ソニーから、昨年12月に発売された単一指向性のコンデンサー・マイクC-80。ホーム・スタジオに向けながら、同社のハイエンド・マイクC-800GやC-100の設計を受け継ぐ一本だ。今回は、わーすた、こんどうようぢ、AKB48グループらの楽曲を手掛けてきた作詞・作曲家=鈴木まなかがプライベート・スタジオで試用。仮歌録りに使った印象から、マイクとしての魅力を探る。
Photo:Hiroki Obara
自宅録音に特化している点で“最高のマイクだな”と感じます
“最高だな”と思いました。宅録にすごく特化している気がして。まずはコンパクトなサイズ。私は仮歌を録るとき、パソコンのディスプレイと椅子の間にマイクを置くのが、ベストなセッティングだと思っているんです。ワンオペで録音することが多いので、DAWとマイク、自分が一直線上にあれば、視線を動かすことなく作業できるからです。その結果、集中力が高まるし時間の短縮にもなる。録り音の波形を見ながら歌えるのも良いと思うのですが、いつも使っているマイクは筐体が大きくて、ディスプレイをさえぎってしまいます。だから椅子の横に設置することが多いんですけど、C-80なら自分の前に置いてもDAWが見えるし、奥行きが浅いのでパソコンのキーボードへ伸ばす腕が“ピン”とならず、操作しやすい。このサイズ感だからこそ、理想的なセッティングが実現できるんだ!って思いますね。
音に関しては、C-800GやC-100とは少しカラーが違う印象で、中域に存在感や粘りがあるなと。Relic Lyricの作曲家、Hiroki Sagawaも“声が前に出てくる感じ”と話していました。高域にピークが感じられず、フラットでナチュラルな音という気がします。また、録音後に少し加工するだけでオケになじませることができたり、より前に出せたりもするので、ミックスに長けていない人でも扱いやすそうです。
内蔵のローカット・フィルターもよくできていて、自分の後ろで人が話しているときに入れてみたら、“こんなに後ろの声が入らないの!?”って思うくらい効果がありました。小声で、男性だったというのもあるかもしれませんが、生活音や環境音の低減に便利だと思うので、家で気軽に歌を録りたいなら、このローカットの使用をお勧めします。
そして特筆すべきは、オンマイクでも低音が膨らまないところ。すごく近くでささやき声を録音したとき、めちゃくちゃ奇麗に録れるんだなと感動しました。小さい声と張ったときの音量差を自然に均(な)らしてくれるような部分も特徴的で、まさに宅録で使いやすそう。“歌ってみた”やポッドキャスト用のナレーション録りがメインの方には、マストと言えるほどマッチすると思います。
Summary
✓ 小さくて設置の自由度が高い
✓ 中域に存在感や粘りがある音
✓ 歌ってみたやナレーションに合う
鈴木まなか
わーすた、こんどうようぢ、板野友美、HKT48、SUPER★GiRLSなどの楽曲を手掛けてきた。エイベックスとの専属契約を経て、現在代表を務める音楽制作会社Relic Lyric, inc.では「Da-iCE/スターマイン」が2022年レコード大賞 優秀賞作品賞へノミネート、「Snow Man / HELLO HELLO」が2021年度オリコン年間シングル・ランキング2位に。2023年には「オンラインDTMスクール ノチノヴィンテージ」をオープン
ソニー C-80
ホーム・スタジオ・ユースの単一指向性コンデンサー・マイク。歌やアコースティック・ギター、ピアノなどの録音、歌唱や演奏の配信に向けており、ハイエンド・マイクC-100を元にしつつ新設計したカプセルを採用。金蒸着のダイアフラムは、著名な録音作品の数々に使われてきたC-800Gと同等の素材を用い、近接効果を抑制すべくデュアル(2枚)構造となっている。これにより、オンマイクの際も自然な音が得られるという。また、楽器の中で声を抜け良く聴かせるために、13kHz辺りを持ち上げたチューニングも特徴。
●電源:外部から供給(DC44~52V) ●周波数特性:20Hz~20kHz ●正面感度:-30dB(偏度±3dB、0dB=1V/Pa、1kHz) ●ダイナミック・レンジ:125.5dB以上 ●出力インピーダンス:90Ω±15%、平衡型 ●最大入力音圧:138dB SPL以上 ●外形寸法:40(φ)×158(H)mm ●重量:約215g