teenage engineering OP-1 祝10周年! 小さなスーパー・シンセを愛用するクリエイターたちが魅力を語る

teenage engineering OP-1 祝10周年! 小さなスーパー・シンセを愛用するクリエイターたちが魅力を語る

スウェーデンのストックホルムに拠点を構えるteenage engineeringのポータブル・シンセサイザー、OP-1。2011年に発売されて以降、デジタルの電子楽器としては異例とも言えるロング・セラーを記録し、今年で10周年を迎えた。そのコンパクトな筐体やカラフルなディスプレイ・デザイン、ユニークで多彩な機能性は唯一無二の存在感を放つ。さらに、現在もアップデートは続いており、今なお進化を続けているのだ。ここではOP-1の10周年を祝うべく、その機能をあらためて紐解くとともに、OP-1を愛用するクリエイターの菅波栄純(THE BACK HORN)、酒井雄二(ゴスペラーズ)、テンテンコ、冨田謙、AZUMA HITOMIによって語られたOP-1の魅力を紹介していこう。

 

teenage engineering OP-1とは?

teenage engineering OP-1

 SPECIFICATIONS 
●外形寸法:282(W)×13.5(H)×102(D)mm ●最大連続使用時間:16時間 ●AD/DAコンバーター:24ビット/96kHz ●内蔵メモリー:512MB ●付属品:USBケーブル ●入出力端子:3.5mmステレオ・ミニ端子×2(イン/アウト)、内蔵マイク、内蔵ミニ・スピーカー、内蔵G-Force 3次元モーション・センサー、内蔵FMラジオ・アンテナ(64~108MHz)、USB2.0端子

 PRICE 
OP-1:148,500円
OP-1 accessory kit:8,800円

OP-1 accessory kit

accessory kit一式。FMアンテナ(写真左下/ラジオ受信用)、クランク(同上/手回し録音モード用)、ベンダー(同右上/LFO操作用)、ブリックシャフト(同中央の8個/LEGOブロック互換用)を含む

 OP-1は、スピーカー内蔵の24鍵シンセサイザー。シンセサイザーのほか、リズム・マシン、テープ・レコーダー、ミキサーと4種類のメイン・モードを搭載する。そのほか、シーケンサーやサンプラー機能も備え、ABLETON LiveやPROPELLERHEAD ReasonをはじめとするDAWソフトのMIDIコントローラーとして使用することも可能だ。

 

 シンセ・エンジンはアップデートを重ね、8ビット・シンセやFMシンセ、ストリングスのモデリングなど10種類以上を搭載。各エンジンは簡単な操作で切り替え可能だ。

 

 さらに、内蔵エフェクトもOP-1の大きな特徴の一つ。スタンダードなDelayやEqualizerのほか、牛のイラストがデザインされたピッチ・シフト・ディレイのCWOや、その名の通りボクサーがパンチをするグラフィックのPunchなど、それぞれ遊び心を感じさせるユニークな演出が施されている。

 

 また、上部に位置する色分けされた4つのカラー・エンコーダーは、画面上での各パラメーターのカラーリングと対応。各機能で高い視認性と優れた操作性を実現する。

 

 これらの機能が凝縮されたOP-1を、プロのクリエイターはどのように駆使しているのだろうか? 続いてはその活用法に迫る。 

 

クリエイターたちが語るOP-1の魅力!

 キーボーディストのみならず、幅広いジャンルのクリエイターに絶大なる人気を誇るOP-1。ここでは、5人のOP-1愛用ユーザーが登場、それぞれの目線でOP-1の魅力を語ってもらった。彼らは、何をきっかけにOP-1を導入し、自身の活動でどのように活用しているのだろうか?

 

菅波栄純(THE BACK HORN)

菅波栄純(THE BACK HORN)

【Profile】結成20年を経て活動中のTHE BACK HORNのギタリスト/作詞/作曲者。楽曲提供・プロデュースも精力的に行い、ソロ・プロジェクト“eijun”としても活動中

 Recent work 

 

●OP-1を導入したきっかけ

 ルックスと世界観が大好き過ぎたから。

●自身の活動でのOP-1活用例

 これまでの楽曲でレコーディングしたことは無いのですが、eijun名義でのソロ・プロジェクトを開始したのもあり、バンド・サウンド以外のトラック・メイキングもしていく予定なので、これからどんどん使っていきたいです。ちなみに、好きな音色はVOLTAGE。SPRINGというエフェクトをかけると、雰囲気が加味されてさらに心地良い音色になります。

●お気に入りの機能

Tape機能

 音楽をOP-1に取り込んでTape機能でループさせて分析したり、メロディを重ねてみたりして遊びます。サンプリングした音にメロディを付けるのが自分の作曲の始まりだったので、今でもひらめいたときにアイディアをメモする感覚でやっていますね。そのまま使うことは無いのですが、メロディのストックとして保存しておいて、作成中の楽曲に溶け込ませることはあります。

 

 録音/編集可能な4trのTape機能 

録音/編集可能な4trのTape機能

 4trのテープ・レコーダーを内部で再現。テープ・スピードは可変式で、Normalスピードで6分、Lowスピードでは最大24分録音できる。オーバー・ダビングやリバース・レコーディングにも対応。リフトやスプリットなどテープ編集機能も搭載し、内蔵サンプラーへのドロップも可能だ。

 

酒井雄二(ゴスペラーズ)

酒井雄二(ゴスペラーズ)

【Profile】1994年のメジャー・デビュー以降、多数のヒット曲を世に送り出す日本屈指のボーカル・グループ=ゴスペラーズのメンバー。最新作は『アカペラ2』

 Recent work 

 

●OP-1を導入したきっかけ

 確か、サンレコの2009musikmesseの記事で見て。“聞いたことの無いメーカーだけどいいデザインだな”と思い、国内入荷して間もないころに入手しました。シリアルナンバーもかなり早い番号なのでは。

●自身の活動でのOP-1活用例

 作曲時にインスピレーションを求めて試行錯誤しているとき、直感で触れるOP-1は心強いです。自分たちの作品ではフレーズも最終的には声に置き換わったりしてしまうのですが。ともあれ、ツアーの多い自分にとって、OP-1のコンパクトさと堅牢なシャーシは立派な性能です!

●お気に入りの機能

内蔵FMラジオ

 シンセの出音の枠の中で煮詰まってもがくこともよくあるんですが、OP-1にはFMラジオがあるので助かります。思わぬ音が入ってくることでそこを抜け出せたりしますし、ラジオを通した音の質感って独特の良さがありますよね。2016年の『いとうせいこうフェス』でのヤン富田さんのパフォーマンスを思い出します……。ラジオを拾って偶然の奇跡を取り込める点でOP-1も同じなのではないでしょうか。

 

 サンプリングも可能なFMラジオ 

サンプリングも可能なFMラジオ

 OP-1には、FMラジオを内蔵。聴取だけでなく、サンプリングすることもできる。本体のみでも受信は可能だが、別売りアクセサリーのOP-1 Accessory Kitに含まれるFMアンテナやヘッドフォンを外部入力端子に接続することで、より受信感度を向上させることができる。

 

テンテンコ

テンテンコ

【Profile】エレクトロニクス・ミュージシャン。2013~14年にはBiSで活動し、解散後ソロ・プロジェクトを開始。ZVIZMO、MikaTen、幡ヶ谷ちっちゃいものクラブでも活動中

 Recent work 

『My Sweet Dream: The Best Of Private Tracks #2』テンテンコ

『My Sweet Dream: The Best Of Private Tracks #2』
テンテンコ
(φonon)
7月16日発売予定

 

●OP-1を導入したきっかけ

 一人で音楽活動を始めてしばらくして、機材を増やしたいなとなったときに、goatやYPYとして活動する日野浩志郎さんのおすすめで購入しました!

●自身の活動でのOP-1活用例

 『Red Lion Fish CDR』では、ドラム音をFINGERシーケンサーで走らせて使用。曲の元となるELEKTRON Digitaktのサウンドより倍速にしたり遅くしたりし、曲に変化を付けました。

●お気に入りの機能

FINGERシーケンサー

 鍵盤でシーケンスを打ち込める機能なのですが、白いツマミですぐにシーケンス長を変えたり、赤いツマミでシーケンサー同士を合わせるセッション・モードや、スライド・モードなど、とにかく瞬発力と予期せぬ意外な演奏力がめちゃめちゃ魅力的です。インプロ感がとても出るので、ライブで多用しています。

 

 ユニークで多機能なシーケンサー 

ユニークで多機能なシーケンサー

 OP-1には複数のシーケンサーが備えられ、鍵盤でステップ入力できるENDLESSシーケンサーや、グリッド・タイプのPATTERNシーケンサーなど、それぞれ異なった手法でリズムや音階をコントロールする。FINGERシーケンサーでは、2つの異なるパターンを組み合わせて演奏することが可能だ。

 

冨田謙

冨田謙

【Profile】small circle of friendsを経て、キーボーディスト/アレンジャー/プロデューサーとして活動。堀込泰行、NONA REEVES、藤井隆、オリジナル・ラブらのサポートを手掛ける

 Recent work 

 

●OP-1を導入したきっかけ

 発売時にエンジニアの渡辺高士さんに教えていただき早々に注文しました。“冨田さん絶対好きだよ”とお薦めされましたが、ドンピシャでハマりました。

●自身の活動でのOP-1活用例

 アイディアを練ったり予期せぬ音を探すときにOP-1を多用します。堀込泰行のアルバム『FRUITFUL』収録曲の「涙をふいて」では、サンプリングのコラージュをシーケンスにしていますが、これはOP-1で作った素材をDAWに録音、切り張りしてアイディアを練りました。

●お気に入りの機能

LFOセクション

 OP-1は独特で楽しい機能ばかりですが、LFOのセクションは手軽にモジュレーションをエフェクトやシンセサイズのパラメーターにつなげられて、予期せぬ効果を生み出すことができるのが便利です。RANDOM LFOは意外なテクスチャーを作るのに効果的。重力センサーやマイク・インプットをソースにすることでアクティブなモジュレーションができるのも、コンパクトなOP-1ならではの持ち味。

 

 重力センサーもソースにできるLFO 

重力センサーもソースにできるLFO

 LFOは現在7種類を搭載。重力センサーや外部入力をコントロール・ソースにしてモジュレーションをかけるELEMENT LFOや、すべてのパラメーターをランダマイズするRANDOM LFO、外部のMIDIコントローラーを使い4つのパラメーターをモジュレートするMIDI LFOなどを備える。

 

AZUMA HITOMI

AZUMA HITOMI

【Profile】サウンドクリエイター/シンガー・ソングライター。アナログ・シンセ・カルテットHello,Wendy!でも活躍。現在美学校にて“AZUMA HITOMIのシンセお悩みそうだんしつ”開講中

 Recent work 

 

●OP-1を導入したきっかけ

 ライブで即興の曲作りをするときに使いたかったので。本体のデザインはもちろん、ゲームのような画面が多くワクワクするので、手元を映しながらパフォーマンスしました。

●自身の活動でのOP-1活用例

 即興の曲作りパフォーマンスで、ビートで曲を引っ張るために、ドラム・モードのFINGERシーケンサーでループを制作。そこに、周波数の変化と同時に画面内のボクサーの体力が削られる“PUNCH”や、牛のイラストが表示されるフリーケンシー・ディレイ・エフェクトの“CWO”など、ユニークなエフェクトをかけました。波形編集の自由さも相まって、いつの間にかグラニュラー・シンセをいじるような深みにハマりました。

●お気に入りの機能

ドラム・モードのサンプル・エンジン

 OP-1はサンプリングとシンセサイズを並行して音色を作り込んでいけるのが魅力。テープ・モードでのキューイング・サウンドなど、ちょっと強気なアナログ・モデリング感をデジタルな馬力が支えていて、波形をいじり倒しても常に良い音が出るんです。ドラム・モード(プリセットが既にサンプル・ベース)では、内蔵マイクを通してサンプリングした音を、アタックをきっかけに自動で鍵盤にレイアウトしてくれるのでピッチや再生位置のエディットと組み合わせながら奇想天外なビートを作れます!

 

 モード別に機能するサンプラー 

モード別に機能するサンプラー

 OP-1にはサンプラーが搭載され、入力ソースは、外部入力(ライン/内蔵マイク)、FMラジオ、リサンプリングから選択できる。シンセ・モードでは最大6秒録音でき、サンプルは音階演奏が可能になる。ドラム・モードの録音時間は最大12秒。サンプルは自動分割され、鍵盤上にレイアウトされる。

 

製品情報