アルカ『KiCk i』、マトモス『the consuming flame: open exercises in group form』 〜Nagie's Recommend

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、アルカ『KiCk i』、マトモス『the consuming flame: open exercises in group form』です。

 

アルカの新作は結論から言うと100点満点
立体的なミックス・サウンドとIDMらしい電子音が炸裂

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『KiCk i』 アルカ (ビート)

 待ちに待ったアルカの新作である。結論から先に言うと100点満点だ。自分が今一番リスペクトしているアーティストで、本作はその期待を裏切らないクオリティだった。書き下ろしと見られるアルバム前半の曲は、若干だがひずみの要素やパッド・サウンドで混とんとした部分が減り、より立体的なミックス・サウンドとIDMらしい電子音が炸裂している。ビョーク、ロザリア、ソフィーなどをフィーチャーしたアルバム後半の曲群は、今までのアルカらしいカオスな超高速フレーズとボーカルを絶妙なバランスで組み合わせている。過度にインダストリアルでマニアックな方向には行かず、ビョークなどのメインストリーム音楽からのポップさも残している点が、アルカのトップ・ランナーたるゆえんだと思う。

KiCk i

KiCk i

  • Arca
  • エレクトロニック
  • ¥1528

 

ギャング・スター的な香りがするIDM
現代音楽的な要素が何気なく混ぜられたマトモスの新作

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『the consuming flame: open exercises in group form』 マトモス

 昨年プラスティック製品のサンプリングのみで制作した『Plastic Anniversary』を紹介したが、マトモスによる3rdアルバム『the consuming flame: open exercises in group form』が発表された。執筆時点でYouTubeに公開されていたイメージ・ビデオの「No Concept」を聴いてみると、微妙にギャング・スター的な香りがするIDMという印象。バイオリンの弦をこすったような音などクラシックの楽器を用いた現代音楽的な要素が何気なく混ぜられている。そして毎回同じことを言っているかもしれないが、マトモスの音楽は楽曲構成がしっかりしていて時間軸にストーリーがある。だからどの曲も、途中で飽きない点が魅力だ。

 

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う

 

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