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ナラ・シネフロ『Space 1.8』、ロス・フロム・フレンズ『Tread』 〜Nagie's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、ナラ・シネフロ『Space 1.8』、ロス・フロム・フレンズ『Tread』です。

テクノとジャズの新たな融合

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ナラ・シネフロ『Space 1.8』(ビート)

 ナラ・シネフロはUKジャズ・シーンで活躍する女性プロデューサー。なんとテクノの老舗WARPからのデビュー作だ。アブストラクトでエクスペリメンタルなテクノとジャズの融合が新しい。いや、この手のアプローチは今まで多々聴いているが、上っ面なドローンやパッドを張り付けたようなお粗末な音楽で、彼女ほど面白くなかったのだと思う。本作は恐らくテクノ(電子音楽)の側面の彼女で、その感性がユニーク。デジタル系でぐにゃぐにゃしたグラニュラーな音がしたかと思えば、曲によっては70’sジャズ/フュージョンをほうふつさせるアナログなフレーズがあったりして、すごく時代の波に乗っかっていてうまいなあと思う。個人的にはM⑥あたりが好み。サックスがフィーチャーされたM②⑦はもっとコンテンポラリーでひねくれていた方がいいかと思った。

予想を裏切るポップな展開

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ロス・フロム・フレンズ『Tread』(ビート)

 ロス・フロム・フレンズはフライング・ロータス主宰のレーベルから2作目をリリース。先行シングル「The Daisy」が、レーベルの色にぴったりというか、出だしからの変拍子ビートに“おうおうおう”とアシカのような歓声を上げる僕が居た。ここからハードに突き抜けていくのだろうと思った瞬間、メロディックなボーカルが入り、意外にもポップな展開が始まる。チルウェーブ的な癒しがいつまでも聴いていられ、アルバム全体への期待が高まった。ちなみに彼はABLETON Max For Liveでプラグイン“Thresho”を作成、無料配布している。これを使用してアルバム制作をしているようだ。

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う