コスト・パフォーマンスに優れた製品群で知られる音響機器ブランド、CLASSIC PROよりコンパクトで静音性に優れた高音質のパワー・アンプ、CPL150が登場しました。同ブランドのパワー・アンプには幾つかのシリーズがありますが、本製品の一番の特徴として挙げられるのが静音性です。大出力のパワー・アンプに装備されている空冷用のファンが搭載されておらず、静かな環境を必要とする現場に最適です。
フロント・パネルはシンプルな構成 リア・パネルには豊富な端子類
では早速、製品概要を見ていきましょう。本体は1Uサイズで重量は5.4kgです。奥行きは250mmと非常にコンパクトな設計になっています。
フロント・パネルの左側には、2ch分(CH A/CH B)のクリック付き大型レベル・コントロールと出力信号を表すピーク・ランプ付きのLEDメーターがあります。レベル・メーターがあることで、視覚的に安心して使用できます。
CH Bのレベル・コントロールの右横には保護回路の動作を示すPRO(PROTECT)と動作モードを示すBR(BRIDGE)とPAR(PARALLEL)の各LEDが配置されており、さらにその横には電源オンを示すLEDもあります。そのほかは右側に電源スイッチがあるのみという至ってシンプルなデザインです。
続いて、リア・パネルを見ていきましょう。ここには入力用としてXLR端子(メス)とTRSフォーン入力が2ch分用意されています。これらの入力端子の間には動作モードをステレオ、パラレル、ブリッジのいずれかに切り替えるスイッチを搭載しており、今、どのモードなのかは前述したフロント・パネルのLEDに反映されます。
また、このクラスでは珍しく入力感度の切り替えスイッチが装備されており、0.775V/26dB/1.4Vを切り替え可能です。さらにGROUND/LIFTスイッチも搭載されています。
出力端子は2ch分のスピコン端子とバインディング端子が装備され、設備用に使用する際にも便利です。電源はAC100Vで消費電力は100Wと大変省エネになっています。
低〜高域まで楽器の粒立ちを感じる音 マイク音声もクリアかつコシがある
次は動作モードについて紹介していきます。前述の通り、3つのモードが用意されていて、さまざまな状況で使用することができます。通常のステレオ・モードは2ch出力、ブリッジ・モードでは1ch入力/1ch出力、パラレル・モードは1ch入力/2ch出力となっています。ブリッジ・モードではバインディング・ポスト端子のCH Aの+端子とCH Bのマイナス端子を使用します。
ステレオ・モードは通常の2chパワー・アンプとして使うときのモードで、定格出力は8Ω負荷で45W×2ch、4Ω負荷で75Wx2chです。ブリッジ・モードは1chのパワー・アンプとして使うモードで、8Ω負荷で150W×1chとなっています。そのサイズ感からは想像できないくらいのパワーを発揮できると言えるでしょう。
では、実際に使用して筆者が所有しているパワー・アンプと聴き比べてみます。比較の対象となる製品の一つは約15年前の1Uサイズのモデルで360W×4ch/8Ω、そしてもう一つはライン・アレイ・スピーカーでも使用している1,000W×4ch/8Ωという製品です。ソースには音楽とダイナミック・マイクを使用しました。スピーカーは小型の5インチ・フルレンジ・タイプです。
パワー感は、さすがに1,000Wクラスのパワー・アンプとは違いがありますが、360Wの製品には引けを取らないレベルでした。ちなみに、ボリュームもフルではなくセンター(12時位置)で比較しています。音質的には、CPL150はAB級を採用していて高音質です。音楽を再生した印象としては、ローエンドからハイエンドまで楽器の粒立ちが感じられ、10Hz〜50kHz(−1.5dB)という周波数特性にも納得できます。さらに、マイクでの再生も非常にクリアで、聞きやすくかつ十分にコシのある音質です。
全体的な感想としては、音楽、マイクともにLEDメーターはさほど振れていないにもかかわらず、ものすごくパワー感があることには驚かされました。我々のように古い人間の考えとして、パワー・アンプはデカくて重い方が良いという時代は終わったのですね。
これらの特徴を生かして本機を使用する場面としては、まず軽量/コンパクトでファンレスであることを考えると、レコーディング・スタジオなどのモニター・スピーカーでの使用や店舗のBGM用スピーカーでの使用が考えられるでしょう。また、数多くのシーリング・スピーカーやウォール・スピーカーを必要とするホールや劇場の設備用アンプとしても、コンパクトでスペースを必要とせず静音性に優れているので重宝しそうです。もし、ステレオでの使用法ではパワー感が足りないという場合は複数台を用意してブリッジ・モードを利用するという方法も考えられるでしょう。これはコスト・パフォーマンスに優れた本機ならではといえると思います。
静音性に優れ、シンプルな使い勝手ながら、見た目以上のパワーを持つCPL150。さまざまなシチュエーションで活躍できるパワー・アンプだと感じました。
須藤浩
【Profile】PAカンパニーのサウンド・オフィス代表。コンサート、イベント、式典から演劇、ミュージカルまで幅広く手掛けている。特に2.5次元系が得意。音響系の専門学校で後進の指導にもあたっている。
CLASSIC PRO CPL150
オープン・プライス
(市場予想価格:19,800円前後)

SPECIFICATIONS
▪動作方式:クラスAB ▪入力インピーダンス:20kΩ ▪入力レベル:21dBv/9V ▪ステレオ出力:45Wx2(8Ω)、75W×2(4Ω) ▪ブリッジ出力:150Wx1(8Ω) ▪周波数特性:10Hz~50kHz(−1.5dB) ▪SN比(dBA、RMS):80dB以上 ▪ダンピング・ファクター(1kHz、8Ω):150以上 ▪感度:0.775V/26dB/1.4V ▪スルーレート:35V/μs ▪クロストーク@定格電力(1kHz、8Ω):70dB以上 ▪消費電力(1/8パワー):100W ▪電源電圧:100V(50/60Hz) ▪保護回路:ショート・サーキット保護、DC保護、リミッター、熱保護、主電源異常保護 ▪外形寸法:485(W)×44(H)×250(D)mm(突起含まず) ▪重量:5.4kg