サンプリングをオーソライズする試み 【最終回】NO PASSION, NO MUSIC〜Watusi (COLDFEET)

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 僕はサンプリングが大好きで、このカルチャー/手法と出会わなかったらここまで長く音楽を続けてきたか怪しいくらい大切に思っている。もちろんサンプルそれぞれのさまざまな出所(ジャンル)や時代などを掛け合わせて、今の音楽を作れるなんてお題目が最高だが、それ以前にそれまで感じたことのない質感自体が好き。時代に乗って無闇にサンプリングし使いまくったアンダーグラウンド時代、一つ一つクリアランスを原盤元に出し、クリアできないものはいわゆる“弾き直し”をした時代を経て、なんだか今、サンプリングはその理念を含めて使いづらい時代になっているように感じている。なのでそんな時代からの新たな道への脱却、なんてアクションも、僕の“やらずに死ねるか“リストにずっと入っている。

 

 そこでこの企画を3年ほど前に聞き、矢も盾もたまらず参加したのがSoundmain*1というプロジェクトだ。現状のサイトを見るとクリエイターへの取材、そしてオリジナル・サンプルの販売店といった趣なのだか、実はこのプロジェクトにはさまざまなコレカラへの野望がある。近年顕著に見られるType Beat*2やTracklib*3といった従来のサンプリング販売とは異なる、新時代のサービスにも触発され、僕は個人がそれぞれで入魂のキック1つでも1小節のビートでも、自身が原盤所有する曲のマルチトラックまでもが自由に売り買いできるサイトを作りたいと思っていた。

1:Dub Master X、DJ WATARAI、木村コウ、REMO-CON、Hideo Kobayashi、佐藤清喜、外池満広など各ジャンルの猛者たちがサンプルを提供。https://soundmain.net/

2:特定の曲に使われているようビートを販売するサイト。https://typebeats.com/

3:2018年にローンチ後、既に200カ国以上の音楽プロデューサーたちに利用されているサービス。10万曲以上のサンプリング可能なオリジナル原盤がレーベル・音楽出版社より提供されている。https://www.tracklib.com/

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Soundmainのストア・ページ。クリエイターの制作したサンプルが並ぶ

 もちろんそこで重要なことは権利がしっかりと担保されること。Type BeatやTracklibでは販売条件(金額により使用制限あり)が仕様用途によって異なり、それらがワールドワイドな世界基準になり得るかどうかは時間がかかりそうだが、個人的には健全な発想だと感じている。もちろんマルチトラックなど手に入れなくても、サンプリングはこれまで同様2ミックスをいじり倒していくことで成立するが、より現代的なサンプリング=音源分離技術を使い、欲しい素材自体を切り分けて購入(付属している部屋鳴りまでもがアリ/ナシも選択可能)なんてことも考えている。分かりやすく言うと購入サイトにIZOTOPE RXやSERATO Serato Sampleのような機能が今以上のスペックで内蔵されていて、それらの処理後のサンプル購入が可能なんてところまで行きたい。そしてその売り買いを日本のどこに居ても自由にできることが大切だと思っている。

 

 原盤ビジネスの破壊と呼ぶ方々もいらっしゃるようだが、僕は“音楽セカンド”のこのご時世、実家に戻り家業を注いだ天才トラック・メイカーが生み出す入魂のキックが、全米トップ40のローファイ・ヒップホップに、あるいはインドネシアでダンドゥットの新曲に使われるかもしれない未来へ興奮が止まない。そして当然、その先にはSoundmainで購入したサンプルを使い倒した傑作たちが、権利関係も担保された状態で、世界各国に発信/リリースすることが可能になる。そんな未来が実現するように、一つ一つ地道にお手伝いしていきたいと思っている。当たり前にベッド・ルームと世界が、サンプル単位からマルチファイル、そして曲を通じてつながる。ぜひそんな当たり前の未来を期待していてほしい。

 

 やっぱり未来は信じて願う人たちが集って、1mmずつ思いを重ね合わせ動かしていくことでしか見えて来ないと思っている。でも逆に言うと、それだけで見えて来るはず。僕はまだまだそうしたシンプルなパッションを信じて音を紡いでいくことにする。ここまでオヤジのゴタクに1年強、お付き合いいただいた皆様に心から感謝いたします。

 

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Watusi (COLDFEET)

【Profile】Lori FineとのユニットCOLDFEETのプログラマー/ベーシスト/DJとして、国内のみならず欧米やアジア各国でも多くの作品をリリース。国内では中島美嘉、hiro、安室奈美恵、BoAなどの楽曲プロデュースを手掛け、アンダーグラウンドとメジャーとの接続を試みてきた。2015年には“21世紀の正しいディスコ”をキーワードにしたユニット、Tokyo Discotheque Orchestraをスタート。DUBFORCEや“いとうせいこう is the poet”のメンバーとしても活動している。TOKYO DANCE MUSIC WEEK発起人の一人。ライブ・ストリーミング・イベント、MUSIC DON'T LOCK DOWNにもかかわる

 

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