Berlin Calling〜第104回 ノルトライン=ヴェストファーレン州ヴッパータールに注目のクラブがオープン

新たな重要音楽スポットとして期待

 前号に続いてレコードショップHardwax関連の話題になるが、注目の新クラブが12月8日に正式オープンした。店の名前はOpen Groundhttps://www.openground.club/en/。西ドイツの中心的工業地帯で、デュッセルドルフ、ケルン、エッセン、ドルトムントといった大都市が集まったノルトライン=ヴェストファーレン州の、ヴッパータールという街にある。一般的には、世界最古のモノレールがあることと、ピナ・バウシュの舞踏団があることで知られているかもしれないが、これまでは音楽ファンがわざわざ訪れるような街ではなかった。ベルリンからは、特急電車(ICE)で4〜5時間程度の距離だ。

 Open Groundは、そのヴッパータール中央駅のほぼ目の前の広場の地下にある。ここが地元である元Hardwaxスタッフとオーナーのマーク・エルネストゥスが共同でデザインした、いわば2人の理想のクラブだ。2つあるダンスフロアには、共にFunktion-Oneのシステムがあつらえてある。特に、同社のF132(32インチドライバー搭載ベースエンクロージャー)などの導入によって、サブベースが強化されている。

Open Ground外観。もともと防空壕(ごう)であったため、約3メートルという厚さの天井を切り抜いて地上からの入り口が作られている。店内は一切撮影禁止(写真提供:Open Ground)

Open Ground外観。もともと防空壕(ごう)であったため、約3メートルという厚さの天井を切り抜いて地上からの入り口が作られている。店内は一切撮影禁止(写真提供:Open Ground)

 実は、このクラブの話はもう6年ほど前から聞いていた。昨年の秋にベルギーのフェスティバルに行った帰りに寄らせてもらい、建設中の店内を見学させてもらった。その頃既にほぼ完成しているように見えたが、オープンに至るまでは、それからさらに1年以上かかった。途中パンデミックを挟んだこともあり、予定よりも大幅に時間がかかってやっと開店にこぎ着けた。

Open Groundのロゴ。インダストリアルミニマルに統一された内装やイメージはHardwaxの美意識を踏襲

Open Groundのロゴ。インダストリアルミニマルに統一された内装やイメージはHardwaxの美意識を踏襲

 筆者は11月17日に行われたプレパーティーに行く機会に恵まれたので、一足先に新クラブを体験してきた。店の定員は1,200人とのことで、約35万人規模の街にしてはやや大きめに思える。しかし、その分ゆったりとした空間作りがしてあり、通路や逃げ場が広い。フロアの音質はさすがのこだわりで、びっしりと吸音パネルが張られた壁の中でダイナミックな音に没入できる。ここまで音質にこだわって作られているクラブは、ドイツにはそう多くない。その夜は招待客のみだったが、ケルンやエッセンといった近郊の都市から訪れている人も多く盛況だった。この地域には、わざわざ州外から人が訪れるようなクラブはこれまでなかったので、今後ここが新名所となり、ドイツの新たな重要音楽スポットとして定着していくことが期待される。(※1)

記念すべき正式オープニング・パーティーのフライヤー。ブッキングは平均的なドイツのクラブよりベースミュージックの比重が高い

記念すべき正式オープニング・パーティーのフライヤー。ブッキングは平均的なドイツのクラブよりベースミュージックの比重が高い

※1 住所は、Alte Freiheit 25, D-42103 Wuppertal。現在は金曜と土曜の深夜のみ営業している

 

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浅沼優子/Yuko Asanuma

【Profile】2009年よりベルリンを拠点に活動中の音楽ライター/翻訳家。近年はアーティストのブッキングやマネージメント、イベント企画なども行っている

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