「FOCUSRITE Red 16Line」製品レビュー:Thunderbolt 3/Pro Tools|HDシステム対応のオーディオI/O

FOCUSRITERed 16Line
FOCUSRITE Red 16Lineはマイクプリを2chのみにし、ライン入出力に重点を置いたオーディオ・インターフェース。1Uサイズに最大64イン/64アウトの入出力を装備しています。ライブ録音などで多チャンネル化の需要が高まっている昨今、各社が競うようにこの手の製品を発表しているので気になるところです。

最大64イン/64アウトの入出力
最大3台をDigiLink接続して拡張可能

接続方式は、AVID Pro Tools|HDまたはHDXのインターフェースとして使うためのMini DigiLink、Thunderbolt 1~3に対応したMacで使うためのThunderbolt 3(Thunderbolt 1または2で接続するには変換アダプターが必要)です。入出力はアナログのほか、イーサーネットのポートを利用して接続するDante、そしてADATとS/P DIFのデジタル系統があります。ルーティングはDigiLinkで接続したPro ToolsのI/Oセットアップ画面、または専用ソフトFocusrite Controlで設定可能。Focusrite Controlを使うためにはMacとのThunderbolt接続が必須です。

Danteは近年話題になっているTCP/IPを利用したデジタル音声ネットワークの規格。Red 16Lineでは32イン/32アウトが利用できます。Danteインターフェース・カードが備わったレコーダーやコンピューターに低レイテンシーで接続が可能ですが、Dante Virtual Soundcardというソフトウェアをインストールしたコンピューターなら、イーサーネット端子を使ってLANケーブルで直接接続できます。ただし、この接続方法ではレイテンシーが大きく、インプットをモニタリングしながらレコーディングするような使い方には不向き。しかし、ライブ録音などでは効力を発揮します。イーサーネット・ハブで信号が分岐できるのもDanteの強みです。ルーティング次第ではDante入出力をMini DigiLinkやThunderbolt接続環境の中で利用することも可能です。

アナログ入出力はD-Sub端子で16イン/16アウトですが、これとは別にモニター・アウト(TRSフォーンL/R)があります。また、2chのRed Evolutionマイクプリと2chのインストゥルメント入力も装備。48Vのファンタム電源やローカット、位相反転も付いています。

では実際に使ってみましょう。まずは筆者スタジオのPro Tools|HDXカードとDigiLinkで接続してみました。接続はMini DigiLinkケーブルを2本使います。これでPro Tools側ではRed 16LineをHD I/O×2台分として認識し、64chの入出力が利用できます。LOOP SYNC端子も装備しているので、既存のHDXシステムに組み込むことも簡単。今回は試していませんが、最大3台のRed 16LineをDigiLinkで接続して入出力を拡張できるとのことです。

次にAPPLE MacBook ProとThunderboltで接続。ドライバー・ソフトなどは必要無く、ケーブルでつなぐだけで簡単に認識します。Thunderbolt接続でもDigiLink接続と同様、64イン/64アウトの入出力が利用可能です。

セパレーションが良く透明感がある音
奥行きも手に取るように分かる

アナログ出力の音質ですが、D-Subとモニター・アウトでは若干の違いがあるものの、とてもクリアな音です。全帯域にわたってセパレーションが良く、シンバルの音なども透明感があります。レンジが広く、奥行きも手に取るように分かって申し分ない音なのですが、やや高域が持ち上がったような音の傾向があるようです。

接続方法によって、かなり音質が変わることも分かりました。DigiLinkによる接続は最も透明感があり、シャキっとした印象。Thunderbolt接続はナチュラルで普段聴き慣れた音に最も近く、少し輪郭が丸くなります。Dante接続も非常に良い音ですが、上記の2つに比べると少しザラつきを感じました。このあたりはインターフェースというよりも接続の規格に原因があるのかもしれません。いずれにしても、このクオリティの高さはライバル機をしのぐ勢いです。

Red Evolutionマイクプリの音質も非常にクリアで、S/Nも優れています。従来のFOCUSRITEのイメージとは違った、より今っぽい感じの印象も受けました。同社のマイクプリ、ISAシリーズのサチュレーションを再現した“AIRモード”をオンにするとやや明るさが増し、エンハンスされたように元気かつ抜けの良い音に変わります。ボーカルやアコギなどに合うでしょう。

付属の専用ソフトFocusrite Controlにも触れてみました。Red 16Lineのフロント・パネルではダイアルとボタンを兼用したコントローラーでパラメーターを動かしてチャンネル設定などをしますが、Focusrite Controlでは見慣れたフェーダーの表示でレベルを簡単に操作できるようになります。マイクのゲイン調整などもこちらの方が断然やりやすいですね。ルーティングの画面では、内蔵された2つのヘッドホン端子に別々のモニター・ソースをアサインすることもできました。分かりやすさと便利さのあるFocusrite Controlはぜひ利用したいところです。

▲Red 16Lineの設定をコンピューターからリモートで行えるソフトウェア、Focusrite Control。本体フロント・パネルで操作できるすべての機能のほか、最大64×64入出力のルーティングなどが可能だ ▲Red 16Lineの設定をコンピューターからリモートで行えるソフトウェア、Focusrite Control。本体フロント・パネルで操作できるすべての機能のほか、最大64×64入出力のルーティングなどが可能だ

また、本機には“ループ・バック”と呼ばれるバーチャルなステレオ・チャンネルが用意されており、インターフェース内でミックスされた音がここにルーティングされる仕組みになっています。このチャンネルをDAWに送れば2ミックスの録音が可能です。このようなルーティングもFocusrite Controlで行えます。

誌面の関係上すべての機能を紹介することはできませんでしたが、何よりとても音の良いオーディオ・インターフェースだという強い印象を受けました。それだけで十分購入動機になってしまう製品ですね。

▲リア・パネル。左からDante接続端子(プライマリー/セカンダリー)、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、LOOP SYNCイン/アウト(BNC)、Thunderbolt 3接続端子×2とADAT(オプティカル)イン/アウト×2系統、Mini DigiLink端子×2とS/P DIFコアキシャル・イン/アウト、モニター・アウト(TRSフォーンL/R)、ライン・アウト(D-Sub)×2、ライン・イン(D-Sub)×2、マイク・イン(XLR)×2が並ぶ ▲リア・パネル。左からDante接続端子(プライマリー/セカンダリー)、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、LOOP SYNCイン/アウト(BNC)、Thunderbolt 3接続端子×2とADAT(オプティカル)イン/アウト×2系統、Mini DigiLink端子×2とS/P DIFコアキシャル・イン/アウト、モニター・アウト(TRSフォーンL/R)、ライン・アウト(D-Sub)×2、ライン・イン(D-Sub)×2、マイク・イン(XLR)×2が並ぶ

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年12月号より)

FOCUSRITE
Red 16Line
オープン・プライス(市場予想価格333,334円前後)
▪接続方式:Thunderbolt 1/2/3(Mac専用、Thunderbolt 1/2での接続には変換アダプターが必要)またはAVID Pro Tools|HDシステムのMini DigiLink ▪サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪周波数特性:20Hz~35kHz ▪オーディオ入出力:最大64イン/64アウト(アナログ+デジタル) ▪内蔵マイクプリ数:2 ▪ダイナミック・レンジ:119dB(マイク・イン、ライン・イン)、117dB(インストゥルメント・イン) ▪最大入力レベル:+19dB(マイク・イン)、+18dBまたは+24dB(ライン・イン)、+15dB(インストゥルメント・イン) ▪外形寸法:483(W)×44(H)×340(D)mm ▪重量:5.04kg 【REQUIREMENTS】 ▪Thunderbolt:macOS Sierra以上 ▪DigiLink:Mini DigiLink端子を備えたAVID Pro Tools|HDまたはHDXのインターフェース