ヤマハミュージックジャパンは、同社が取り扱うYAMAHAの音場支援システムAFC Enhanceと、音像制御システムAFC Imageの発表会を開催した。
空間の響きを豊かにするAFC Enhance
AFC Enhanceは、その空間固有の音響特性を活かしながら、音の響きを豊かにする音場支援システム。音源自体に人工的なリバーブを付加して異なる音の印象を作り出す手法とは異なり、楽器や歌声の自然な聴こえ方を保ちながら、その空間に拡がる音の残響感や音量感をコントロールし、用途に適した音響空間を作り出すことができる。
コアとなる仕組みは、舞台上を狙ったマイクから反射音を合成。同時に音響的フィードバックを利用し、マイクで収音した会場内の音をスピーカーから再生しながら、その直接音に空間固有の響きが加わった音をもう一度収音することで、響きを増強する(このフィードバック制御は特許技術EMR=Electronic Microphone Rotatorを使用)。この音場合成と音場制御の組み合わせで、スピーチ向きに作られた響きの少ない環境や屋外ステージなどでも、コンサートホールや聖堂のような響きを得ながら演奏することが可能になる。
1969年から音響コンサルタント事業を始めたYAMAHAでは、1985年にこのAFC技術を用いたシステムAA(Asssited Acoustic)を開発。2019年には96kHz対応のAFC4を発表し、昨年AFC Enhanceと名前を改め、アップデートを果たした。
発表会では、ヤマハ銀座スタジオにてさまざまな音空間を再現。プレゼンターのヤマハミュージックジャパン石橋健児氏がウッドブロックをたたいて響きの確認をしたり、バイオリニスト若旅菜穂子の演奏をコンサートホールや大聖堂の音場で聴くというデモンストレーションが行われた。
制作からライブまでをイマーシブで通関するAFC Image
AFC Imageは、AFC Enhanceのレンダリング・エンジンを使用して立体的な音空間を生み出す、オブジェクト・ベースのイマーシブ音場制御システムだ。劇場、オペラ、コンサート、インスタレーションなどにおいて、空間内の音を自在にコントロールして音響演出を行えるという。
一般的なステレオや5.1chサラウンドなどのチャンネルベース方式では、パンニングによる定位が正確に反映されるリスニングエリアはセンター付近の狭い範囲に限られてしまう。AFC Imageでは、オブジェクトベース方式を採用することで、ライブエンターテイメントにおけるサービスの均一性確保や複雑な演出の要求に対して課題を克服し、新たなミキシングアプローチを提案するソリューションとして生まれた。
スピーカーシステムのレイアウトに対して、オーディオオブジェクトを任意のポジションに置いたり、移動させることが可能。最大64ch出力=64個のスピーカーシステムをソフトウェア上で3次元的にレイアウトできる。また、オブジェクトの定位は専用ソフトウェアのAFC Image Editorはもちろん、YAMAHA製コンソールやOSC対応ソフト/コントローラー、TTA(ノルウェー)のトラッキングシステムStagetrackerなどでコントロール可能となっている。
さらに、インスタレーションで再生するコンテンツやライブシーケンスなどは、STEINBERG Nuendoで制作が行える。NuendoのVST MultiPannerで描いたパンニングを、AFC Imageに出力することで、会場のレイアウトに最適化した出力が可能となる。
また、AFC Imageには長年にわたるホール&劇場設計のノウハウを元に開発した3Dリバーブや、バイノーラル出力機能も搭載。スピーカーのゾーン(最大32ゾーン)やステージ形状などを設定することも可能だ。将来的にはNEXOのシミュレーションツールNS-1と連動し、スピーカー・レイアウトの読み込み/書き出しが相互に行えるようになる予定とのこと。