昨今の洋楽ダンス/クラブ・ミュージック・シーンにおける主流のシンセ・サウンドやミックス・テクニックなど、最新の音作り術をプロ・クリエイターたちが紹介! ここでは、フューチャー・ハウス(Future House/Kawaii Future House/Future Bass)やテック・ハウス(Tech House)のドロップ部分で用いられることが多い「フューチャー・オーガニック・リード」の作り方をプロデューサー/DJのMKが解説します。
“フューチャー・オーガニック・リード”とは?
フューチャー・オーガニック・リードとは、オーガニック……つまり生音のサンプル素材を元にしたリード・サウンドのこと。近年人気のフューチャー・ハウスやテック・ハウスにおけるドロップ部分で用いられることが多く、オールドスクールだけどどこか新しい感じがする、というのが人気の理由でしょう。
フューチャー・オーガニック・リードは、2015年辺りからフューチャー系のダンス・ミュージック・シーンを確立したドン・ディアブロのレーベルHEXAGONや、マーティン・ギャリックスのレーベルSTMPD RCRDSなどの音源で登場し始め、ボーカル・カットアップのはやりと併せて、近年のダンス・ミュージック・シーンにおけるスタンダード・テクニックの一つになりつつあります。
とても簡単なプロセスなので、ぜひ今日から自身のプロダクションに取り入れてみてください。また、いろいろなサンプル素材で試してみるのもよいでしょう。
参考音源
STEP 1:サンプルをソフト・サンプラーに割り当てる
サンプル素材として用いるのはシンセなどではなく、ボーカルやギター、ストリングス、ブラスなどの生音です。今回は、例としてロング・トーンのボーカル・サンプル素材を使用します。なぜ“ロング・トーン”なのかというと、メロディ・ラインを作った場合に音価(音の長さ)に余裕がある方が、さまざまなフレーズに対応できるからです。
まずは、このボーカル・サンプル素材をソフト・サンプラーにアサイン。私はIMAGE-LINE FL Studioのチャンネルに標準搭載されているサンプラーのChannel Samplerを使って、PITCHを+12、FORMANTを−12に設定しました。ピッチやフォルマント機能があるソフト・サンプラーであれば代用できますが、もし無い場合はSOUNDTOYS Little AlterBoyやWAVES Vocal Benderなどのプラグインを使うといいでしょう。オケに合うように、また面白いサウンドになるようにトライしてみてください。
STEP 2:ひずみ系エフェクトで処理
次はサチュレーターやディストーションなどのひずみ系エフェクトを挿し、ボーカル・サンプルを十分にひずませます。
自分はFABFILTER Saturn 2を使いましたが、ひずみ系のエフェクトであれば好きなものでOK。生音のサンプル素材は、シンセなどのエレクトロニックなサウンドと比べて音量にばらつきが出やすいです。またピッチ・シフトしてメロディを作った場合、鳴らすキーによって倍音に差が出やすいということもあり、これらをうまくカバーするためにエフェクトでひずませて、統一感のあるサウンドにしていきましょう。
STEP 3:好みのエフェクトで個性的に
最後はお好みのエフェクトで自由に加工しましょう。EQやコンプでのピーク処理はもちろん、スタッターでリズミカルなフレーズを作るのも良いですね。またディレイやリバーブなどの空間系エフェクトを使用すると、オケになじませることができます。
参考曲『To Give Is To Live』のようにキックをトリガーとしたサイドチェイン・コンプをかけ、さらにピッチやフォルマントのオートメーションを描くのも面白いでしょう!
完成した音源の試聴はこちら!
MK
【Profile】プログレッシブ・ハウス/フューチャー・ハウス/トランスなどを手掛けてきたサウンド・プロデューサー/DJ。オランダの名門レーベルArmada Musicから楽曲をリリースするほか、Jポップやゲーム音楽の楽曲提供など多方面に活躍する。別名義のShadwとしても数多くリリースしている。