AUDIO-TECHNICAのマイクと言えば、“20シリーズ”や“40シリーズ”を思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし同社の真骨頂は、ユニークな長方形のダイアフラムを備えた“50シリーズ”である。ここでは、トランス出力を採用したモデル=AT5047を、エンジニアの甲斐俊郎氏、プロデューサー/作編曲家のArmySlick氏によるレビューを交えて紹介する。
Photo:Chika Suzuki
AT5047|AT5040の構造を踏襲しながらもトランス出力を採用
AT5040よりも感度を少し下げ、トランス出力を採用。よりプリアンプの影響を受けづらくなっており、接続する機材の幅が広くなったことで、汎用性が高まっている。
【SPECIFICATION】
●指向性:単一 ●周波数特性:20~20,000Hz ●出力インピーダンス:150Ω ●最大SPL:148dB ●SN比(1kHz@1Pa):88dB ●感度(0dB=1V/1Pa、1kHz):−29dB ●外形寸法:57(φ)×165.3(H)mm ●重量:592g ●付属品:AT8480(ショックマウント)、変換ネジアダプター(3/8"-5/8")、キャリングケース
Engineer & Producer Review
ハイが滑らかでミッドローが充実している 〜甲斐俊郎(Engineer)
AT5047も音の傾向はAT5040と同じで、すごく好きですね。AT5040と比べてトップ・エンドがよりなめらかになり、ミッドローから下の帯域が充実しています。今回テストした中では、ほーDKさんのボーカルにはAT5047が一番合っていました。ダイナミクスのあるボーカルを、ハイを奇麗に、かつニュアンスの表現に大事なミッドローもつやのあるサウンドでキャプチャーできていると思います。また、AT5040がダイレクトなレスポンスが特徴なのに対し、AT5047はトランスを経由することで少しマイルドになる印象です。この辺りは好みの問題でもありますね。さらにギター・アンプをクリーン・トーンで収音してみたところ、こちらもすごく良い。全帯域にわたってキャプチャーされている感じがするし、音が近くて明瞭です。ブラスや繊細なタッチのドラムもこれ1本で、ハイファイな音で収録できそうだと思いました。
一番なじみのある音がするなと思いました 〜ArmySlick(Producer / Composer)
おくみずきさんの声もほーDK君の声も、中域がバーンと出てきて、きらびやかな印象を受けました。特に、おくみずきさんがラウドなアニソンを歌ったときに“ハマった”という気がしていて、僕はとても好きですね。聴いていて一番なじみのある音がするなと思いました。AT5040、AT5047は、男性、女性という部分だけでなく、曲のジャンルによっても好みが分かれそうなところが興味深いですね。
◎AUDIO-TECHNICA 50シリーズ レビュー&開発者インタビュー:
AT5040|長方形ダイアフラムを4つ備えたシリーズ最初のモデル
AT5045|メーカー史上最大サイズの長方形ダイアフラムを備える
“長方形ダイアフラム”はいかにして生まれたか〜AUDIO-TECHNICA 50シリーズの開発者 沖田潮人が語る
レビュワー&アーティスト紹介
おくみずき(左奥)
歌手/オーボエ奏者。音楽大学のオーボエ科を卒業後、2021年に1stアルバム『Dreams Inside』をリリース。ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』のイベント・テーマ・ソング「桜絵巻」を歌唱するほか、多数のゲーム主題歌やコーラスを担当
ほーDK(右奥)
R&B/ヒップホップを軸に活動するシンガー。2016年にユニットJamFlavorとしてエイベックスよりメジャー・デビュー。2022年4月以降はソロとして活動している。7月には2ndシングル『HITORIYOGARI』がリリースされた
甲斐俊郎(左手前)
ソニー・ミュージックスタジオにてキャリアをスタート。アナログ機器と最先端のデジタル機器の長所を駆使したミキシング・スタイルが信条。これまで、いきものがかり、スキマスイッチ、古内東子、All at once、moumoonなどの諸作で手腕を発揮している
ArmySlick(右手前)
プロデューサー/作編曲家。AAAに提供した「愛してるのに、愛せない」が第57回レコード大賞優秀作品賞を受賞。E-Girlsや私立恵比寿中学、宇野実彩子、大原櫻子、藍井エイルらの楽曲も手掛ける。nukes名義で海外のハウス・シーンでも活躍