WATAPACHI 〜ヒップホップ集団YENTOWNに所属し、kZmやNormcore Boyzなどを手掛けるトラップ・ミュージック・プロデューサー/DJ【特集】TRAP MAKERS LAB

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一度リリースした作品は一生残るものなので
10年後に聴いても誇りに思える曲にしたいんです

トラップ・ミュージックを中心に制作する国内ビート・メイカーたちに、音楽制作を始めたきっかけやこだわりを聞いていく「TRAP BEAT MAKERS」のコーナー。続いて登場するプロデューサー/DJのWATAPACHIは、レーベル2100 GLOBALの主宰兼アート・コレクティブPROPERPEDIGREE設立者でもある。YENTOWNにも所属し、国内メジャー・アーティストのほかNormcore BoyzやkZmなどを手掛けている。

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 RECENT WORK 

『Copycat (feat. DOGMA & JNKMN)』
WATAPACHI
(2100 GLOBAL)

 ビート・メイキングを始めたきっかけ 

 高校生のときにAPPLE GarageBandで遊んでいたら、友人にAPPLE Logic ProというDAWがあることを教えてもらったんです。試しに使ってみると本当に面白く、そこから本格的にビート・メイキングを始めました。何も分からない状態からのスタートだったのですが、YouTubeのチュートリアル動画などを見ながらすべて独学で操作方法や曲の作り方を覚えていきましたね。もともと幼いころからクラシック・ピアノを習っていたのもあり、比較的すぐに曲が作れるようになったのを覚えています。

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YENTOWN/PROPERPEDIGREEに所属するメンバー、Nabewalksのスタジオ。ビート・メイキング時、WATAPACHIはAPPLE MacBook ProにLogic Proを立ち上げて作業しているが、レコーディングやミックス・チェックなどはこのスタジオで行っている。モニターはKRK RP8G3を装備。デスクの左奥には、ベースに特化したアナログ・シンセMOOG Minitaurの姿が見える

 ビート・メイキングに影響を与えた楽曲 

 G・ユニット『ベッグ・フォー・マーシー』です。14歳のときアメリカで初めて聴いて、“本物のヒップホップ”というものを知りました。リリックもビートもすごく格好良いです。

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オーディオI/Oは、RME Babyface Pro FSを使用。WATAPACHIいわく「音がとても奇麗に録れます」とのこと

 尊敬するビート・メイカー/プロデューサー 

 カニエ・ウェストのアルバム『イーザス』に参加したことでも知られる、プロデューサーのブロディンスキです。彼の音はダークかつセクシーで、自分好み。常に新しいサウンドに挑戦しているところが好きです。彼のルーツと思われるテクノ系の音を、ヒップホップに入れてるところが良いですね。

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モニター・ヘッドフォンは、開放型のSENNHEISER HD650を備える

 TR-808系キック・ベースのこだわり 

 TR-808系キック・ベースの音源にはサンプルを用いて、細かく音作りしています。ベロシティは一番強くして、周波数帯域がほかのパートとかぶらないように、EQを使ってうまくスペースを作ってあげることが重要です。またリリースが短め/長めの2種類のTR-808系キック・ベースを使い分けています。よく併せて使うのは、ひずみ系プラグイン・エフェクトのCAMEL AUDIO CamelCrusher。たくさんのプリセットがあるのですが、私が一番好むのは“BASS MAKER”です。ひずみ感を付加するだけでなく、低域が強調され、音の輪郭もはっきりします。結果として、よりTR-808系キック・ベースの存在感を出すことができるのです。

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ソフト/ハード統合型コントローラー、NATIVE INSTRUMENTS Maschine Mikro MK3

 上モノのこだわり 

 パッド・シンセはSPECTRASONICS Omnisphere 2、リード・シンセはCAMEL AUDIO Alchemyなどのソフト音源を用い、フランジャーやディレイで空間作りを意識しています。ピアノやギターは、実際に弾いた音を録音したサンプルを使うことが多いです。サンプルはLogic Pro付属のソフト・サンプラー=EXS24やUltrabeatにアサインし、ピッチを上げ下げして使用しています。サンプル自体にリバース加工を施すと、面白いサウンドになるので好きですね。

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同じく、ソフト/ハード統合型キーボードのNATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol S49。Maschine Mikro MK3と併せて、「ソフト音源をあたかもハードウェアのように扱えるのが魅力的です」とWATAPACHIは話す

 ビート・メイキングのコツ 

 良い環境で作ること。ワーク・スペースを大切にしています。モニター環境はもちろん、好きな映画の映像をなどを流して雰囲気を作るのも重要です。一つ一つの楽器のピッチやハーモニー、メロディを細かく調整し、全体的なロー/ミッド/ハイのバランス、曲の長さにも気を付けています。最終的に“WATAPACHIらしいサウンド”になっているかどうか、これもポイント。自分が聴いて飽きない曲を作ることです。また1曲のみに固執せず、うまく行かないと思ったら次の曲に進むことも大事ですね。一度リリースした作品は一生残るものなので、10年後に聴いても誇りに思える曲にしたいんです。

 

【特集】TRAP MAKERS LAB