Cubaseがバージョン・アップ! YUC'eお気に入りの新機能を一挙紹介|解説:YUC'e

Cubaseがバージョン・アップ! YUC'eお気に入りの新機能を一挙紹介|解説:YUC'e

 YUC'eが使うSTEINBERG Cubase Pro 12の連載がスタートです! 第1回は、今年3月にリリースされたCubase Pro 12と旧バージョンのCubase Pro 11を比較しながら、新機能について紹介していきます。

起動時にドングルが不要に! Apple Silicon搭載Macに対応

 私が思うCubase Pro 11からの大きな変更点は、新しいライセンス・システムに切り替わったことです。これまでは起動時にドングルが必要でした。私はライブを行う際、ラップトップ上でCubaseを立ち上げてパフォーマンスを行っており、持ち運ぶ必要のあるハードウェア・ライセンスは、無くしたり壊れてしまったりするリスクがあるので細心の注意が必要でした。これからはオンライン上でコンピューターを3台までアクティベーション可能。一度アクティベーションしてしまえば、オフラインでも使用できるので、より自由にCubaseを使えそうです。

 また、Apple Silicon搭載のMacにネイティブ対応するようになったのも、Macユーザーにとっては大きなトピックです。私は以前Intel Macで制作を行っていましたが、昨年M1 Proチップ搭載のMacに移行しました。Cubase Pro 11はどちらのパソコンでも問題無く作動していましたが、Apple Silicon搭載のMacにネイティブ対応しておらず、少し不安がありました。Cubase Pro 12ではネイティブ対応になり、安心して作業ができます。M1プロセッサーのパフォーマンスをより発揮できるとのことで、今後にさらに期待です。

スケールアシスタントで音階に合わせたハモを容易に作成

 続いて、より詳細な機能について見ていきましょう。ボーカル曲を制作されているCubaseユーザーの方にとって、ボーカルのピッチやタイミングなどのエディットができるVariAudioは欠かせない存在だと思います。Cubase Pro 11まではピッチが外れた音を自分で確認するのに手間がかかっていましたが、今回追加されたスケールアシスタント機能により作業が効率化できるようになりました。

 VariAudio内にあるスケールアシスタントの設定セクションで“ピッチ編集をスナップ”にチェックを入れると、スケールに合うようにスナップがアシストされます。また“スケールノートガイドを表示”にチェックを入れると、MIDIを打ち込む際にスケールに合う音が分かりやすくなります。最下部の“ピッチをクオンタイズ”をクリックすれば、スケールに合わせてピッチがクオンタイズされます。

VariAudioメニューの画面。赤枠からスケールアシスタントの設定ができる。下部の“ピッチ編集をスナップ”にチェックを入れると、スナップできる範囲が指定したスケール内の音に限定される。“スケールノートガイドを表示”にチェックを入れると、ピアノロールの明暗部分が指定したスケールに対応するようになり、どの音がスケールに合っているのかが分かりやすくなる

VariAudioメニューの画面。赤枠からスケールアシスタントの設定ができる。下部の“ピッチ編集をスナップ”にチェックを入れると、スナップできる範囲が指定したスケール内の音に限定される。“スケールノートガイドを表示”にチェックを入れると、ピアノロールの明暗部分が指定したスケールに対応するようになり、どの音がスケールに合っているのかが分かりやすくなる

赤枠の“ピッチをクオンタイズ”をクリックすると、指定したスケール内で一番近い音に調整される

赤枠の“ピッチをクオンタイズ”をクリックすると、指定したスケール内で一番近い音に調整される

 今までより速くエディットができてとても便利。この機能でスケールから外れずにハモを作成することもできるので、ボーカル・ミックスにも重宝しそうです。ボーカル・ミックスに関しては今後の連載の中で詳しく紹介していこうと思います。

 スケールアシスタントはオーディオ・トラックだけでなく、MIDIトラックにも適応することが可能です。スケールに合うアルペジオの制作もしやすくなりました。

 また、VariAudioだけではなく、オーディオのタイミングを調整するAudioWarp機能も進化しています。Cubase Pro 11ではサンプルエディター上でのみ編集可能だったのですが、プロジェクトウィンドウ上でもタイミングの調整ができるようになりました。ボーカル・トラックをメロディ・トラックのタイミングに合わせながら調整できるので、作業効率がアップしています。もちろんボーカルだけでなく、ギターなどの楽器の音源も素早く調整できるようになりました。

画面上部のトラックはボーカルのメロディをMIDIで打ち込んだメロディ・トラックで、下部はボーカルのオーディオ・トラック。Cubase Pro12ではプロジェクトウィンドウ上でAudioWarp機能が使えるので、メロディ・トラックを見ながらオーディオ・トラックのタイミングを調整できる

リミッティングを可視化するRaiser、カーブを変形可能なFX Modulator

 ここからはCubase Pro 12付属のプラグイン・エフェクトを2つ紹介します。

 まずは、サウンドのラウドネスを大幅に増やすことができるリミッターRaiserです。どれぐらいリミッターがかかっているのかが可視化されており、画面中央にリアルタイムで表示されるので使いやすいです。もちろんCubaseに以前から付属しているLimiterと同様に、インプットとアウトプットのメーターも確認可能。さらに、オーディオの素材に合わせて自動でリリース・パラメーターを最適化してくれる機能も付属しています。付属のプラグインで簡単に音圧を上げられるというのはとても便利ですよね。

Cubase Pro 12付属のリミッター・プラグインRaiser。画面中央にリミッターのかかり具合がリアルタイムに表示される。オーディオの素材に合わせて自動でパラメーターを最適化する機能も付属している

Cubase Pro 12付属のリミッター・プラグインRaiser。画面中央にリミッターのかかり具合がリアルタイムに表示される。オーディオの素材に合わせて自動でパラメーターを最適化する機能も付属している

 続いて、モジュレーション・プラグインFX Modulatorを紹介します。CABLEGUYS ShaperBoxやKILOHEARTS Multipassなどのマルチエフェクトがあると、サウンド・メイキングをする際、自分の思い通りにサウンドをフィックスできますよね。FX Modulatorの搭載により、Cubaseのみでもサウンドを自由自在にデザインできるようになったと思います。カスタム・シェイプのLFOを作成することで、ChorusやFlanger、Filter、Width Pan、Bit Crusher、Overdrive、Pitch Shifterなどのエフェクトへ直感的にアプローチできます。モジュールは最大6つまで立ち上げ可能です。

 FX Modulatorを実際に使ってみましょう。ここではシンプルなパッドにLFOをかけてみたいと思います。まずは好きなコード進行を打ち込みます。音色はSupersawにしてみました。続いてトラックにFX Modulatorをインサートしましょう。EFFECTSのスロットからFilterを選択します。画面上部にLFO Shapeのプリセットがあるので、そちらから好きな形を選ぶことで簡単にエフェクトがかかります。今回は山形のプリセットを選んでみました。プリセットから自由に形を変えられるので、Frequencyの頂点を前にずらしてみます。前の方に持ってくるとアタックがもっと出た感じになり、逆に後ろの方に持ってくると、ビートからずれてまた違う印象になります。自分でゼロからLFO Shapeを描くことが可能なので、簡単に音作りを楽しむことができるのではないでしょうか。

Cubase Pro 12付属のモジュレーション・プラグインFX Modulator。14種類のエフェクト・モジュールと、ファクトリー・エンベロープ・カーブのセットを搭載する。モジュールは最大6つまで立ち上げ可能で、エンベロープ・カーブは自在に変更できるようになっている。画面ではFilterをインサートしており、Frequencyの頂点を手動で前にずらしている

 今回はCubase Pro 12が3月にリリースされたということで、Cubase 7.5からCubaseを使い続けているYUC’eが実際に使ってみて特に気に入った部分を紹介させていただきました……! 私が機能などの紹介を文章に書き起こしてお伝えするのは初めてですが、この連載で何かしら興味を持っていただけるような内容をお伝えできたらなと思っています。それではYUC’eでした!

 

YUC'e

【Profile】作詞/作曲/編曲に加え、歌唱やミックスまですべて1人で手掛けるマルチクリエイター。特定のジャンルに縛られない独自の音楽スタイルが特徴。2017年発売のアルバム『Future Cαke』はSpotifyバイラル・チャート、iTunesエレクトロニック・ミュージック・チャートで1位を獲得した。海外での人気も高く、Spotifyではリスナーの半数がアメリカを中心とした海外からの視聴者が占めている。

【Recent work】

『Cosmic Air Ride』
YUC'e × Snail's House

製品情報

STEINBERG Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 12:13,200円前後|Cubase Artist 12:35,200円前後|Cubase Pro 12:62,700円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 11以降
▪Windows:indows 10 Ver.21H2以降(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5以上またはAMDのマルチコア・プロセッサー、8GBのRAM、35GB以上のディスク空き容量、1,440 × 900以上のディスプレイ解像度(1,920 × 1,080を推奨)、インストール時に使用するインターネット接続環境