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大久保博が使うFL Studio 20 第4回〜タイム・マーカーの機能を使ってクリップの再生をコントロールする方法

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 今回はタイム・マーカーについて解説していきます。小節番号の下にラベルを配置することで楽曲の構成やテイクの管理をしやすくする機能で、例えるなら本に挟むしおりのようなもの。それだけ聞くと“え、マーカーの話?”と思われるかもしれませんが、FL Studioのマーカーは一般的なラベル機能以外にさまざまな機能を持ち合わせているのです。使いこなせば制作作業だけでなく、ライブ・パフォーマンスでもFL Studioを活躍させることができますよ。

 

再生順序をスムーズに変えられる Performance mode

 まずはタイム・マーカーを置く方法について解説していきます。タイム・マーカーを置きたい地点に、再生されている場所を示すプレイ・ポジションを移動し、プレイリスト左上にある三角形のオプションからTime Markers>Add Oneを選択。すると文字を入力できる小窓が現れます。ちなみにAlt(Macはoption)+Tでショートカットも可能です。ここに任意の名前を入力すると、トラックと小節番号の間にタイム・マーカーが表示されます。

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タイム・マーカーを置きたい地点に、再生されている場所を示すプレイ・ポジションを移動し、プレイリスト左上にある三角形のオプションからTime Markers>Add Oneを選択。出現したテキスト・ボックスに名前を入力すると、タイム・マーカーが出現する(赤枠)。タイム・マーカーはFL Studio 20 Signature(34,000円)、FL Studio 20 Producer(26,000円)、FL Studio 20 Fruity(16,000円)の全グレードで使用可能。ほかにもクロス・グレード版や解説本バンドル版が用意されているので、詳しくは製品サイトをチェック

Image-Line Software | Hookup, Inc.

 

 再生およびレコーディング中の目印としてすぐにタイム・マーカーを置きたい場合は、Ctrl(MacはCommand)+Tで“auto”と名前の入ったタイム・マーカーが設置できます。名前は右クリック・メニューからRenameを選択すれば変更できるので、ひとまずタイム・マーカーを置いて後で名前を付けてもよいでしょう。一つでもタイム・マーカーを設置した状態であれば、タイム・ライン上の右クリック・メニューからもタイム・マーカーの追加が可能です。タイム・マーカーはドラッグして移動することができ、移動単位は磁石アイコン=Snap to gridのスナップ値に従います。

 

 再生の有無を問わずタイム・マーカーをクリックすると、タイム・マーカーまでプレイ・ポジションが飛びます。ダブル・クリックすると次のタイム・マーカーまでが選択状態となり、ループ再生が可能です。デフォルトの設定で再生しながらタイム・マーカーをクリックすると即時にプレイ・ポジションが移動しますが、先ほどもアクセスしたプレイリストのオプションからPerformance mode(Ctrl+P)を有効にすると、再生中の小節が終わってからクリックしたタイム・マーカーへプレイ・ポジションがジャンプします。このモードでは曲のテンポを乱すことなく、プレイ・ポジションの移動が行えるのです。

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プレイリストのオプションからPerformance modeを選択すると、再生中の小節が終わってからクリックしたタイム・マーカーへプレイ・ポジションがジャンプする

 タイム・マーカーは、このPerformance modeを利用した制作時にも役立ちます。例えば楽曲構成に迷っていたり、幾つかパターンを作って試したい場合、曲の構成に合わせて順序良くタイム・マーカーを押すことで、パターンを入れ替えずに楽曲構成を確認できるのです。

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Performance modeは、画面のように幾つかパターンを作って試したい場合に有効な機能。順序良くタイム・マーカーを押すことで、パターンを入れ替えずに楽曲構成を確認できる

 この機能が生きるのがゲーム音楽の制作。ゲームの進行状況に合わせてプログラムで楽曲の展開構成を変えるBGM=インタラクティブ・ミュージックでは、さまざまなパターン展開や時間調整のためのループなど、複雑な流れをプレビューしながら制作する必要があるので、自在にパターンの組み合わせを変えられるPerformance modeがあると役に立ちます。

 

反復再生を行うMarker Loop
一時停止できるMarker Pause

 タイム・マーカーは右クリック・メニューの設定から、幾つかの便利な機能を持たせることが可能です。この設定を覚えると、よりタイム・マーカーを活用できます。

 

 Loopはループの開始地点を指定する機能。右クリック・メニューの上から3つ目にあるPlace loopでも同様の設定が可能です。ゲーム音楽はループ再生する曲もあるので、イントロに続くループ部分をこの機能でマーキングして繰り返すことがあります。

 

  Marker Loopは、設定したタイム・マーカーから次のタイム・マーカーまでの間をループできます。ほかのタイム・マーカーをクリックするまでループは続き、曲中に何個でも設置できます。

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Loopはループの開始地点を指定する機能。ゲーム音楽はループ再生する曲もあるため、筆者はイントロ(青枠)に続くループ部分(赤枠)をこの機能でマーキングして繰り返すこともある

 Marker Skipは設定されたタイム・マーカー区間を再生せず、次のタイム・マーカーへジャンプします。楽曲展開が複数存在することもあるインタラクティブ・ミュージックでは、簡単に楽曲の分岐操作ができるのが便利です。MAGIX Sound Forgeなどの波形編集ソフトでWAVを開くと、FL Studioで指定したマーカーがそのまま利用できるので、その後のループ設定や編集にとても役立つ機能ですね。

 

 Marker Pauseはその名の通り、マーカーの先頭で一時停止されます。次に再生する際にはMarker Pauseを設定したタイム・マーカーからスタートするので、いったん停止させてから何かのきっかけでポン出ししたい、といったシーンで役に立つ機能です。

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Marker Pauseの使用例。この画面ではライブのMC時にMarker Pauseを入れることで(赤枠)、楽曲が一時停止するようにしている

 こういった設定と先述のPerformance modeを併用すると小節の切れ目でタイム・マーカーが機能するようになるので、テンポを崩さずにさまざまな再生方法を試せます。制作での使用例を挙げてきましたが、ライブのバック・トラックをタイム・マーカーと合わせて配置すれば確実な進行管理が行えますし、舞台演劇などで演者とタイミングを合わせた音楽の再生が必要な場合にも有効です。まさにパフォーマーのためのPerformance modeと言えます。

 

 ここまでタイム・マーカーで曲全体の再生順序をコントロールすることで、制作時のプレビュー補助などを行ってきました。その中で紹介したPerformance modeですが、実はもっと奥が深い機能を備えています。トラック名の右クリック・メニューから設定できるPerformance Settingsを駆使すると、楽曲全体ではなくトラックごとにクリップの再生をコントロールすることが可能です。

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トラック名の右クリック・メニューから設定できるPerformance Settingsを駆使することによって、トラックごとにクリップの再生をコントロールすることができる。各クリップをグリッド・コントローラーに割り当ててライブのように曲を組み上げたり、ライブ・パフォーマンスで役立つ機能だ

 各クリップをグリッド・コントローラーに割り当てて、ライブのように曲を組み上げるというフローにも使えますし、完成した楽曲を分解してライブ向けDAWに負けないパフォーマンスを行うこともできます。グリッド・コントローラーを持っている方はぜひ、メニューからTOOLS>Macros>Prepare for performance modeを実行してみてください。このマクロはグリッド・コントローラーに配置しやすいテンプレートを用意してくれます。

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メニューからTOOLS>Macros>Prepare for performance modeで、ライブ・パフォーマンスに向けたマクロを実行可能。このマクロはグリッド・コントローラーへの配置を助けてくれるもので、タイム・ライン上に配置されたPadマーカーがグリッド・コントローラーの横列、各トラックが縦列として機能するようになる。クリップを配置すると、グリッド・コントローラーのパッド操作で再生できる

 残念ではありますが、私によるFL Studioの解説は今回で最後です。この先もまたどこかでFL Studioについてお話しできたらと思います。全4回、お付き合いいただきましてありがとうございました。

 

大久保博

『リッジレーサー』シリーズや『エースコンバット』シリーズなど、数多くのゲームのサウンド・デザインおよびトラック・メイクを担当してきた、バンダイナムコのサウンド・クリエイター。その一方でアーティストとしてもハウス·ミュージックを軸に楽曲制作を行い、多くのタイトルに参加している。またハウスDJとしても活動しており、自らクラブ・パーティを主催することもある。Twitter@ookubon

 

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