ティルザ『Colourgrade』、Xenia Rubinos『Uno Rosa』 〜Nagie's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。Nagie氏の今月のセレクトは、ティルザ『Colourgrade』、Xenia Rubinos『Uno Rosa』です。

奇妙なインストに歌が乗っている感覚

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ティルザ『Colourgrade』(ビート)

 ティルザはロンドン出身のシンガー・ソングライター。ジャンルとしては、エクスペリメンタル・ロックに近いのだろうか。基本的に歌モノなのだがサウンドがかなり実験的。奇妙なサウンドをメインに、インストに歌が乗っかっているような感覚だ。タイトル曲のM①からストレッチをかけてグニャらせたボーカルをバックに歌っていて衝撃的。2曲目以降も全体的にスロー〜ミッドテンポでエフェクトがぐにゃぐにゃしたサウンドで、聴きながらモヤモヤした気分が味わえる。M⑤「Beating」は、レイテンシーのせいで2重に出ちゃった!みたいなスネアが職業病的に気持ち悪いのだが、一般リスナーは大丈夫なのだろうか。あと“んっ、んっ”みたいな意味があるのか分からない咳払いが入っていて斬新。通して聴くとクリエイティブの洞窟をさまよっている感覚になる作品だ。

演劇的手法を取り入れた型にはまらない作品

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Xenia Rubinos『Uno Rosa』

 続いてセニア・ルビーノスは、NYを拠点に活動するソングライター。ジャズ寄りではあるが、ジャンル的な型にはまらずすごく実験的なのが共通点だ。M⑨「Don't Put Me In Red」はぜひ動画とともに見てほしい。“イー”という言葉で曲の3分の1を歌っており、動画では個々の“イー”に字幕で意味付けをしている。この歌詞を思い浮かべながら“イー”と歌っているらしい。ちょっと演劇的というか、こんな手法があったのか、面白い!と感激した。そして曲は、スペイン語の歌詞になって最後は英語になる。彼女の過去曲やアルバムも、どれも変わっていてやっぱり面白い!

 

Nagie

【Profile】ANANT-GARDE EYES、aikamachi+nagie、CM、アニメ、劇伴、映像音楽中心に活動。Vocaloidライブラリー開発も行う