第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、Neptunian Maximalism『Eons』、ロバート・グラスパー『BETTER THAN I IMAGINED』です。
日本を含むアジアの民族的な太鼓やリズムに
ロックなドラムや激しいギターが混ざる混沌とした音
ベルギーを拠点とするオルタナティブ・ロック・バンドのネプチュニアン・マキシマリズムが非常に面白いので紹介したい。まず日本語タイトルで大太鼓をフィーチャーしたM①「Daiitoku-Myōō no Ōdaiko」は、バンドの特徴を物語っている。全体的に、日本を含むアジアの民族的な太鼓やリズムに、ロックなドラムや激しいギターが混ざって“混とんとしている”というのが正確な描写だろう。
さらに、サクソフォンやブブゼラっぽくも聴こえる謎のリード楽器が多くフィーチャーされている。非常に面白いのでコンセプトだけでご飯が3杯いけてしまうという感じだ。残念なのはミックスでサウンドが洗練されていないことと、少しカオス過ぎて分かりにくいことだろうか。アイディアは斬新なので、誰かにまねされる前に彼らによって洗練されてほしい。
ロバート・グラスパーが技巧派のンデゲオチェロと
素晴らしい声を持つH.E.R.とコラボ
次は、ロバート・グラスパーがH.E.R.とミシェル・ンデゲオチェロとコラボした作品だ。これは、すごい。ロバート・グラスパーはヒップホップ・ジャズの名手だが、これに超アカデミックで技巧派のンデゲオチェロが加わり、さらに素晴らしい声を持つH.E.R.が加わったのだから。
ピアノのフレーズに変拍子のドラムが加わり、スローなドラムンベースのような奇妙なビート感が生まれている。そこに、あたかも何も無かったかのようにさらりとボーカルを歌い切るH.E.R.のすごさ。そして、ンデゲオチェロの、ベーシストなのにこの絞り切ったフレーズの少なさがまた渋過ぎる。
Nagie
【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う
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