第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、ファットボーイ・スリム『Back To Mine』、コスモ・シェルドレイク『Wake Up Calls』です。
自身のルーツに焦点を当てて選曲された
マニアックなDJミックス
大御所DJファットボーイ・スリムの久しぶりのミックスは、彼の膨大なコレクションから自身のルーツに焦点を当てて選曲されている。過去に披露してきたDJプレイとは異なり、緩いレアグルーブやサウンドトラックなどダンス・ミュージックからは一歩引いた構成。自身のヒット曲である「Praise You」の元ネタとなったカミール・ヤブロー「Take Yo' Praise」やNetflixの名作『ナルコス』のテーマ曲「Tuyo」が収録されているなど、マニアックなDJミックスとなっている。
各曲はつなげられていないが、ローランド・クラークとの合作や自身の別名義ヤム・ヤム・ヘッド・フードの新曲もチェックできたり、エクスクルーシブ・トラックはミックスされていない音源を収録しているなど、お得感が満載。
9年にわたって早朝からフィールド・レコーディングを行い
野鳥たちの声を自分の奏でる音楽と融合させた
APPLE iPhone XRのCMで有名になり、ペンタトニックスもカバーをした「Come Along」のリリースから早２年。コスモ・シェルドレイクの２ndアルバム『Wake Up Calls』は、ジャケットの通りフクロウを筆頭に野鳥たちの声が演奏に交わる、絶滅寸前の英国の鳥たちと作り上げたアルバムと言っていい。
彼は父親が生物学者、母親は山民族に伝わるのど歌の指導者という独特な環境で育ったからか、本作も森林被覆や野生動物などの問題がテーマだ。9年にわたって早朝からフィールド・レコーディングを行い、それを自分の奏でる音楽と融合させたという。本作は、フクロウが活動する夜から始まって、トラックごとに日中へと進んで行く。
今本 修
【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア
