SSL(SOLID STATE LOGIC) Liveシリーズ 〜ライブの現場でも輝きを放つSSLクオリティ

高品質なコンソールの代名詞とも言えるSSLブランド。レコーディングや放送の現場で長い歴史を刻んできた同ブランドのラインナップに「Live」というシリーズがある。その名の通りライブの現場で使用されるコンソールで、音に妥協しないプロの間で注目されている。2014年からのユーザーであるPAカンパニー、トゥ・ミックスのサウンド・エンジニア塩谷高弘氏と前崎元気氏に話を聞きながら、その魅力に迫っていこう。

写真◎小原啓樹

トゥ・ミックスで使用されている2台のSSL L500 Plus。左の筐体の画面に表示されているのが、インタビューで話題に上がったオールパス・フィルター

トゥ・ミックスで使用されている2台のSSL L500 Plus。左の筐体の画面に表示されているのが、インタビューで話題に上がったオールパス・フィルター

「すべてが聴こえる」サウンド

 「われわれの関わっている現場の例でいうと、NHKホールの音声調整室にある放送卓がSSLなのですが、そういった業界でトップクラスの実績があるSSLからライブ用のコンソールが発売されると聞いて、すぐに導入が決まりました」

 Liveシリーズが導入された当時のことを塩谷氏はこう振り返る。トゥ・ミックスはL500を2台採用し、後に処理性能の上がったチップにアップデートしL500 Plusとなっている。現在のL550 Plusに特徴が受け継がれている上位モデルだ。そのサウンドについて前崎氏はこう語る。

 「それまで主に48kHzのコンソールを使っていたのですが、L500 Plusは96kHzで動いていて、そこに大きな違いを感じました。低い音から高い音までのレンジが広く、違いがすぐに分かるほどです。それまで聴こえていなかった音が聴こえるようになり、調整できる幅が広がりました」

 このサウンドの特徴については塩谷氏も同意見で「すべてが聴こえる。他の音にマスキングされて聴こえづらいということが少ない印象。自分がうまくなったと錯覚してしまうようなきめ細やかさ」という言葉で表現してくれた。

 機能面では、特定の周波数だけに位相シフトを適用できるオールパス・フィルターを活用しているという。

 「同じ音源に対してマイクを2本立てる場合、位相が合えばちゃんとした音が出ますが、位相がずれていると音が引っ込んだように聴こえます。それを狙った周波数で微調整できるのです(前崎氏)」

 「コンソールには位相を反転させるスイッチが付いているものですが、大抵はオンかオフのどちらかしか選べない。ここまで細かく調整できるのはSSLのコンソールでしか見たことがないです(塩谷氏)」

音に妥協しないプロに選ばれている

 L500 Plusは256のシグナル・パスを持ち、最大で976の入出力が可能(後継機種のL550 Plusは288のシグナル・パスを持ち、最大1,136の入出力が可能)なため、回線数を多く必要とする現場でも重宝しているという。

 「この数は、導入当時は群を抜いていました。他のコンソールなら2台、3台と持ち込まなければならないようなときもL500 Plusなら1台で済むので、これは画期的だと思いましたよ。演者の方がたくさん出演する現場でモニター卓として使う場合、1人に対してLRを返すとして10人いたら20回線必要ですから扱える回線数が多いのは助かります。具体的な例でいうと、2021年4月に行われた筒美京平さんのトリビュート・コンサートが大編成のバンドだったので、FOHとモニターの両方にL500 Plusを使いました(塩谷氏)」

 また、海外から来日するアーティストの公演で、同行のエンジニアからLiveシリーズを指定されることも多いようだ。

 「直近ですとサマーソニックに持ち込んだり、ブルーノ・マーズのツアーで使われたりしました。やはり音に妥協しない人たちからのオーダーが多いなという印象があります(塩谷氏)」

国内外で存在感を高めるLiveシリーズ

 2013年にスタートしたSSLのLiveシリーズ。質の高いサウンドと独自の機能性で、その存在感を国内外で高めている。2023年3月時点の現行機種は以下の6モデルだ。

L650 312のシグナル・パスを持ち、最大856の入出力に対応。

L650|312のシグナル・パスを持ち、最大856の入出力に対応。

L550 Plus 288のシグナル・パスを持ち、最大1,136の入出力に対応。

L550 Plus|288のシグナル・パスを持ち、最大1,136の入出力に対応。

L450 240のシグナル・パスを持ち、最大856の入出力に対応。

L450|240のシグナル・パスを持ち、最大856の入出力に対応。

L350 Plus 216のシグナル・パスを持ち、最大600の入出力に対応。

L350 Plus|216のシグナル・パスを持ち、最大600の入出力に対応。

L200 Plus 144のシグナル・パスを持ち、最大600の入出力に対応。

L200 Plus|144のシグナル・パスを持ち、最大600の入出力に対応。

L100 Plus 96のシグナル・パスを持ち、最大472の入出力に対応。

L100 Plus|96のシグナル・パスを持ち、最大472の入出力に対応。

 必要に応じて、すべてのモデルで使える12フェーダーのUSB拡張パネルRemote Tileや、L550 Plus/L350 PlusとEthernet接続して使える24フェーダー/32フェーダーのRemote Expanderを組み合わせることが可能。

Remote Tile

Remote Tile

Remote Expander

Remote Expander

 ステージ・ボックスはMADIもしくはDanteを選べる。特にMADIのアナログ・ステージ・ボックスML 32.32は、レコーディング・コンソールでその名を知られるSSL独自のSuperAnalogue回路が用いられた32系統のマイク/ライン入力と32系統のアナログ・ライン出力を備えている(コンソール本体に装備されたI/OにもSuperAnalogue回路が用いられている)。

 そのほか、タブレットを用いてLiveシリーズをコントロール可能なアプリTaCo、パソコンでLiveシリーズのセットアップやコントロールができるアプリSOLSAも用意されている。

ML 32.32

ML 32.32

取材に答えていただいたトゥ・ミックスのサウンド・エンジニア、前崎元気氏(左)と塩谷高弘氏

取材に答えていただいたトゥ・ミックスのサウンド・エンジニア、前崎元気氏(左)と塩谷高弘氏

◎本記事は『音響映像設備マニュアル 2023年改訂版』より転載しています。

 1980年代より、長年にわたって全国の専門学校等で教科書としてご採用いただいている音響/映像/照明の総合解説書『音響映像設備マニュアル』。2年振りとなる本改訂版では、随所を最新情報にアップデートしました。

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