ハイエンド・オーディオI/Oの中でも、AVID Pro Tools|HDとThunderbolt両対応、Dante対応、マイクプリ搭載と、高機能を1Uサイズに凝縮したFOCUSRITE PRO Redシリーズ。その機能を拡張するRedNet R1が登場したことにより、スタジオのコアとしてのRedシリーズが存在感を増すことになった。ここではエンジニアの森元浩二.氏に、そのRedNet R1で何ができるのかを解き明かしていただこう。
Photo:Takashi Yashima
FOCUSRITE RedNet R1
88,000円
Redシリーズの入力や出力レベルのコントロールはもちろん、Pro Tools|HDX、Thunderbolt、Redシリーズの出力、さらにはDanteを含む全出力の形式と出力先を瞬時に切り替えることが可能なコントローラー。最大7.1.4chに対応する。Redシリーズのマイクプリ・リモートも可能。トークバックやヘッドフォン・アウトも備え、スタジオのセンターとしての機能を担う。
7.1.4chのイマーシブ環境まで対応できるモニター・システム
コストが障害になっている人は検討の価値がありますよ
prime sound studio formのチーフ・エンジニアを務め、Jポップのフィールドで数多くのヒット作品に携わってきた森元浩二.氏。1年半ほどRed 8Preを使用している氏に、実際にRedNet R1を試した上で、その可能性を語っていただいた。
スピーカーの切り替えからイマーシブまで
10万円以下の追加投資でコントロール
森元氏は長年、PRISM SOUND ADA-8XRをメインのオーディオ・インターフェースとして使用してきたが、2018年にFOCUSRITE Red 8Preを追加購入した。
「自宅やformでは主にADA-8XRを使用していますが、Red 8Preは主にそれ以外の持ち出し用として。また、厚みのある音のADA-8XRに対して、Red 8Preは“新しい音”……現代的なスピード感のあるサウンドがするので、それが合う曲では比較した上でRed 8Preを使っています」
そんな氏によれば、RedNet R1はRedシリーズのモニター・コントローラーとして非常に優れた機能を持っているという。まずは氏の実用案を聞いてみた。
「私の用途で言えば、これまでRed 8Preを持ち出した際は、本体のモニター・セクションを使っていました。1ペアのステレオ・スピーカー+ヘッドフォンであれば対応できましたが、モニター・スピーカーの切り替えができなかったんです。RedNet R1があれば、それが実現できるようになるのがまず便利なポイントです」
Redシリーズ・クラスのオーディオ・インターフェースでプライベート・スタジオを構築したい人には、複数のスピーカー・セットを切り替えるモニター・コントローラーは必須だろう。森元氏は、RedNet R1の費用対効果の大きさを指摘する。
「モニター・コントローラーは、Redクラスのものに見合う製品は高い……下手をしたらRedより高いものを選ばないと釣り合わないし、選択肢も少ない。そのくらいコストをかけないとちゃんとした音が聴けないと思います」
RedNet R1では、8つのインプット・ソースと8つのスピーカー・セットを自由に組み合わせることができる。しかも、最大で7.1.4chのDolby Atmosセットアップまで対応可能だ。
「7.1chサラウンドはもちろん、私のRed 8Preや、Red 16Lineはアナログ出力が18chあるので、7.1.4chもできる。特にイマーシブ環境の構築には、どうしてもコストがかかる中、Redに10万円を切るRedNet R1を加えるだけで済むわけです。他社のインターフェース+コントローラーとは、導入コストが1ケタ違ってきます。Red+RedNet R1をモニター・コントローラーとして“だけ”使ったとしても安いくらいです。機種によっては、イマーシブ対応のモニター・コントローラーのリモコンだけでも、それと同じくらいの価格がしますから」
柔軟なルーティングソフトで簡単に設定
手元で切り替えやコントロールができる
低コストで、音質劣化の無いモニター・コントローラー機能を追加できるRedNet R1。費用や音質だけでなく、機能面でも優れた点が多いことに森元氏は言及してくれた。
「まず、各スピーカー・チャンネルのレベルがコントロールできます。ステレオ・スピーカーA/B/Cのレベルをそろえられるのはもちろんですが、セット内のスピーカーごとの調整ができる。サラウンドの場合、リアだけを上げたり下げたりして確認することも簡単に行えます。マルチの各チャンネル・ソロも可能です」
Danteを含む、豊富なインプットとアウトプットを備えていることも大きな特徴だ。
「インプット・ソースも、Redのアナログ入力やDAWの出力、Danteなどが自由に設定できます。例えば、DAWのトラックにリファレンスとなる楽曲を置き、2ミックスとは異なる出力を設定しておく。それをRedNet R1上に振り分けておけば、いつでもミックス中の曲とリファレンスを聴き比べることができます。サラウンド・モニターのL/Rをステレオ・モニターとし、即座に切り替えることも可能です」
こうしたセットアップは、専用アプリケーションRedNet Controlでグラフィカルに設定可能。優れた機能を持つソフトだが、“実作業上、物理的な操作子があった方がよい”と思われる機能をうまく抽出したのが、このRedNet R1と言えるだろう。
「DIMやSOLO、MUTEといったモニター・コントローラーに必須のボタンはもちろんですが、便利なのは“A/B”。ラージとニアフィールドなど、頻繁に切り替えるものはここにアサインしておけます」


リモート・ヘッド・アンプの操作も可能
PoE対応のキュー・システムも実現
そのほか、Redシリーズのマイクプリのリモート・コントロールやヘッドフォン・アウト、4系統のトークバックを備えているのもRedNet R1のポイントだ。
「リモート・ヘッド・アンプとして使えるようになるのでRedシリーズを手元に置いておかなくてもいいようになりますね。トークバックは4系統あるので、例えばドラムの人だけに指示することもできます……現実的に考えてそういうケースは無いでしょうが、恐らくポスプロでのマルチルーム作業を視野に入れているのでしょう」
トークバックと併せて、RedNet AM2やRedNet X2Pと組み合わせることで、RedNet&Danteを使ったキュー・システムも構築可能となっている。
「プレイヤーが手元でバランスをコントロールすることこそできませんが、エンジニア×1:プレイヤー×1くらいなら、エンジニアがRedNet Controlでバランスを取ってあげればいい。Danteのレイテンシーが数msありますが、Pro Tools|HDXシステムなら実用上は問題ないでしょうね。RedNet R1とAM2はPoE対応スイッチから給電できるので、配線もイーサーネット・ケーブル1本で済みます」
これまで数多くのスタジオ設立に携わってきた森元氏だけに、モニター系統やキュー・システム、ワイアリングの重要性についての見識は深い。RedNetを使うことで、シンプルかつローコストで高品位なシステム構築が可能な点が、氏の目には魅力として映るようだ。
「イマーシブ環境を整えたくても、I/Oやモニター・コントロールのコストが障害になっていて悩んでいる人は、検討の価値があると思います。私も自宅スタジオに、イマーシブに向けてスピーカー・マウントと配線の用意はしてあるのですが、こういうツールがあると、やる気になりますよね」
FOCUSRITE RedNet R1 / Redシリーズ 製品情報
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