Vaundyが『replica』を解説!

Vaundyが『replica』を解説!

ここからは、Vaundyによる『replica』Disc 1の全曲解説をお届けしよう。制作の裏側やレコーディングの手法などを詳しく語っていただいた。

1. Audio 007

 『replica』の1曲目はSEです。アルバムには合計4曲のSEが入っていて、それぞれミックスまで僕が手掛けています。アルバムの曲順も僕が考え、一つのストーリーになるように曲同士の間にSEや効果音などを挿入しているんです。「Audio 007」は今年行われた25公演のホールツアー『Vaundy one man live tour “replica”』のオープニングSE。カセットデッキのスイッチ音などを挿入しています。

2. ZERO

 イントロからオーディエンスの歓声を曲に重ねています。Aメロでも小音量で鳴らしているのでノイズのように聴こえるかもしれませんが、これはアリーナ公演の空気感を擬似的に再現したものです。またこの歓声音はサンプルで、リバーブを加えることでアリーナの空気感を再現しています。これは、リスナーに“大きな空間でライブをしている”というイメージを持ってもらうことを意図しているからです。

3. 美電球(テレビ朝日「サタデーステーション」「サンデーステーション」 オープニングテーマ)

 アルバムの曲順として、「ZERO」のあとに「美電球」を配置したのは、アリーナの広い会場から突然“室内の空間へとシフトする”というイメージを表現したかったから。一気にシーンが切り替わり、よりVaundyのパーソナルな側面にクローズアップしていくような感じで、アルバム全体を通した物語の導入部分を表現しています。この曲は、全パートを自宅スタジオでレコーディングしました。

4. カーニバル(Netflix「御手洗家、炎上する」主題歌)

 Netflixドラマのために書き下ろした曲です。御手洗家は二面性を持つ家庭ということもあり、楽曲も前半と後半で大きく展開を分けてそれらを表現しています。物語が後半に進むにつれ、ドラマのキャラクターたちがそれぞれの傷を癒やしながら生きていく様子を楽曲を通じて描きました。僕は“書き下ろしてくれ”って言われたら、とことんその内容に合わせて楽曲を作るんです。

5. 1リッター分の愛をこめて

 前半のワンコーラスは2〜3年前に学校の課題で制作したもので、後半は前半に合わせて新しく作った部分。ドラムも前半はサンプル素材で作っていますが、後半は生ドラムに特化したソフト音源、TOONTRACK SUPERIOR DRUMMER 3で制作しています。ちなみに水の音が曲中に入っていますが、それは実際に1リットルのペットボトルを振ったり、ふーっと吹いたりした音を録音したんです。

6. 常熱

 この曲のギター、かっこいいですよね。これは、半分は生音で、もう半分はラインで録った音にギター/ベースアンプ・シミュレーター・プラグインのWAVES GTR3を用いて音作りをしています。「東京フラッシュ」のギターでもGTR3を使用していて、かなり使いこなしていると自負していますね(笑)。個人的にお気に入りなのはストンプエフェクトのReverbです。いい感じのルーム感を演出できます。

7. Audio 006

 これは去年の日本武道館公演『Vaundy one man live at BUDOKAN “深呼吸”』のSEです。時計の音や雨の音、雷、サイレンなどの音はすべてサンプル素材を組み合わせて作っています。走っている足音は、TASCAMのレコーダーを使い自分でフィールドレコーディングしました。息づかいも自分で録っています。心臓の鼓動音が大きくなるにつれ、エフェクトのひずみ成分も増やしているんです。

8. 宮

 この曲はボーカル、ギター、ベース、ドラム、タンバリンなどを自宅スタジオで録音しました。ドラムはAEAのマイク、KU5Aだけで収録しているのもポイントです。ベースにはxfer records SERUMのシンセベースをレイヤーしています。シンプルな楽器構成ではありますが、アンビエンスマイクを使って部屋の空気感をたっぷりと収録しているため、ボーカルやドラムは密度の濃い音になっているんです。

9. 黒子

 完パケの前日ギリギリに仕上がった曲で、一番苦戦したかもしれません(笑)。特にAメロは当初のものから大きく書き直しましたね……たくさん時間を費やしました。最終的にはニルヴァーナの曲がヒントになり、完成できてよかったです。ベースにはBABY AUDIO. TAIPやWAVES J37 Tapeといったお気に入りのプラグインを用い、太くて温かみのあるサウンドに加工しています。

10. 逆行 - replica -

 ギターはTKさん(TK from 凛として時雨)に弾いていただきました。僕はTKさんの「unravel」が大好きだったので、コラボが実現してうれしいです。“好きにギターを弾いてください”とお願いしたところ、聴いてのとおり、TKさんのギターがふんだんに詰め込まれています。何本ギターが重なっているのかは分かりませんが、全体を通してTKさんらしいギターサウンドになったので満足しています。

11. NEO JAPAN

 BUDDHA BRAND「人間発電所」のような曲を、僕なりに作りたいなと思って生まれたナンバー。イギリスに滞在していたときの家で宅録して作りました。日本からはMac Studioだけ持ってきていて、現地で購入したエレキやアコギも使用しています。短いターンで転調を繰り返すのが特徴的ですが、それをあまり感じさせないようにメロディやラップを工夫しています。

12. 呼吸のように(映画「正欲」主題歌)

 ピアノはSuchmosの鍵盤奏者、TAIHEIさんに弾いてもらいました。1番のサビの終わりには、SPECTRASONICS KEYSCAPEのトイピアノを重ねています。僕はKEYSCAPEに収録されたトイピアノやミニピアノ系のサウンドはすごくいい音だと思っていて。曲の終盤にはストリングスカルテットも入ってきます。編成は2/1/1で、バイオリンは常田俊太郎さんに参加してもらいました。

13. 怪獣の花唄 - replica -

 今回、再レコーディングして感じたのは、当時この曲を作ったときの自分と現在の自分ではリズムの取り方が大きく変わったなということ。特に「怪獣の花唄」はオンカウントでリズムを取るのですが、近年の自分はまったくやらなくなったので逆に難しかったです(笑)。こういったリズムやグルーブの話は、今作のほとんどの曲でドラムをたたいてくださったBOBOさんとよく話しています。

14. Audio 008

 この曲は、ホールツアー『Vaundy one man live tour “replica”』のエンディングSEです。アルバム1曲目の「Audio 007」と同じく、レコードノイズやカセットデッキのスイッチ音などを挿入し、一連のつながりを表現しています。

15. replica

 ドラム、ベース、ギター、そしてストリングスカルテットという編成の楽曲です。ドラムはBOBOさん、バイオリンは再び常田さんのチームにお願いしました。曲中、英語でシャウトするところには深いリバーブをかけています。僕は、リバーブはピンポイントで使うことが多いです。そのほかの響きは、アンビエンスマイクで収録した部屋なりを生かしているからです。


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Release


『replica』Vaundy SDR / ソニー:VVCV 6-8(完全生産限定盤/2CD)

『replica』
Vaundy
SDR / ソニー:VVCV 6-8(完全生産限定盤/2CD)、VVCV 9-10(通常盤/2CD)

Musician:Vaundy(vo、g、ds、prog)、TK from 凛として時雨、hanna、TAIKING、生形真一、田渕ひさ子、Cory Wong(g)、マーリン・ケリー、上ちゃん、吉田一郎、有江嘉典、小杉隼太(b)、BOBO、av4ln / Kent Watari(ds)、常田俊太郎、須原杏、亀井由紀子(vln)、三品芽生、小林知弘(vla)、村岡苑子、林はるか(vc)、TAIHEI、江﨑文武(p)、安藤康平(sax)、真砂陽地(tp)、川原聖仁(tb)、武嶋聡(fl)
Producer:Vaundy
Engineer:照内紀雄、米津裕二郎、澤本哲朗、諏訪佳輔
Studio:プライベート、青葉台スタジオ、446、E-NE、SOUNDCREW、Tanta、Endhits、prime sound studio form、Studio A-tone Sound Valley、他