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「UNITED STUDIO TECHNOLOGIES UT FET47」製品レビュー:独自カプセルを採用し往年のマイクを意識したFETコンデンサー・マイク

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 1972年の発売以来、今なお世界中で愛され続けているビンテージ・マイク、NEUMANN U47 FET。UNITED STUDIO TECHNOLOGIESは、そのクラシックなマイクを意識したUT FET47を発表しました。オリジナルのU47FETは、現代のレコーディング・スタジオにおいても使用頻度が高いモデル。いやが上にも期待が高まります。

ハイザーマン氏と共同開発したカプセルや
カスタムCINEMAG製トランスを内蔵

 NEUMANN U47 FETは、1964年ごろに製造中止となった真空管コンデンサー・マイクNEUMANN U47の後継機として、1972年に発売されたモデル。増幅回路は、それまでのVF14真空管からFET回路に変更となりました。

 

 U47 FETはさまざまなプロデューサーやアーティスト、エンジニアから愛用され、1970年代を代表するマイクの一つとなります。とりわけキックやベース・アンプなど、大音量のソースに使用するコンデンサー・マイクとしては唯一無二の存在に。今もなお絶大な人気を誇っています。1986年に生産終了となりましたが、2014年に復刻されました。

 

 そんな名機のU47 FETを意識したという今回のUT FET47。ワクワクしながら箱を開けてみると、そのうり二つな見た目にびっくり! UNITED STUDIO TECHNOLOGIESのロゴがひし形のため、より本家NEUMANNをほうふつさせるデザインです。マイク・スタンドへの装着時に使用する“U47 FET特有のアーム”も再現されており、オリジナルに対するリスペクトとUT FET47への本気度が伝わります。

 

 外形寸法は63(φ)×210(H)mmで、重量は750g。ずっしりとした重みはオリジナルそっくりです。カプセルは、HEISERMANのエリック・ハイザーマン氏と協力して開発されたNEUMANN K47スタイルの34mm径カプセル、HZシリーズを搭載。またトランスには、CINEMAG製のカスタム・メイドのものが採用されているとのことです。CINEMAGのトランスは、ビンテージ機器のリバイバル製品ではよく見かけるため期待が高まります。

 

 外観を見て気付いたのですが、オリジナルの底面にあった−6dBの出力PADスイッチが見当たりません。U47 FETでは、このスイッチと背面にある−10dBのPADスイッチでの“2段階のレベル調節機能”が特徴の一つだったのですが、UT FET47では−10dBのPADスイッチのみが採用されています。

 

 1970年代というU47 FET発売当時のレコーディングにおいて、高出力のコンデンサー・マイクを大音量の楽器へ近接マイクで立てる場合に“ひずみ防止”として重宝されたこの2段階PAD方式。現代のマイクプリやデジタル・レコーディングでの使用を考えると、UNITED STUDIO TECHNOLOGIESはUT FET47では不必要と判断し、よりピュアなサウンドを追求したのだと筆者は推測しています。

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背面には、−10dBのPADスイッチと75Hzローカット・スイッチを搭載している

U47 FETよりも幅広い周波数特性
オケに埋もれない中高域の張り出し感

 それでは、UT FET47のサウンドをチェック。今回はオリジナルのU47 FETと比較しながら検証します。まずテストで思い浮かんだのはやはりドラム、それもキックのオンマイク。U47FETは、キックやベース・アンプでの使用頻度が高いマイクです。こう聞くとローエンドがリッチな音を想像するかもしれませんが、実際ローエンドはすっきりと締まりが良く、U47 FETの魅力は、このマイク特有の中域の表現力にあると筆者は思っています。

 

 UT FET47を一聴してみると、オリジナルと同じ方向性を持つサウンドということが分かります。しかし、それでありながらも“ややモダン”な質感にアップデートされている様子。スペック・シートを見比べて納得です。オリジナルU47 FETの周波数特性は40Hz〜16kHzなのに対し、UT FET47は20Hz〜20kHzとなっています。ローエンドもハイエンドも、UT FET47の方が少し伸びている印象です。

 

 また、オリジナルが持つ“程良いアタック感”のあるタイトな低域に対し、UT FET47は若干オープンな質感で、柔らかくて滑らかなトランジェント特性を感じます。タムの共鳴音の回り込みがわずかに多いのがやや気になりましたが、あくまで注意して聴き比べてみると分かるというレベル。全体としては好印象のサウンドです。

 

 次は、ベース・アンプで試してみましょう。結果、こちらも同じ手応え。“グッ”と締まっているというよりは、開放的でナチュラルな低域です。中高域に独特な張り出し感があり、モダンなオケの中でも抜けてくる印象と言えます。

 

 最後にボーカルでもチェック。筆者はU47 FETをボーカルでもよく使用します。U47や同じくNEUMANNのU67といった真空管マイクだと“押し出し感”が強過ぎるなと思う際にU47 FETを手に取ることが多いのです。特にロック系の男性ボーカルに使うと程良くガッツがあり、かつ滑らかで非常に扱いやすい音を録ることができます。

 

 ここでは、親交のあるシンガー・ソングライターの柴山一幸さんに協力していただきました。所感として、今回のテストにおいては最もボーカルとの相性が良い感触です。適度に華やかで、滑らかかつガッツもあり、UT FET47ならではの魅力が最も感じられます。中域の張りに加え、全体的のモダンなレンジ感が絶妙な具合で加味されているサウンドです。UT FET47はどのボーカリストにも合うというわけではありませんが、ハマれば高価なビンテージ・マイクにも負けない仕上がりになるでしょう。

 

 このクオリティのマイクがこの価格で入手できるのは、本当にうれしい限り。いかなる場面でもバッチリ!というマイクでは無いものの、U47 FETと同様“ツボ”にハマればワン&オンリーの魅力を放つことでしょう。今回はマイク選びの重要さ、そして面白さをあらためて感じたレビューにもなりました。UT FET47は、エンジニアはもちろん、歌だけでなく楽器も録音することの多いクリエイターの方にも、ぜひ試してもらいたい一本です。

 

大野順平
【Profile】スタジオ・サウンド・ダリ所属のエンジニア。中田裕二、福原美穂、SUGIZOらの作品を数多く手掛けるほか、浜端ヨウヘイや柴山一幸、baroque、榊いずみ、叶和貴子などのアーティストにも携わる。

 

UNITED STUDIO TECHNOLOGIES UT FET47

オープン・プライス

(市場予想価格:90,000円前後)

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SPECIFICATIONS
▪形式:FETコンデンサー ▪カプセル:HZシリーズ 34mm径 ▪ダイアフラム:6µデュアル・ダイアフラム、金蒸着マイラー・フィルム ▪電源:48Vファンタム ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:カーディオイド ▪最大SPL:136dB(PAD使用時は145dB)@<0.5% THD ▪出力インピーダンス:200Ω ▪ローカット:75Hz(−12dB) ▪PAD:−10dB ▪外形寸法:63(φ)×210(H)mm ▪重量:750g

 

製品情報

miyaji.co.jp

 

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