AUDIO-TECHNICA AT5040〜フラッグシップ・マイク、50シリーズの秘密に迫る

AUDIO-TECHNICA AT5040〜フラッグシップ・マイク、50シリーズの秘密に迫る

AUDIO-TECHNICAのマイクと言えば、“20シリーズ”や“40シリーズ”を思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし同社の真骨頂は、ユニークな長方形のダイアフラムを備えた“50シリーズ”である。ここでは、シリーズ最初のモデル=AT5040を、エンジニアの甲斐俊郎氏、プロデューサー/作編曲家のArmySlick氏によるレビューを交えて紹介する。

Photo:Chika Suzuki

AT5040|長方形ダイアフラムを4つ備えたシリーズ最初のモデル

AT5040|AUDIO-TECHNICAのフラッグシップ・マイク、50シリーズの秘密に迫る

AT5040|オープン・プライス(市場予想価格:312,400円前後)

 50シリーズの中で最初に開発されたモデル。4つの長方形のダイアフラムを組み合わせたユニットを搭載し、忠実に再現された純度の高い音を特徴とする。感度とSN比はシリーズの中で最大。

【SPECIFICATION】
●指向性:単一 ●周波数特性:20~20,000Hz ●出力インピーダンス:50Ω ●最大SPL:142dB ●SN比(1kHz@1Pa):89dB ●感度(0dB=1V/1Pa、1kHz):−25dB ●外形寸法:約57(φ)×165.3(H)mm ●重量:582g ●付属品:AT8480(ショックマウント)、変換ネジ(3/8"-5/8")、キャリングケース

Engineer & Producer Review

おくみずき(女性vo)、ほーDK(男性vo)の歌声でテスト。今回の企画はすべての録音に、PRISM SOUND Orpheus(オーディオ・インターフェース)、SHADOW HILLS INDUSTRIES Mono Gama(マイクプリ)を使用した

今回は、おくみずき(女性vo/上写真)、ほーDK(男性vo)の歌声でテスト。録音には、PRISM SOUND Orpheus(オーディオ・インターフェース)、SHADOW HILLS INDUSTRIES Mono Gama(マイクプリ)を使用した

感度の高さがほかのマイクと段違いですね 〜甲斐俊郎(Engineer)

甲斐俊郎(Engineer)

 この4つの長方形のダイアフラム、すごい技術ですよね。スタジオ定番のマイクと比べてレスポンスが速く、歌いやすいという意見も多いです。音色は明るいのですが、ピーキーな感じはありません。ハイの出方が、特にアニソンやアイドル系などの明るい感じの女性の声と相性が良いです。落ちサビなどの声量が小さいところもしっかりとニュアンスを拾ってくれていて、感度の高さはほかのマイクと全然違いますね。出力が大きいのでマイクプリのゲインはそこまで上げられません。これは“そのままの音をキャプチャーする構造”だからこそのことでしょう。ゲインを十分に下げられるマイクプリを使うなど、受け側を少し工夫すれば、ひずまないしすごくいいですよ。ロックなどのオケがにぎやかなジャンルのボーカルでも、最終的にハード・コンプレッションして、張り出しつつ抜けの良い音が作れると思います。

表現の幅が広い曲に合いそうです 〜ArmySlick(Producer / Composer)

ArmySlick(Producer/Composer)

 解像度が高く、スピード感のある音ですね。中域のピーキーなところが少しまろやかになってくれるので、おくみずきさんのように、声の重心が高めな方にマッチしそうです。一方で、ジャンルとしては、表現の幅が広い曲に合うのではと思いました。ほーDK君がこのマイクでR&Bを歌うと、エアー感やブレッシーなところが奇麗に収音されていて、とてもきらびやかに聴こえたのが印象的でした


◎AUDIO-TECHNICA 50シリーズ レビュー&開発者インタビュー:

AT5047|AT5040の構造を踏襲しながらもトランス出力を採用
AT5045|メーカー史上最大サイズの長方形ダイアフラムを備える
“長方形ダイアフラム”はいかにして生まれたか〜AUDIO-TECHNICA 50シリーズの開発者 沖田潮人が語る

レビュワー&アーティスト紹介

おくみずき(左奥)、ほーDK(右奥)、甲斐俊郎(左手前)、ArmySlick(右手前)

おくみずき(左奥)
歌手/オーボエ奏者。音楽大学のオーボエ科を卒業後、2021年に1stアルバム『Dreams Inside』をリリース。ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』のイベント・テーマ・ソング「桜絵巻」を歌唱するほか、多数のゲーム主題歌やコーラスを担当

ほーDK(右奥)
R&B/ヒップホップを軸に活動するシンガー。2016年にユニットJamFlavorとしてエイベックスよりメジャー・デビュー。2022年4月以降はソロとして活動している。7月には2ndシングル『HITORIYOGARI』がリリースされた

甲斐俊郎(左手前)
ソニー・ミュージックスタジオにてキャリアをスタート。アナログ機器と最先端のデジタル機器の長所を駆使したミキシング・スタイルが信条。これまで、いきものがかり、スキマスイッチ、古内東子、All at once、moumoonなどの諸作で手腕を発揮している

ArmySlick(右手前)
プロデューサー/作編曲家。AAAに提供した「愛してるのに、愛せない」が第57回レコード大賞優秀作品賞を受賞。E-Girlsや私立恵比寿中学、宇野実彩子、大原櫻子、藍井エイルらの楽曲も手掛ける。nukes名義で海外のハウス・シーンでも活躍

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