KEF LS50 Meta × 瀬戸勝之 〜新開発MAT技術を採用したパッシブ・スピーカーをチェック!

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 イギリス発祥のオーディオ・ブランド、KEFがパッシブ・スピーカーのLS50 Metaを発表した。LS50 Metaには新開発のMAT技術が採用されるなど、音質的な進化が著しいという。今回はstudio SpaceLab代表の瀬戸勝之氏に、KEF MUSIC GALLERYでLS50 Metaと旧LS50との比較試聴をしていただくとともに、同ギャラリーの野口正紀氏にはLS50 Metaに搭載された技術について解説いただいた。

Photo:Yusuke Kitamura

 

瀬戸勝之:1975年生まれ。3Dサウンド・デザイナー/ミックス・エンジニア/プロデューサーとして、イベントや商業施設など数々の空間デザインを手掛けている。そのほか、5.1chサラウンドに特化したスタジオのstudio SpaceLabも運営

 

独自開発のMAT技術により余計な音を排除
全帯域のバランスの良さを向上させた

LS50 Metaが旧モデルのLS50から音質的にアップデートした理由を教えてください。

野口 LS50 Metaは、スピーカーの構造上出てしまう余計な音を極力排除するために、さまざまなパーツをアップデートしています。まず12世代のUni-Qドライバーは、マグネットを変更したことでスピーカー・レスポンスが約40%向上しました。また、スピーカー後方から出てくる不要な音の99パーセントを吸収するMAT(Metamaterial Absorption Technology)技術も搭載しています。これにより、音が明瞭(めいりょう)に、輪郭がはっきりとしました。MAT技術は共同開発を行ったACOUSTIC METAMATERIALS GROUPというチームが持っていた、エアコンの通気口から出てくるノイズを物理的に消す技術を応用したものです。本来オーディオ分野の技術ではありませんでしたが、高品質な音作りの鍵になりました。

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LS50 Metaのフロント・パネル。12世代のUni-Qドライバーを搭載し、タンジェリン・ウェーブガイドによって中高音の拡散性を高めて、高域のひずみを抑えている

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LS50 Metaのリア・パネルにバスレフ・ポートを用意

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ドライバー後方に設置されたMATのプレート

瀬戸さんのLS50 Metaの印象は?

瀬戸 高級感のあるデザインを裏切らない、高品質なサウンドです。KEFのスピーカーを聴いたのは初めてでしたが、低域から高域まで全体のバランスが良く、音がぼやけていないという印象です。今回、85~90dBのレベルで試聴したところ、そこでのミックス・バランスが優秀だと思いました。加えて、共振音や、スピーカー・スタンドからのにじんだ音も聴こえません。これは、堅牢で重みがあるエンクロージャーが良い結果を生んでいるのだと思いました。

 

LS50と比べてサウンドの違いは感じられましたか?

瀬戸 旧モデルのLS50は、スネアなどが目立って荒々しく感じ、音量を上げると音が若干分離して聴こえました。ただ、中高域が出るので抜けは感じやすいです。そこは好みなので、LS50の方が好きな方も居るとは思います。LS50 Metaはレベルが変化してもバランスが崩れませんし、大音量でもひずみは感じられません。EQなどの調整が不要なので、音量を上げることにストレスが無いです。あと、離れて聴いてもとても気持ち良いんです。ハの字に配置したり対策をしなくても、問題無く聴こえるというのは大きな利点だと思います。

野口 中高域は、一般的に指向角度が狭くなります。ドライバーに採用したタンジェリン・ウェーブガイドは、高域自体のひずみを抑えつつ、できるだけ広範囲に中高音を届けます。それが“聴き心地の良さ”につながっていると思いますね。家庭ではいろいろな場所で作業しながら音楽を聴くこともあるので、どこで聴いても音の軸がズレないことと、長時間のリスニングでも耳疲れしない音作りを行っているんです。

瀬戸 高域が耳に痛くないので、前に張り付いたクラブ・ミュージックを聴いていても全く疲れません。そして何より全体のバランスが良いです。何かがブーストされているときに発生する雑味が全くありません。これについては、ここ最近のスピーカーではトップ・クラスだと思います。

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今回は「デスクトップとテレビのリビング両方の幅の広さを検討するために、2mのトライアングルで試聴した」と瀬戸氏

ミックス時においては、どのような活躍が期待できるでしょうか?

瀬戸 現代のアウトプットの環境はイアフォンが主流です。イアフォンは点音源スピーカーに近い再生能力ですから、3ウェイなどのモニターよりもLS50 Metaは近い環境だと思うんです。最終的なミックスの判断をする際に、セカンド・モニターとして大いに活躍すると思います。また最近は打ち込みの音楽が主流になり、エッジの効いた音作りが目立つようになりました。その結果、周波数帯域ごとの個性が強過ぎるスピーカーではジャッジが難しくなってきています。バランス良く再生するLS50 Metaは、20年という長い目で見ても重宝しそうです。

 

LS50 Metaは、カラーを4種類用意していますね。

野口 KEFはユーザーの方々に、耳だけでなく目でも楽しんでいただけるスピーカーを提供していきたいと思います。

瀬戸 音を鳴らしたいと思わせることは大事ですから、今後は優れたデザイン性がスピーカーにおいてさらに重要になると思います。LS50 Metaはビジュアル的にも音楽的にも優れていて、さまざまな意味で心地良さを感じるスピーカーです。

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カラーはマット仕上げで、カーボン・ブラック、チタニウム・グレー、ミネラル・ホワイト、ロイヤル・ブルー(スペシャル・エディション)の4種類を用意

SPECIFICATIONS
■ドライバー・ユニット:Uni-Qドライバー・アレイ(HF:25mmMAT搭載ベンテッド・アルミ・ドーム、MF/LF:130mmアルミニウム・コーン) ■クロスオーバー周波数:2.1kHz ■周波数特性(–6dB):47Hz~45kHz ■全高調波ひずみ率:0.4%以下(@175Hz~20kHz)、0.1%以下(@300Hz~10kHz) ■最大出力(SPL):106dB ■感度:85dB ■推奨アンプ出力:40~100W ■外形寸法:200(W)×302(H)×280.5(D)mm ■重量:7.8kg

 

KEF LS50 Meta 製品情報

jp.kef.com

 

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