YAMAHA MSP3A 〜【ペアで約5万円以下】宅録/DTMに最適なモニター・スピーカー9モデルをレビュー

YAMAHA MSP3A 〜【ペアで約5万円以下】宅録/DTMに最適なモニター・スピーカー9モデルをレビュー

宅録やDTMに最適なペアで約5万円以下のモニター・スピーカー全9モデルを、音楽クリエイター/ギタリストのShin SakiuraとエンジニアのSUI氏が徹底レビュー! ここでは、YAMAHA MSP3Aを紹介します。

EQ/音量ノブが前面にあって扱いやすく、設置方法の自由度の高さも魅力

YAMAHA MSP3A フロント
YAMAHA MSP3A リア
YAMAHA MSP3A|製品価格:オープン・プライス(市場予想価格:19,250円前後/1台)

 22Wのパワー・アンプを搭載。また背面のバスレフ・ポートに独自技術“ツイステッドフレアポート”を採用する。これは、ポートの入口から出口に向かって広がり方を変化させ、さらにひねりを加えることでポート両端での気流の乱れを抑え、クリアで原音忠実な低域の再生を実現するというもの。フロント・パネルには、高域/低域の補正用ノブや2系統の音量ノブを装備。別売りのブラケットと組み合わせて天井や壁面に設置したり、同じく別売りのマイク・スタンド・アダプターを使ってマイク・スタンドに設置したりすることも可能だ。

  • ウーファー口径:4インチ
  • 入力端子:XLR/TRSフォーン・コンボ、RCAピン
  • その他:バスレフ・ポートに独自技術を採用し、クリアな低域の再生を実現

SPECIFICATIONS
●形式:2ウェイ・アクティブ・スピーカー ●スピーカー構成:4インチ径ウーファー+0.8インチ径ツィーター ●周波数特性:67Hz~22kHz(-10dB) ●外形寸法:144(W)×236(H)×166(D)mm ●重量:3.6kg/1台

中〜高域の解像度が高くステレオ感もよく見える 〜Shin Sakiura

 自分はリニューアル前のモデルであるMSP3を自宅のスタジオで使っていますが、このMSP3Aもやはり良いです。タイトな低域と、解像度の高い中〜高域を併せ持つサウンドで、個人的にはめちゃくちゃYAMAHAらしい音だと思います。スピーカー自体による色付けはほとんどなく、マイクで録った音がそのままに聴こえてくるという印象で、まさに“原音忠実”なスピーカーだと言えます

 解像度の高い中〜高域に関しては、スタジオでよく使われるYAMAHA NS-10M Studioに近いものを感じます。スピーカーによっては8kHz付近が聴こえにくいものもあるため、聴こえるまで音量を上げるといったことをしなければなりませんが、MSP3Aだと小音量でも8kHz付近がしっかり聴こえるので申し分ありません。従って、普段からボーカルやギター、ピアノなど中〜高域の楽器を録音したり、ミックスしたりすることが多い人は特に、このMSP3Aと相性がいいでしょう。ステレオ感が捉えやすいため、コーラスやシンセ・パッドなどステレオ・ワイドに広がる楽器の音作りもしやすいです。EQによる微量なブースト/カットもよく見えます。

リバーブ量の細かい差も見え音像の作り込みがしやすい 〜SUI

 MSP3Aは現代的なYAMAHAの音がします。NS-10M Studioの中高域を軸に、さらにレンジを上下に広げたようなイメージで、ベース・ラインもよく見えます。フロント・パネルの下部に低域と高域のトーン・コントロール・ノブが付いているのもポイント。スピーカーの設置環境に応じて調整できるし、椅子に座ったままサッと手を伸ばして触れるのが便利です。

 またMSP3Aは定位感や奥行き感がとても分かりやすいので、音像を作り込みやすいと思います。楽器の細かいパンニングだったり、繊細なリバーブ処理をしたりといった作業が容易にできるでしょう。リバーブのウェット量を0から徐々に上げていくテストでは、0から1の差でもモニターできる実力を持っています。そのくらいMSP3Aは空間表現力に優れていると言えます。

 裏を返せば、MSP3Aはミックスの雑なところや悪いところといった“あら”を探すのにも最適です。MSP3Aできちんとしたミックスができるようになれば自身の腕も上がることでしょう。音楽制作やエンジニアリングを真面目に追求したいという人にとっても、有用なスピーカーだと言えますね。

レビュワー紹介

Shin Sakiura

Shin Sakiura
東京を拠点に活動する音楽クリエイター/プロデューサー/ギタリスト。2015年より個人名義でオリジナル楽曲の制作を開始。バンド・サウンドからヒップホップ、R&B、エレクトロまで広い音楽性を持ち、自身の作品制作のほか、SIRUPやアイナ・ジ・エンドなどの楽曲制作や海外アーティストとのコラボと活動は多方面にわたる。ギター、ベース、サンプラーなどさまざまな楽器を駆使したライブ・パフォーマンスも注目を集めている。

 Recent Work 

『WILD CHILD feat. brb.』
Shin Sakiura
(PARK)


SUI

SUI
エンジニアのほか、リミックス・ワークも手掛ける音楽クリエイターとしても活動。ギターやベースなどの演奏からプログラミングまでを一人でこなすマルチプレイヤーでもあり、その柔軟なプロダクション・スタイルはメジャー/インディーズ問わず定評がある。近年では作曲家として劇伴音楽にも携わり、ますますその活動の場を広げている。セミナー講師としては自身の技術を惜しみなく講義することも多く、業界内での信頼も厚い。

 Recent Work 

『WATW “ing”』(『Honey, You!』収録)
WATWING
(トイズファクトリー)
※作編曲/エンジニアリング

試聴環境

 今回試聴を行った場所は、多目的スペースである御茶ノ水RITTOR BASEだ。スタジオ内には、一般的な部屋を想定して6畳ほどの空間を用意。そこに簡易デスクとスピーカー・スタンドを設け、モニター・スピーカーを配置した。ここで2人のレビュワーに、リファレンスとなる楽曲を再生したりDAWを立ち上げて作業したりして、全9モデルのスピーカーの性能をチェックしていただいた。

御茶ノ水RITTOR BASE内に作られた、6畳ほどの試聴スペース。L/Rのスピーカーとリスニング・ポジションが正三角形になるように配置している。スピーカーはやや内側に向け、ツィーターは耳の高さになるようスピーカーごとに座椅子の高さを調整する

御茶ノ水RITTOR BASE内に作られた、6畳ほどの試聴スペース。L/Rのスピーカーとリスニング・ポジションが正三角形になるように配置している。スピーカーはやや内側に向け、ツィーターは耳の高さになるようスピーカーごとに座椅子の高さを調整する

製品情報

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