周波数や音量でコントロール可能なオート・パンナー〜SOUND PARTICLES Brightness Panner / Energy Panner

SOUND PARTICLES Brightness Panner / Energy Panner 〜周波数や音量でコントロール可能なオート・パンナー

 Reviewed by 
Blacklolita
【Profile】サウンド・デザイナー/音楽クリエイター。ダブステップを軸にさまざまなダンス・ミュージックやゲーム音楽を制作する。また、サンプル・パックのデベロッパー、KYMOGRAPHの運営も手掛けている。

サラウンドやDolby Atmos、イマーシブ・フォーマットにも対応

 ここ最近、自分の音楽制作において重要なのが空間処理。耳で判断しながらパンニングするのは基本的なことですが、視覚的にも行いたいと思ったときはSOUND PARTICLESのオート・パンナー、Brightness PannerとEnergy Pannerの出番です。

 

 両者はMac/Windows対応で、AAX/AU/VST/プラグインとして動作。出力はステレオのほか、5.1/7.1chやDolby Atmos互換の7.1.2chサラウンド、最高3次までのAmbisonicsやバイノーラルといったイマーシブ・フォーマットに対応しています。

 

 Brightness PannerとEnergy Pannerは、ほぼ同じようなパラメーターと画面構成を持っていますが、大きな違いは入力ソースの種類です。Brightness Pannerでは、入力ソースのピッチやブライトネス(高域成分)、あるいはMIDIノート入力に応じてパンニングが動作しますが、Energy Pannerでは入力ソースのレベルに応じてパンニングが動作します。なお、Brightness Pannerにおける動作モードの切り替えは、画面の下段中央部分にあるPITCH/BRIGHTNESS/MIDIボタンで可能です(画面①)。

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画面① Brightness Panner。入力ソースのピッチやブライトネス(高域成分)、またはMIDIノート入力に応じてパンニングが動作する。動作モードの切り替えは、画面の下段中央部分にあるPITCH/BRIGHTNESS/MIDIボタンで可能だ。MIDIボタンの上にあるサイコロ・マークの“ランダム化”ボタンを押すと、パラメーター値が無作為に割り当てられる。自分では思いつかないような、新しいパンニング経路を見つけるヒントになるかもしれない

 画面上段には“PAN”と“SLIDING”の動作モード選択ボタンがあります。“PAN”をクリックするとパンニング・モードとなり、画面中央にある“ドーム”と称される球体内に設定した開始点(STARTハンドル)と終了点(END/MOVEMENTハンドル)の間を音源が移動します。

 

 ドームでは、左がLch、右がRch、上が正面、下が背面となっており、開始点と終了点を好きな位置にマウスでドラッグして、音源の移動経路を設定することが可能です。通常のようなL/Rのパンニングでは不可能な位置に設定することもできます。

 

 パンニング・モードでは入力ソースが高域成分を多く含むほど、または入力ソースのピッチが高いほど、開始点から終了点への移動幅が大きくなる仕組みです。

 

 一方“SLIDING”をクリックするとスライディング・モードとなり、入力ソースの周波数またはピッチが設定範囲内の場合、ドーム内に定めた経路を音源が移動し続けます。範囲外となっても開始点には戻らず、再び範囲内となるまで音源は移動し続けるのです。

 

L/Rだけでなく、正面/背面にもパンニング可能

 ドームの左側にはSTARTセクションがあり、ここで音源の開始点の設定が行えます。左側のスピーカー・アイコンを押すと、入力ソースの位置からパンニングを開始する“スピーカー・モード”に、右側の●アイコンを押すと、任意の位置からパンニングを開始できる“ポイント・モード”になるという仕様です。

 

 さらにその下部にあるMOVEMENTセクションでは、よりダイナミックな動作設定を4種類から選択可能です(画面②)。例えば“任意の位置から時計回りに移動”といったような動きを、簡単にコントロールできます。

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画面② Brightness Pannerの画面中段の左側にあるMOVEMENTセクション。パンニングの動作設定を、時計回りに移動/反時計回りに移動など、4種類から選択できる

 ドームの右側には、エフェクトのDRY/WETノブやゲイン・ノブ、出力インジケーターを装備。この出力インジケーターの真下にあるメニューでは、ステレオやサラウンド、イマーシブなどの出力フォーマットを選べます(画面③)。

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画面③ Brightness PannerとEnergy Pannerでは、OUTPUTの下段にあるメニューからステレオをはじめ、5.1/7.1chなどのサラウンド、Ambisonics(3次)、バイノーラルなどさまざまな出力フォーマットを選択可能。なお、ステレオではXY/MS/Blumlein方式など細かくセレクトできる

 画面下段も見てみましょう。左側にはBrightness Pannerが作用する周波数帯域、またはピッチの範囲を設定するLOW/HIGHノブが配置されています。一方、右側には入力ソースを検出する際のアタックとリリースを調整するATTACKノブとRELEASEノブを装備。コンプレッサーのような感覚で使えるところが良いですね。

 

 Energy Pannerの方ではATTACKノブとRELEASEノブに加え、画面左下にはTHRESHOLDノブとRATIOノブがあるため、ほぼコンプレッサーと同様の扱い方となっています。画面下段の中央部分にある“SIDE CHAIN”をクリックすれば、サイド・チェインという形で、ほかのトラックからの信号をパンニング動作の基準として取り入れることが可能となっています(画面④)。

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画面④ Energy Pannerでは、入力ソースの音量レベルに応じてパンニングが動作する。なお画面下段の右側には、ATTACKノブとRELEASEノブを備え、同左側にはTHRESHOLDノブとRATIOノブを搭載。コンプレッサーと同様の扱い方となっている。なお画面下段の中央部分にある“SIDE CHAIN”をクリックすると、ほかのトラックの音量の大小を検知してパンニングが行える

アトモスフィア・サウンドに適用すれば、空気そのものがうごめくような響きに

 実際に使ってみて個人的に驚いたのは、入力ソースのドライ信号とパンニングされた信号におけるDRY/WET量を調節できること。これによって幅広いパンニングの演出が可能です。とても画期的だと感じます。

 

 またMOVEMENTセクションで設定できる“時計回り/反時計回り”の動作を、シンセ・パッドなどのアトモスフィア・サウンドに適用してみたところ、空気そのものがうごめくような不思議な響きを得ることができました。ミックスやサウンド・デザインを行う上で、この2つは間違い無く力を発揮することでしょう。

 

 Brightness PannerとEnergy Pannerに共通して言える大切な部分は、パンニング処理後における信号出力のレンダリング・フォーマット。せっかくこだわったパンニングを設定しても、フォーマットをきちんと設定していないとあまりその効果を発揮できないからです。

 

 デフォルトではステレオで音声が出力される設定となっていますが、冒頭で説明したように、Brightness PannerとEnergy Pannerは、サラウンドやAmbisonics、バイノーラルといったイマーシブ・フォーマットに対応しています。

 

 リス二ング環境にもよりますが、自分はMOVEMENTセクションで動作モードを“時計回り”にし、バイノーラルで書き出す方法が一番効果を実感できました。パンニングを背面に施したい場合にも有効的だと思います。

 

 Brightness PannerとEnergy Pannerは、新たなパンニングの可能性を提示するプラグイン・エフェクトです。既に自分は仕事で活用しているのですが、シンプルな操作性と確実なアプローチで作業効率も上がったと実感しています。空間を操る“魔法のプラグイン”をぜひ試してみてください!

 

SOUND PARTICLES Brightness Panner / Energy Panner【特殊処理】

Brightness Panner:オープン・プライス(市場予想価格:5,500円前後)、Energy Panner:オープン・プライス(市場予想価格:5,500円前後)

 Requirements 
■Mac:OS X 10.11以上(M1 CPU対応予定)、AU/AAX Native/VST/VST3対応のホスト・アプリケーション
■Windows:Windows 10、AAX Native/VST/VST3対応のホスト・アプリケーション
■共通:2コア以上、8GB以上のRAM、600MB以上の空き容量

 

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