ジム・オルーク『Shutting Down Here』、ブレイク・ミルズ『Mutable Set』 〜Nagie's Recommend

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、ジム・オルーク『Shutting Down Here』、ブレイク・ミルズ『Mutable Set』です。

 

フランスやウィーンの上質な香りが加わった
音に奥深さやダイナミクスを感じる実験的作品

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『Shutting Down Here』ジム・オルーク

 フランス音楽研究グループ(GRM)とウィーンに拠点を置く実験的なレーベル、Editions Megoが始めた“GRM Portraits”という企画の第1弾は、ジム・オルークの新作だ。今回聴いたのは7月に発売されるアルバムの先行曲。広い意味でのアンビエントは、瞑想音楽から現代クラシック寄りの実験音楽がある。ジム・オルークの作品はまさに実験音楽寄りだ。今までも彼はBandcampで「steamroom」というアンビエントのシリーズを何作も出したが、本作にはフランスやウィーンの上質な香りが加わっていると感じた。音に奥深さやダイナミクスを感じるのだ。こういった音楽は空気感などの要素が大事になる。もしかすると「steamroom」はBandcamp特有の音質が影響してそう感じたのかもしれない。派手で格好良いが、硬く前に張り付く傾向があるのだ。本作もネット試聴でなくパッケージ音源できちんと確認したい。

editionsmego.com

 

巧みなギター・プレイを惜しみなく加工
ほかのアーティストと一線を画すサウンド

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『Mutable Set』ブレイク・ミルズ

 ブレイク・ミルズはカリフォルニア拠点で活躍するソングライター/ギタリスト/プロデューサーだ。彼の新作はスロー・テンポで実験的なエレクトロニクス中心のサウンド。巧みなギター・プレイを惜しみなく加工して作られたサウンドは、ほかのアーティストと一線を画す。特にナイロン・ギターを使った「Eat My Dust」などが好みだ。クラシカルな奏法のギターにピアノが絡む。技術力の高さがうかがえるので、シンセ・パッドをジャーッと鳴らしただけの世にあふれる月並みな曲よりも、何倍も面白くて聴きごたえがあると感じた。

Mutable Set

Mutable Set

  • Blake Mills
  • シンガーソングライター
  • ¥1935

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う

 

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