NEUTRIKには膨大な種類のケーブル・コネクターやアクセサリーがあるが、手に取ると、耐久性や作業効率を上げるためのアイディアが随所に見られ興味深い。そんな同社製品に息づく“現場を助けるための工夫”の数々を、取締役社長である若林拓也氏に話を聞きながら紹介しよう。
XLRタイプ・ケーブル・コネクター
まずはXLRタイプ・ケーブル・コネクターから。世界中で愛用されているXXシリーズは3〜7ピン、10ピン・タイプをラインナップしているが、ここで紹介するのは3ピン・タイプだ。
「一般的なXLRタイプ・コネクターのメスは、オスとの接点が2カ所であることが多いですが、当社の3ピンのメスはカゴ状にふわっとオスを囲い込むような形になっていて、7点で接触します。1カ所切れ目を入れていて、規格よりも太いオスや細いオスでもある程度は柔軟に対応できるのも特徴です。さらに、メス側にカタカタ動くような遊びを持たせることで振動してもオスの動きに追従して接触が損なわれません。10年ほど前にこのカゴ状のものを採用してから接触不良のクレームは1件もないです」
この形状はXLRタイプ・レセプタクル・コネクターの3ピン・タイプにも用いられ、共にトラブルの許されないライブや放送の現場で信頼を勝ち取っている。






もう1つ、XLRタイプ・ケーブル・コネクターで注目したいのがコンバートコンと呼ばれるモデル。ハウジングをスライドさせることでオス/メスの切り替えが可能なのだ。
「当社が世界で初めて採用した機構です。これも10年ほど前からあるのですが、意外と知られていなくて、SNSなどでその動きが紹介されると驚かれますね。変換ケーブルの代替として、また、作られた年代によってオスとメスが変わるようなトーン・ジェネレーターや計測器の接続にも便利です」




ほかにも、保護等級IP65で防塵/防滴性能が高くUL 50E認定で紫外線に強いTOP(TRUE OUTDOOR PROTECTION)シリーズ、スイッチなしのマイクをスイッチ付きにできるFXSシリーズ、抜け防止の機構を備えたNC3FX-SPEC、角度を付け狭い場所での設置を可能にするRXシリーズなどユニークなモデルが用意されている。






XLRタイプ・ケーブル・コネクター用アクセサリー
XLRタイプ・ケーブル・コネクター用のアクセサリーには、マルチケーブルのチャンネル識別などに役立つ10色のカラー・ブッシングやカラー・リング、中にラベルを埋め込めるクリア・リングなどが用意されているが、2022年にリリースされた蓄光リングは一際ユニークだ。その名の通り、明るいところで光を蓄えることにより、その後暗くなったときに光るというもの。
「SNSで“こういったものがあったら助かります”という書き込みを見つけまして、面白そうだと思ってサンプルを作ってアップしたところ良い評価をいただいて。さらに複数色あればなお良いとのお声をいただき、それに応える形で5色のバリエーションで出来上がったのがこの製品です」
NEUTRIKには、世の中にないものを考えて製品化するカルチャーがある。それは、こうしてユーザーの声に応える形で開発を行うところにも表れているだろう。アクセサリーにはほかにも、太めのケーブルに対応するブッシング、ケーブルを引きずっても安心な、ケーブル・コネクター全体を保護するRUBBER-CAP-CABLE、防塵/防滴コネクターと組み合わせて屋外で使用するTOPシリーズ・キャップなどが用意されている。




XLRタイプ・レセプタクル・コネクター
XLRタイプ・レセプタクル・コネクターは、主に16穴の19インチ・パネルとの組み合わせで使用されるDLXシリーズが人気だが、先述したようにこちらも3ピン・タイプのメスにはカゴ状の端子が採用されており、オス側の動きに追従できる適度な遊びも備えている。フル・メタル・ハウジングでEMC対策がとられていることも特徴だ。
また、レセプタクル・コネクターにもTOPシリーズが展開されており、高い防塵/防滴性能(保護等級IP65)と紫外線対策を含めた耐候性(UL 50E認定)を備えたモデルがラインナップされている。








XLRタイプ・レセプタクル・コネクター用アクセサリー
XLRタイプ・レセプタクル・コネクター用のアクセサリーもバラエティに富んだモデルがそろっている。あると確実に便利なのが紐付きキャップだ。
「SCF-JとSCM-Jという製品を用意しています。紐なしのモデルもありますが、なくすことが多いようでこちらを選ばれるお客様が多いです。実はもともとヨーロッパでデザインされたものがあったのですが、欧米仕様というか、キャップの開け閉めが非常に固くて使い勝手が悪かったので、着脱が容易なものを開発しました」
さらに、省スペースかつ保護等級IP42の防塵/防滴機能を備えるカバーSCDXや、屋外での使用を想定した保護等級IP65の防塵/防滴機能を備えるカバーSCD-Wも用意されている。SCD-Wから派生して、締め忘れ防止機構を備えたSCCD-Wも生まれた。
「ケーブル・コネクターをつなげないときはバネによって自動的に蓋が閉まります。必ず蓋を閉めなければならないシーンがあるときはこちらをお勧めします。もちろん保護等級IP65です」
直感的な識別が可能な色分けアイテムとしては、6色のバリエーションがそろうガスケットや、10色のバリエーションでラベルも貼れるカラー銘板がラインナップされている。


◎本記事は『音響映像設備マニュアル 2023年改訂版』より転載しています。
1980年代より、長年にわたって全国の専門学校等で教科書としてご採用いただいている音響/映像/照明の総合解説書『音響映像設備マニュアル』。2年振りとなる本改訂版では、随所を最新情報にアップデートしました。