碧海祐人が使う Cubase Pro 11 第1回〜デモ制作やMIDI入力時に役立つコードトラックやロジカルエディター

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 初めまして、シンガー・ソングライターの碧海祐人です。普段、僕は自宅でレコーディングや作曲/編曲、ミックスを行っているのですが、その際に多用しているのが11月にアップグレードしたばかりのSTEINBERG Cubase Pro 11。この連載では、Cubaseにおける僕なりの使い方やお薦めしたい便利機能などを紹介していきます。今回は、デモ制作におけるコード管理についてや、MIDIデータ入力時に使える機能についてお話ししましょう。

自動的に次のコードを提案する
Chord Assistant機能

 僕は曲制作を始める際、簡易的なコード進行のループを作成することから始めます。しかし、専門的なコードを多く知らなかったり、つい手癖でいつもと同じようなコード進行になってしまったりなどで、スタート時から制作が行き詰まってしまうことはありませんか?

 

 そんなときにお薦めしたいのが、Cubaseの“コードトラック”機能です。プロジェクトウィンドウに出現するコードトラックを使って、プロジェクト単位でコード進行を管理することができます。また、コード情報の入ったクリップ=“コードイベント”を簡単にMIDIデータに変換したり、Cubaseのピッチ修正機能VariAudioで解析したオーディオ・データやMIDIデータにおける、コードのボイシングやスケールを変更することも可能です。

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プロジェクト全体のコードを一括管理できるコードトラック。詳細ダイアログでは、VariAudioで解析したオーディオやMIDIデータの、ボイシングやスケールなどを変更可能である。“モニターしているトラックを使用”ボタン(黄枠)をクリックすると、コードを鳴らすソフト音源を設定することができる

 コードトラックを作成するには、メニュー・バーにある“プロジェクト”から“トラックを追加→コード”で完了。コードトラック上を鉛筆ツールでクリックするとコードイベントが現れるので、そこに好きなコードを入力することができます。ダブル・クリックした場合は詳細ダイアログが開くので、エディター・タブでボイシングを変更したり、Chord Assistantタブでコードを選択したりすることが可能です。

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コード・イベントをダブル・クリックすると現れる詳細ダイアログ。エディター・タブではボイシングを細かく変更したり、Chord Assistantタブでは選択したコードと相性の良いコードを、“リスト/近接/五度圏”から探すことができる。なお基準となるコードが選択されていない場合は、Chord Assistantが機能しない仕組みになっている

 Chord Assistantは、自動で次のコードを提案してくれるのでとても便利。テンション・コードを使ったり、ボイシングを変えるなどして、自分が心地良いと思うコード進行を作るとよいでしょう。またChord Assistantを活用すれば、これまで知らなかったコードを用いたコード進行を作れたり、ディミニッシュやオーギュメントなど特殊コードの取り入れ方の勉強にもなるので重宝しています。コード進行の制作は、僕の曲作りのプロセスの中でも大事な部分。後々のアレンジなどにもかかわってくるので、納得いくまで練り上げます。

 

 コード進行が決定したら、そのコードを演奏する音色を決めましょう。コードトラックのヘッダー部分にある“モニターしているトラックを使用”ボタンをクリックすると、コードトラックを鳴らす音源を設定することができます。これは、あくまでコードの確認用音源。コードを奏でる音色によってコードの印象が大きく異なることがあるので、ここで一度確認ができるようになっているのです。

 

 ここでは、さらにボイシングなどを調整するとよいでしょう。画面左端にあるコードトラックのInspectorタブから、“ボイシングを設定”ボタンを押すと“カスタムボイシング”ダイアログが開きます。そこではボイシングの範囲やスタイルなどが設定できるので、いろいろ試してコードの響きを聴き比べたり、不思議な和声を生み出したりすることが可能です。

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コードトラックのInspectorタブからアクセスできる、ボイシング・ダイアログ。ボイシングのスタイルや範囲、ルートなどを設定できる

 コードトラックで最終的なコードを作成できたら、最後は別に立ち上げたソフト音源のトラックにコードイベントをドラッグ&ドロップしましょう。自動的にMIDIデータに変換されるので、すぐに任意の音源で再生することができます。

 

 僕の場合は、ここでコードのトップ・ノートやルート音、各構成音などを再確認。微調整したいときは、直接MIDIデータを編集します。コードトラックを使用すると、普段使っているコード・ワークやボイシングに“ひと工夫”できたり、知らないコードを手軽に使ってみることができるのでお勧めです。

 

ロジカルエディターを駆使して
MIDI編集作業の効率化を図る

 MIDIデータを入力する際、MIDIキーボードを用いる人は数多く居ることでしょう。例えばピアノのMIDIデータを入力する際、鍵盤を弾ける人はベロシティやタイミングなどを思い通りにプログラミングすることができると思いますが、そうでない人は入力後にMIDIエディター画面で毎回マウスを用いて修正する作業が必要になります。これではせっかくのモチベーションも下がってしまいますね。

 

 こんなとき、僕は“ロジカルエディター”を使います。ロジカルエディターは、MIDIデータの検索や置換機能を備える便利なCubase付属ツール。実行対象や操作、パラメーター値などを細かく設定し、MIDIデータを自由に調整することが可能です。僕はこのロジカルエディターを使って、平坦に打ち込んだMIDIデータのベロシティや、グリッドに沿ったタイミングをランダムに調整し、あたかも生演奏したかのような“有機的なサウンド”に聴こえるようにしています。

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MIDIデータの検索や置換機能を備える便利なCubase付属ツール、ロジカルエディター。フィルター対象や条件、実行対象、操作、パラメーター値などを細かく設定し、MIDIデータを自在に調整することができる。多数のプリセットも用意されているため、プリセットを元に独自の設定を作ることも可能である

 ロジカルエディターを出現させるには、メニュー・バーにある“MIDI”から“ロジカルエディター...”をクリック。ベロシティをランダムにしたい場合は、画面下部にて実行対象を“値2”、操作を“相対的なランダム値を加算”、パラメーター1を“10”、パラメーター2を“−10”と入力しましょう。そしてランダムにしたいMIDIデータを選択し、ロジカルエディター画面の右下にある“適用”ボタンを押すと、MIDIデータのベロシティがランダムに変更されます。同じMIDIデータでも、この設定を施すと音に強弱が出るためとても生っぽいサウンドにすることができるのです。

 

 僕はMIDIデータの“タイミング”をランダムにしたいときも、ロジカルエディターの設定を調整して、生っぽく聴こえるようなサウンドを作り出しています。ここで覚えておきたいのは、ロジカルエディターにおいてベロシティを変更したいとき、実行対象欄は“値2”、タイミングを変更したいときは実行対象は“ポジション”とすることです。

 

 一度設定した内容は、画面左上にある“プリセットの保存”ボタンを押せばOK。プリセットの呼び出しは、このボタンの左側にあるプルダウン・メニューから可能です。

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ロジカルエディターの画面左上にある“プリセットの保存”ボタン(黄枠)。プリセットの呼び出しは、左側にあるプルダウン・メニューから行うことができる

 このようにロジカルエディターで独自のプリセットを作成しておけば、MIDI入力時もさくさくと作業を進めることが可能です。ぜひ試してみてください。

 

碧海祐人

【Profile】名古屋を拠点とするシンガー・ソングライター。ジャジーかつメロウな雰囲気のトラックに叙情的な歌声が乗る楽曲を得意とする。2020年9月9日にEP『逃避行の窓』でデビュー。客演にはmillennium paradeへの参加など現在の音楽シーンをけん引するドラマーの一人=石若駿、エンジニアはOvallやKan Sanoを手掛ける藤城真人氏を迎え、耳の早い音楽好きの間で話題を集めている。12月16には配信限定EP『夜行雲』をリリースした。

Recent work

夜光雲 - EP

夜光雲 - EP

  • 碧海祐人
  • オルタナティブ
  • ¥917

 

製品情報

new.steinberg.net

STEINBERG Cubase Pro

オープン・プライス

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