レミ・ウルフ『Juno』、Calvin Valentine『Weed Is Awesome』 〜今本 修's ディスク・レビュー

 第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、レミ・ウルフ『Juno』、Calvin Valentine『Weed Is Awesome』です。

幅広い歌唱力によるポップな作品

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レミ・ウルフ『Juno』(ユニバーサル)

 若手アーティストの登竜門ともなりつつあるスマートフォンのCMに、2社で起用されたレミ・ウルフ。愛嬌たっぷりの彼女は、高校時代に『アメリカン・アイドル』へ出演し、その後しっかり音楽学校に通い基礎知識を極める。2019年から自主でEPを3枚出し、大手レーベルと契約した初のフル・アルバム『Juno』をリリースした。ファンクをベースに、くだけてはっちゃけている歌や、ラップからジャズ、ソウルまで歌い上げるなど幅広い歌唱力を持つ。代表曲の「Photo ID」だけでもPVやアレンジ違いが幾つも存在し、ライブもがっつりと変化を付けてくるなどマニア心をくすぐるのもうまい。スパイスの効いたボーカルに、カラッと乾いたトラックがなじみ底抜けにポップに仕上げた要チェック・アルバム。

目まぐるしく変わるトラックのギミック

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Calvin Valentine『Weed Is Awesome』

 同じくアメリカで活躍するカルバン・ヴァレンタインの新作は、タイトルやジャケからそっち系のダウナーな内容かと思ったら、激しく曲が入れ替わるアナログ感満載のDJミックスのような作品である。古いソウル・レコードをこよなく愛するカルバン。過去にはG.FORCE名義でも活躍しており、ヒップホップ・プロデューサー/ラッパーでもある。デ・ラ・ソウルやジューシー・J、伝説的プロデューサーの故J・ディラの実弟イラ・Jなど、多くのアーティストを手掛けている。インスト楽曲を中心に、古き良き時代のソウル/ヒップホップやレゲエ・テイストな曲が並び、スクラッチや目まぐるしく変わるトラックのギミックなど、盛り盛りの内容だ。

 

今本 修

【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア