TASCAM Sonicview 24 〜クラスを超えた機能/操作性/音質を備えるデジタル・ミキサー

TASCAMからリリースされたデジタル・ミキサーSonicviewシリーズ。24フェーダー+マスター・フェーダーに7インチ・タッチ・スクリーン3画面を備えたSonicview 24(上の写真)と、16フェーダー+マスター・フェーダーに7インチ・タッチ・スクリーン2画面を備えたSonicview 16をラインナップしている。今回はSonicview 24を、PAエンジニアの須藤浩氏にレポートしてもらおう。

Sonicview 24

Sonicview 24

Sonicview 16

Sonicview 16

高音質に加え使いやすいレイアウト

 まずは音質から。本機は、96kHz/54ビット・フロートの内部処理を基本としているので、通常48kHzで使用している設定を96kHzに変更したときの制約(チャンネルが半分になるなど)がなく高音質で使用できることと、マイク・プリアンプに新規開発されたClass 1 HDIAマイク・プリアンプを採用したことで、クラスを超えた高音質に仕上がっています。さらに、ステージ・ボックスSB-16Dと、コンソールに装備しているヘッド・アンプが同じ仕様であるため「ステージ・ボックスのヘッド・アンプは音が良いのに、コンソールのヘッド・アンプはS/Nが悪いねぇ」などということもありません。

16イン/16アウトのDanteステージ・ボックスSB-16D

16イン/16アウトのDanteステージ・ボックスSB-16D

 実機に初めて触れた瞬間の感想は「本体フェーダー部分の厚みが薄くて操作しやすい」でした。トップに向かって3段階に傾斜が付いていて、それぞれの盤面がとても見やすくなっています。

 トップ・パネルのレイアウトは、手前から24本のフェーダー、その上にそれぞれのチャンネル・ネームを示すディスプレイ、さらにその上には、SEL、SOLO、MUTEボタンが装備されていています。それぞれ違う形状のボタンにしてあり、特にMUTEボタンの周囲にはガードを付け、誤操作を防ぐ機能も装備されています。これは、とても便利な機能です。

 その上は、ロータリー・エンコーダーが装備されていて、最上部のタッチ・スクリーンで選んだカテゴリーの調整ができます。タッチ・スクリーンには、それぞれのチャンネルごとの表示のほか、「FULL SCREEN」をタッチすることで3画面にわたって1つのチャンネルを表示させることもできます。

タッチ・スクリーン3画面にわたって1つのチャンネルを表示させることができ、より細かい操作が可能

タッチ・スクリーン3画面にわたって1つのチャンネルを表示させることができ、より細かい操作が可能

 マスター・モジュール・セクションは、7つのレイヤー・ボタン、マスター・フェーダー、6個+12個のUSER KEYボタン、最上部には大きく見やすいメーターに加え、USB端子、SDカード・スロットも装備しており、ステレオ音声の再生/録音(録音はSDカードのみ対応)やスナップショット、バックアップ・データの送受に使えます。これは時代にマッチしている装備と言え、大変便利です。加えて、フロントにはヘッドフォン端子(標準プラグとミニSTプラグ)を装備しています。

 リア・パネルには、入力に24個のXLR端子を搭載し、17ch〜24chにはTRSフォーン端子も備えています。さらに、15chと16chにはインサート入力も装備。内部エフェクトを使わずに好みの周辺機器を使用するのに適しています。また、オプション・カードも豊富に用意されていて、2枚を装着可能です。

リア・パネル。本文に記載した入力端子のほか、出力にはXLR端子が16個とL/Rのモニター出力、RCAピン端子のST IN 1と2、ステージ・ボックスSB-16Dとの接続を行うDanteのPRIMARYとSECONDARY、ワード・クロックのINとTHRU/OUT、フット・スイッチ端子、PCと接続できるUSB端子、Ethernet端子、GPIO D-SUB接続端子、トークバック・マイク専用入力XLR3、ランプを接続するXLR4端子、オプション・カードを挿入するスロット×2が装備されている

リア・パネル。本文に記載した入力端子のほか、出力にはXLR端子が16個とL/Rのモニター出力、RCAピン端子のST IN 1と2、ステージ・ボックスSB-16Dとの接続を行うDanteのPRIMARYとSECONDARY、ワード・クロックのINとTHRU/OUT、フット・スイッチ端子、PCと接続できるUSB端子、Ethernet端子、GPIO D-SUB接続端子、トークバック・マイク専用入力XLR3、ランプを接続するXLR4端子、オプション・カードを挿入するスロット×2が装備されている

オプション・カード。写真は64ch対応MADI input/output/thruカード「IF-MA64/EX」。このほか、32ch MTRカード「IF-MTR32」や、16ch AES/EBU入出力カード「IF-AE16」、16chアナログ出力インターフェース・カード「IF-AN16/OUT」、64ch Danteカード「IF-DA64」などが用意されている

オプション・カード。写真は64ch対応MADI input/output/thruカード「IF-MA64/EX」。このほか、32ch MTRカード「IF-MTR32」や、16ch AES/EBU入出力カード「IF-AE16」、16chアナログ出力インターフェース・カード「IF-AN16/OUT」、64ch Danteカード「IF-DA64」などが用意されている

ユニークな操作性と便利な機能

 インプット・フェーダーは最大40モノラル+2ステレオですが、モノラル入力をステレオ入力にする場合には隣同士のチャンネルを選択できる上、2本のフェーダーがリンクするのではなく1本のフェーダーがステレオ・フェーダーとして機能します。この場合、画面上には2個のヘッド・アンプが表示されロータリー・エンコーダーは2個同時に可変できますが、インプット・モジュール画面ではそれぞれを個別で可変することもできます。

 ロータリー・エンコーダーは、通常の操作で微調整、スイッチを押し込みながら操作するとパラメーターの値を大きく変化させることができ、素早い操作が可能となっています。

 フェーダー・レイヤーは7レイヤーあり、すべてのレイヤーをカスタマイズ可能。デジタル・ミキサーによく見られる「固定レイヤーがあり、ほかにカスタム・レイヤーが存在する」のではなく7レイヤーすべてにおいて自由にカスタマイズできるところがポイントです。また、レイヤー・ボタンの一番下に備えられたFIX LAYER(WITH SEL)ボタンとチャンネルのSELボタンを押すことで、SELボタンを押したブロックの8フェーダーは固定になり、レイヤーを切り替えてもそのままのレイヤーをキープできます。これは、非常に便利な機能です。

 内蔵のエフェクターは4基搭載され、リバーブやディレイはもちろん、コーラス、フランジャー、フェイザーとスタンダードなものから、ピッチシフターも備えています。バスに関してもミックス(AUX)バスをつぶすことなくFX専用のセンド・バスを持ち、リターンに関してもインプット・チャンネルを使用せずFX専用のリターン・フェーダーを装備しています。

 さらに、チャンネル・ディレイは単独で各インプット/アウトプット・モジュールに装備され、最大341.32msを確保しています。デジタル放送による遅延や、映像と音のズレによるリップ・シンクの問題を即座に調整可能です。

 通常のミックス(AUX)センドは、各チャンネル・モジュールの送りで音量を調整しますが、本機はSEND OVERVIEW画面から各インプットのセンド・レベルが変えられ、ライブ配信送りが当たり前になった現在ではマイナス・ワンを作る際も瞬時に操作できます。これは今までにない機能です。


 690.8(W)×228.1(H)×554.4(D)mmに18kgというサイズ、税込み935,000円というプライスはミドル・クラスですが、機能、操作性、音質はクラスを超えていると言えるでしょう。32chなどのさらなる上位モデルや、複数のSonicviewシリーズをカスケード接続できる機能の登場にも期待せずにはいられません。

須藤氏のチェック環境。今回はSonicview 24とSB-16Dのほか、iPadアプリTASCAM Sonicview Controlも使ってもらった。「PCで事前にオフライン・エディットができるほか、現場においてはほとんどの調整をiPadでコントロールできます(須藤氏)」

須藤氏のチェック環境。今回はSonicview 24とSB-16Dのほか、iPadアプリTASCAM Sonicview Controlも使ってもらった。「PCで事前にオフライン・エディットができるほか、現場においてはほとんどの調整をiPadでコントロールできます(須藤氏)」

◎本記事は『音響映像設備マニュアル 2023年改訂版』より転載しています。

 1980年代より、長年にわたって全国の専門学校等で教科書としてご採用いただいている音響/映像/照明の総合解説書『音響映像設備マニュアル』。2年振りとなる本改訂版では、随所を最新情報にアップデートしました。

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