第一線で活躍するエンジニアに毎月お薦めの新作を語ってもらう本コーナー。今本 修氏の今月のセレクトは、メッツ『アトラス・ヴェンディング』、ボーイ・パブロ『ワチト・リコ』です。
メジャーとインディー・ロックの境界線に居るような
懐かしくも新鮮なサウンド
カナダはトロントで活動するメッツの4thアルバムが、インディー・ロックの名門レーベル=SUB POPからリリースされた。現在のような前に出るアタック感とは異なり、スタジオでのバンドの鳴りを大事にした程良いアタックになっている。まさに1990年代のダイナミック・サウンドそのものだ。
酒焼けで声が枯れたアレックス・エドキンズのボーカルはクネクネとしたメロディと溶け込み、ギターのリフは男臭くパキパキと力強い質感で鳴っている。メジャーとインディー・ロックの境界線に居るような懐かしくも新鮮なサウンドを聴いて、ぜひ青春時代のパッションを呼び起こしてほしい。
ハッピーなムードが漂う明るいメロディと
カラッと晴れたようなドライなサウンド
同じく現代的なインディー・ポップを届けるノルウェーのパブロ・ムニュスによるプロジェクト=ボーイ・パブロが、デビュー・アルバム『ワチト・リコ』を発表。YouTubeで3千万回以上の再生数を誇る大ヒットとなった3年前のシングル「Everytime」は、セルフ・プロデュースで作られた。しかし、本作の作曲/録音には、ムニュスの実の兄と義理の兄が参加しているという。
チリ語でハンサム・ボーイを意味するアルバム・タイトルの通り、ムニュスのハンサムな歌声が印象的だ。全体的に明るいメロディと、カラッと晴れたようなドライなサウンドを本人が目指していることもあり、どの曲もハッピーなムードが漂っている。ラテンの血が流れるルックスとスイートな歌声、そしてソフトなサウンドに、男女問わずメロメロにされてしまうのではないだろうか。
今本 修
【Profile】DOGLUS MUSIK主宰。クラブ・ミュージックを熟知した音作りに定評がある一方、ロックの分野でも手腕を発揮するエンジニア
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