NOVATION Circuit Rhythm 〜Rock oN Monthly Recommend vol.38

NOVATION Circuit Rhythm 〜Rock oN Monthly Recommend vol.38

 注目の製品をピックアップし、Rock oNのショップ・スタッフとその製品を扱うメーカーや輸入代理店に話を聞く本連載。今回はNOVATION Circuit Rhythmを紹介する。コンパクトなスタンドアローン・サンプラーで、内蔵バッテリーも装備。気軽にプレイできる筐体設計でありながら、サンプルのエディットやシーケンス機能が充実しており、クオリティの高いビートやループを作成できるとのことだ。NOVATIONの小山田耕平氏、Rock oNの渋谷隆了氏に話を聞いた。

NOVATION Circuit Rhythm

オープン・プライス(市場予想価格:44,000円前後)

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 バッテリー内蔵スタンドアローン・サンプラー。8trを備えており、最大32ステップのパターンを打ち込むことが可能だ。サンプルは本体のライン入力から、またはエディター・ソフトComponentsからインポートできる。サンプルの再生モードはスライス、リバース、ループ、クロマチック再生などを選択可能。また、ディストーション、スロープ、ハイパス/ローパス・フィルター、サイド・チェイン・コンプといったエフェクトで音色を作ることもできる。パフォーマンスに最適な、ボタン1つでエフェクトをプレイできるGrid FXも装備。

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リア・パネル。左から、電源供給用USB-C端子、microSDカード・スロット、MIDI Thru、Out、In、Sync出力、メイン・アウト(フォーンL/R)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・ミニ)、サンプル・イン(フォーンL/R)

 

●Circuitシリーズのコンセプトは?

小山田 直感的にトラック・メイクができる、説明書に頼らなくても感覚的に操作して楽しめるというのがコンセプトです。

渋谷 CircuitとCircuit Mono Stationは試したことがあり、特にCircuit Mono Stationの音が良かった印象があります。ステップ・シーケンサーが付いているシンセって、多くは16ステップが横に並んでいるような見た目が多いですが、Circuitは自照式パッドが2列になっていて、ABLETON Liveを使っている人はなじみやすそうですよね。Circuitは伝統的なステップ・シーケンサーとは別路線で考えて作られているんだろうと感じていました。

 

●Launchpadシリーズなども手掛けているNOVATIONだからこそ、現代的な制作シーンを考えているのかもしれませんね。

渋谷 7、8年前にアナログのブームが来て、Bass Station IIも火付け役になっていたと思いますが、そういったものよりも今のデジタル世代が使いやすそうな、良い意味でポップな印象を受けました。

 

●現在のCircuitシリーズにはCircuit Tracksもありますが、こちらはどのようなモデルでしょうか?

小山田 基本的にシンセ音源がメインとなっています。それにサンプルのドラム音源が加わっているモデルです。ドラムのシーケンスを組みながら、シンセを重ねていくのがCircuit Tracksで一番オーソドックスな作り方ですね。Circuitシリーズはもちろん単体でも音作りはできるのですが、エディター・ソフトのComponentsを使うことでパラメーターの深い部分までアクセスできます。Circuit Tracksに関しては、ソフト・シンセのような細かい音作りまでできるんです。

 

●本体は直感的な操作性を持ちつつ、しっかりとコントロールしたい欲求にはComponentsが応えてくれるわけですね。Circuit Rhythmはスタンドアローン・サンプラーですが、ソフトウェア中心の現代の制作シーンでは映える存在だと思います。

渋谷 ハードウェアのサンプラーでディスプレイが無いというのは“攻めているな”と感じます。視覚的にではなく、耳で聴いて作っていくというのは面白い音作りのきっかけになると思いますね。やはり波形が見えてしまうとアタックやリリース部分を細かく調整して、“絶対にズレは許せない”みたいな感覚になってしまうこともありますが、耳だけで判断してノブを回していると、アタック部分に少し空白ができていたりして、それによってグルーブが生まれたりする。DAW上ではなかなか出ないパターンが作れるのかなと思います。

小山田 ディスプレイが無いことも、“アーティストが持っている感覚を大切にしよう”というメーカーの思想がかかわっています。ディスプレイが無いことで偶然生まれるサウンドがありますし、それはアーティスト本来の直観性が反映されていると思います。海外のユーザーも自分の感覚を大切にして操作できるという部分を気に入ってくれているようです。

渋谷 こういうハードウェアはシンプルなものが良いと思っています。Circuit Rhythmだけで1曲を作るという人はあまり居ないはずですし、ひとまずこれで曲のスケッチができればそれで100点。それをオーディオに書き出したり、録音したりして、最終的にDAWで仕上げるという人がほとんどでしょう。直感的に扱える操作性で曲作りのとっかかりになってくれるだけでも、ハードウェア・サンプラーとしての役割を果たしてくれていると思います。

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専用エディター・ソフトのComponents。Webブラウザーからアクセスでき、インストール版も用意されている。プロジェクトやパックの管理、Circuit Rhythmへのサンプルのインポート、Grid FXの設定などが可能。この画面はGrid FXの管理ページで、ドラッグ&ドロップで任意のパッドにGrid FXをアサインできる。詳細なパラメーターもここでコントロール可能だ

●具体的な機能についても教えてください。Circuit Rhythmは8trを操作できるようですね。

小山田 8trのシーケンス・パターンが作れて、さらにその8trごとに8つのシーケンスを持たせることができます。それを組み合わせることで1曲として構成でき、それがプロジェクトとなります。また、パックというものがあり、それはCircuit Rhythmのパラメーターやパターン、サンプルなどすべてを入れ替えるものです。

 

●サンプルのインポート方法は?

小山田 Circuit Rhythmに直接ライン入力する方法と、専用エディター・ソフトのComponentsを使ってインポートする方法があります。サンプルはインポート時に16ビット/48kHzのモノラルWAV音源に変換されます。

 

●それらのサンプルはmicroSDカードへ保存する?

小山田 1つのパックは本体に保存可能です。それ以上にパックを用意したりする場合はmicroSDカードが必要となってきます。

 

●インポートしたサンプルはどのようにエディットを行うのでしょうか?

小山田 サンプルの長さが光っているパッドの数で表示されるので、サンプルのスタート/エンドはそれを見ながら調整していきます。

渋谷 テンポもパッド上に数字で表示されたりして、その表現が面白いですよね。

 

●サンプルの再生モードも幾つか用意されていますね。

小山田 ワンショットとゲート、ループ、リバースがあります。あとはスライスしたり、キーボードで音階を付けることも可能です。スライスは均等に切ることもできますし、再生しながらパッドをたたいて手動で切ることも行えます。シンプルなサンプラーのように見えますが、最低限必要な機能はしっかりと備わっているんです。

 

●ノートやゲート以外で、ステップへ記録できるパラメーターはどんなものがありますか?

小山田 フィルターやTuneはもちろんのこと、Distortionなどパネル上部のノブに設定されているパラメーターは、ノブの動きをすべてリアルタイムで記録することが可能です。

渋谷 最近の音源はディストーションが搭載されていることが多いですよね。トラップとかでは音がひずんでいたりすることも多く、はやりもあるんだと思います。そういう意味でも、Circuit Rhythmに使いやすいディストーションが備わっているのはうれしいですね。あとトラップに関係していることで言うと、ステップを刻むことができるNote Repeatがとても簡単で、ハイハットのロールもすぐに作れます。トラップのビートを作るならこれは必要ですね。

小山田 Note Repeatでは刻む分解能をパッドで設定し、再生しながら刻みたいステップの部分を押すだけの簡単操作です。また、単純に刻むだけでなく、Micro Step機能を使えば細かくタイミングをずらすことも可能になっています。

 

●シーケンサー以外にも、ドラム・パッドやキーボード・ノートといったモードで打ち込みができますね。

小山田 ドラム・パッドは、いわゆるフィンガー・ドラムのようにリアルタイムでたたいて演奏して記録することができます。8trのサンプルがたたきやすい位置に並び、さらにNote Repeatのボタンも用意されているので、演奏にアクセントを加えることが可能です。

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ステップ・シーケンサーの画面以外にも、ドラム・パッド・モード(写真左)やキーボード・ノート・モード(写真右)で演奏してパターンを打ち込むことが可能だ

●エフェクトも幾つか用意されていますが、Grid FXと呼ばれるものはどういった機能なのでしょうか?

小山田 DJエフェクトのようなものです。Grid FXのパラメーターはComponentsで細かく調整できますが、本体上ではボタン一つで簡単に使えます。Auto-Filterだったり、Beat Repeat、Reverser、Gaterといった、DJ的なアプローチをしたいときに指一本でエフェクトをオンにできるんです。

渋谷 ノブを回すより手軽で扱いやすそうですね。

 

●シーケンサーの再生にも、さまざまな機能が盛り込まれていますね。

小山田 走らせ方として順走と逆走、ランダムがあります。また、プロバビリティという機能では、パターン内で選択したステップが設定した確率で鳴るようにすることが可能です。

渋谷 自分の想像できない部分の変化が加わるのは楽しそうです。

 

●非常に多機能で、多彩なジャンルで活躍しそうなサンプラーです。お二人はどのようなシーンで活用してもらいたいですか?

渋谷 やはりNote Repeatが優秀なので、トラップにはピッタリだと思いますね。ガッツリとスタジオに腰を据えて作るというよりも、みんなで集まってぱっと作ったものを最後はDAWで完成させる、という流れが合うのかなと。

小山田 エレクトロニック系であれば、ほとんどの人にお使いいただけるサンプラーだと思います。最近のNOVATIONはアンビエントやノイズ系のアーティストに人気で、Circuit Tracksのサウンドもそういったジャンルに合うものも多かったんです。その流れでこのCircuit Rhythmが登場したので、それらのジャンルが作りやすいようなインターフェースになっていると感じます。

 

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