も気付かない音が重要”って。そういうとこで、やっぱり2人は通じ合ってるなって思います。

atagi 今は担当していないけれど、前はアレンジを僕がやっていたころもあって。でも、とかく削られていくんですよね。もちろん自分が気付かないだけで、無駄だった音もあったのかもしれないけど。

 

ーお互いの意志を重ね合うのは難しいことですよね。

ESME atagiさんとはアレンジについても細かい話をしました。「tamayura」のサビではキックを4つレイヤーしていて、4番目を抜いたらニュアンスが変わることや、3番目を抜いたらスカスカになるのとかも、聴いてもらいながら4つ重ねるバランスの良さを確認してもらったり。ちなみに「Fractal」では3つ重ねているんですけど。

atagi  ESMEさんだからこその音と温度を感じ取ったし、そういうものの連鎖で作品を完成できたのは幸せなことですよね。良くないなと思ってしまったものにテコ入れするのは苦しいですし、それをやるとやった気になれちゃう。でも、そういう思いって本当はする必要無いと思って。だからすごく健全なクリエイトができたのではと思っています。

 

「tamayura」Project Window

f:id:rittor_snrec:20210304175813j:plain

画面上には逆再生させたギターのトラックなどが並び、画面下にはサビで4つの音色がレイヤーされたキックのトラックがある。ESMEは、シンセ・コードにSPECTRASONICS Omnisphere 2を使うことが多く、シンセ・パッドにはROLAND Zenologyを補強的に使っているそう。「Bメロやラストのサビに出てくるシンセ・プラックは、U-HE Hive 2やVENGEANCE SOUND Avengerを隠し味的に混ぜたりしています」とESMEは説明する

「tamayura」Plugins

f:id:rittor_snrec:20210304180121j:plain

ひずみ系プラグイン・エフェクトのKILOHEARTS Distortion(左)とCAMEL AUDIO CamelCrusherは、スネアや上モノにひずませない程度にかけて音抜けを良くするのに使用された

f:id:rittor_snrec:20210304180155j:plain

低域エンハンサーのBOZ DIGITAL LABS Bark Of Dogは、ベースやキックなどの60Hz周辺を強調するときに使う。さらに少し上の帯域を強調するときはWAVES Renaissance Bass、KSHMR Essentials Kickなども使用するそう

f:id:rittor_snrec:20210304180222j:plain

サイド・チェイン・コンプ専用プラグインのNICKY ROMERO Kickstart。「サビのシンセ・プラックにかけることによって、断続的なフレーズが悪目立ちしなくなる上に、4つ打ちのダイナミクスをより目立たせることができます」とESME

f:id:rittor_snrec:20210304180251j:plain

Logic Pro内蔵コンプ。ハイハットにかけて、AUXトラックで4つ打ちキックのタイミングでサイド・チェイン・コンプをかけている。これによってハイハットに奥行きやグルーブを生むのが狙い

f:id:rittor_snrec:20210304180318j:plain

ESMEがほとんどのパートで使用しているEQのFABFILTER Pro-Q3

f:id:rittor_snrec:20210304180339j:plain

フィルター効果除去プラグインのZYNAPTIQ Unfilter。ビートのサンプルなどの質感を変えて、楽曲になじませるために使用しているという

 

ESMEさんと一緒に作ったことで
プロデューサーという存在の見方が変わった

ーメンバー編成や音楽性、アレンジャーが変わってもAwesome City Clubらしさが失われず、それどころか際立つというのはすごいことですよね。

ESME atagiさんはハモリを作るセンスがすごく優れている方なんです。僕は普通に3度や5度の音で重ねてしまうけど、atagiさんはズラしてくる。一度「tamayura」のコーラスを提案いただいたときに、最初は僕の中で“どうだろう”って思ったけど、録ってみたら確かに良いんですよ。

PORIN 確かに、それはデビュー当時からのオーサムの強みかも。普通じゃないから歌うのは結構難しいんですけど。

ESME  atagiさんはどの曲でも、多分そこに集中して取り組んでいて、だから音楽のジャンルが変わっても、そのハモリが研ぎ澄まされて聴こえてくるのかもしれません。

atagi  僕はESMEさんと一緒に作ったことで、プロデューサーという存在の見方が変わったんですよ。メンバーと同じ目線で、純粋に良い曲を作りたいと思っていただけてうれしいです。それによって自分らも、未来を見て頑張ろうと思えるので。

ESME 関係性って如実に音に影響しますからね。皆さんと2年間一緒に制作して僕も成長できた気がします。

PORIN  ESMEさんはもうメンバーみたいな感じなので、何でも話せる。ESMEさんがataさん(atagi)に送った残りの2曲も聴いてみたいですね。

モリシー 今後も一緒に曲を作っていきたいです。

 

Release

Grower

Grower

  • Awesome City Club
  • ロック
  • ¥1833

『Grower』
Awesome City Club
(エイベックス)

  1. 勿忘
  2. tamayura
  3. Sing out loud, Bring iton down
  4. ceremony
  5. 湾岸で会いましょう feat. PES
  6. 記憶の海
  7. Nothing on my mind
  8. Fractal
  9. 僕らはこの街と生きていく
  10. 夜汽車は走る

Musician:atagi(vo)、PORIN(vo)、モリシー(g)、ESME MORI(prog)
Producer:永野亮、ESME MORI、久保田真悟 (Jazzin'park)、永井聖一
Engineer:大西慶明、南石聡巳、佐藤宏明
Studio:prime sound studio form

 

www.awesomecityclub.com

 

ESME MORI ウェブサイト

 

関連記事

www.snrec.jp

www.snrec.jp

www.snrec.jp