ピアノロールとは?〜MIDI打ち込みができるDAWの主要機能

ピアノロールの基本の「き」〜ピアノロールとは?|イメージを形にできるMIDIの基礎知識

DAWソフトの主要な機能の一つ、ピアノロール。これを使いこなすことができれば、オーディオとは趣を異にする豊かな音楽表現が可能になります。ここでは、ピアノロールの基本的な部分について見ていきましょう。

ピアノロールとは?

 ピアノロールは、音の高さや強さ、長さ、音が鳴るタイミングなどをデータとして入力できるツール❶。楽譜に音符を書き込むようなことが、DAWソフト上で行えるわけですね。ピアノロールでは鍵盤の絵が縦に表示され、画面の縦軸が音の高さを表します。横軸はタイムラインで、長さやタイミングを表示。強さは、後述のベロシティというもので自由に設定できます。ピアノロール上のデータはMIDI(ミディ)という規格に基くデジタルの信号です。また、データの入力作業は打ち込みと呼ばれます。

本特集でテクニック解説をしてくれる、おおくぼけい氏のメインDAW=APPLE Logic Proのピアノロール。鍵盤の絵が縦に表示されている通り縦軸が音の高さで、横軸がタイムラインを表します。ノートのベロシティはLogic Proの場合、ノート内の線の長さ&色で表現され、スライダーにも表示(赤枠)。この画面はデフォルトの状態でC4のノートを打ち込んだところで、音の高さは周波数523Hzのド。ヤマハ式という方式の設定となっており、国際式という方式ではC4=261Hz(つまり1オクターブ下)に設定されています。どちらの方式を採用しているかはDAWによります

 ピアノロールに打ち込んだデータは、DAWで自動演奏(シーケンス)することが可能です。例えば、ドの鍵盤の位置に4分音符のデータを打ち込めば、その長さでドの音を自動演奏できるのです。

ベロシティとデュレーション

 ピアノロールに打ち込むデータの1つ1つは、MIDIノートノートと言われます。ノートには幾つかのパラメーター(自由に変えられる数値)があり、代表的なものとして、音の強さを設定するためのベロシティ、長さを決めるデュレーションが挙げられます。

 ベロシティは0~127の128段階で設定でき、0のときはノートを打ち込んでいないノート・オフの状態と同じ。デュレーションはtick(ティック)というのが最小単位で、その長さはDAWによってさまざまです。例えば、1tickが4分音符を960分割した長さに固定されているものもあれば、480分割で固定のものもあります。また、480分割や96分割がデフォルトのセッティングでありつつ、ほかの数値を設定できるものも見られます。

各DAWのピアノロール

 各DAWのピアノロールを集めました。下部のエリアに表示させたのは、ノートのベロシティを示すバー。ここにはベロシティ以外にも、さまざまな情報を映せます。

ABLETON Live
APPLE Logic Pro
AVID Pro Tools
BITWIG Bitwig Studio
MOTU Digital Performer
IMAGE-LINE FL Studio
PRESONUS Studio One
STEINBERG Cubase

※Studio Oneは内部処理にMIDIを用いず、ベロシティが初期設定で“1~100%”という数値幅

打ち込み前に必要なこと

 ノートを並べてメロディやフレーズを作っていくには、どうすればよいのでしょうか? まずはDAW上にインストゥルメント・トラックを作り、好きなソフト音源を読み込みます。ソフト音源とは、ソフトウェアとして提供される楽器のことで、実際の楽器を録音して製作されたものやシンセサイザーなどがあります。これをインストゥルメント・トラックに立ち上げ、MIDIの信号を入力して初めて音が出ます。

 ノートの打ち込みは、後述する“ノートの入力方法”のいずれかで行います。打ち込み終えると、インストゥルメント・トラック上のブロック形の箱に、ノートが横棒の形で表示されます❷。この箱はMIDIリージョンやMIDIクリップなどと呼ばれ、開くとピアノロールが出現。リージョン/クリップを作ってからノートを打ち込む場合もあります。

打ち込みを始めるには、後述する“ノートの入力方法”のいずれかでノートを入力するか、リージョン(クリップとも)を作ってMIDIノートを入力します。入力したノートはリージョン上において横棒の形で表されます

マルチティンバー音源とは?

 ソフト音源には、1台で複数の音色を鳴らせる“マルチティンバー音源”というものがあります。これを使うと、例えばバイオリンの音とビオラの音を1台で同時に鳴らすことが可能。MIDIには1~16のチャンネルがあるので、“このMIDIデータでバイオリンを鳴らすためにチャンネル1を使い、別のデータでビオラを鳴らすためにチャンネル2を使う”といった設定を行います。DAWによっては、複数のインストゥルメント・トラックから1台のマルチティンバー音源を鳴らせたり、本来は外部のハードウェア音源を鳴らすためのMIDIトラックを使ったりする場合があります。

グリッドの概念

 ピアノロールには、横軸に沿ってグリッドという縦の線が入っています。グリッドは1小節を何分音符の長さで等分するか決めるもので、16分音符区切り❸や8分音符区切り❹、3連符区切りなど、さまざまに設定可能。これのおかげで視認性が上がり、どこにどんなノートを打ち込めばイメージしたパターンができるのか分かりやすくなります。

16分音符のグリッド
8分音符のグリッド
16分音符のグリッド(左)、8分音符のグリッド(右)

 ノートをグリッドにぴったり沿わせることを“ジャストで打ち込む”と言います。また、グリッドにぴったり沿わせて正確なタイミングにするためのクオンタイズという機能があるので、覚えておきましょう。

ノートの入力方法

 ノートの入力方法は大きく分けて3種類あります。

 鉛筆ツールでの入力 

 マウスやトラックパッドなどを使って1音1音、打ち込んでいく方法です。ピアノロールのメニューから、鉛筆ツールやペンツール、ペイントツールなどと呼ばれるものを選び、クリックして打ち込みます❺。

鉛筆ツールでの入力

 ステップ入力 

 主にMIDIキーボードを併用するやり方で、打ち込みたいノートの長さをメニューで選択してから、キーボードを押さえます❻。例えば4分音符のCコードを打ち込みたければ、メニューで4分音符に指定した後、ドミソの鍵盤を押さえるという要領。打ち込まれたら、カーソルがノートの終端へ自動的に移動するので、次のノートを入力できます。

ステップ入力

 リアルタイム入力 

 MIDIキーボードやコントローラーを併用する方法です。トラックを録音状態にし、打ち込みたいタイミングを再生しながらキーボードやコントローラーを演奏すると、ノートが入力されていきます❼。

リアルタイム入力

 打ち込む際は、ソフト音源が鳴ります。これが、ソフト音源にMIDIの信号が入力されている状態。再生ボタンを押して、パターンをプレイバックする際も同様です。

 MIDIの信号は、いわばコントロール信号。それ自体で音は鳴りませんが、音源をどのように鳴らすか決めるためのものです。また、打ち込んだ後でも自在にエディットでき、音色を変えたければソフト音源を変更するだけ。非常に自由度が高いものと言えます。


 続いては、ピアノロールにまつわるフレーズ・メイクのテクニックを、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が書き下ろしの曲を題材に解説します!(会員限定記事)

【特集】ピアノロール入門〜イメージを形にできるMIDIの基礎知識