USBオーディオ・インターフェースや
DAWコントローラーとしても使用可能
まずはスペックを大まかに紹介していこう。入力はインプット32ch、AUXイン6chを搭載。32chのインプットすべてに、MIDAS Proシリーズのマイク・プリアンプを採用。出力はアウトプット18ch、AUXアウト6chを装備している。加えてMIDI IN、OUTも完備。さらにULTRANET端子とAES/EBUアウトも備え、AES50ネットワークを用いて、最大96chの入出力が割り当て可能となっている。
アルミニウムとスチール、カーボンを組み合わせた筐体には、MIDAS Proモーターライズ100mmフェーダーを25本装備。7インチ・フルカラーTFTディスプレイは、直射日光下でも視認可能だ。コンソールとしての使用だけではなく、32イン/32アウトのUSB 2.0オーディオ・インターフェースとして機能したり、Mackie ControlおよびHUIプロトコルに準拠したDAWコントローラーとしても扱える。
最大の特徴は、SD/SDHCカードを2枚挿入できるモジュールのDN32-Liveが、Expansion & Networkingスロットに標準で装備されていること。それによりSD/SDHCカードに、ライブ録音および再生が32イン/32アウトで可能になった。WAVデータがパラデータで録音されて本機でプレイバックもできる上、DAWにインポートしてミックスを行うこともできる。ライブ音源の制作はもちろん、ツアー中にバンド・メンバーが居ない状態でもバーチャル・リハーサルが可能。SDカードのスピード・クラスは最低でも10、容量は32GBを推奨している。それ以上の容量だとエラーが起きやすくなるそうだ。
Mac/Windows/Linuxでシーンの作成や操作ができる、M32-Editというソフトも用意。さらにAPPLE iPadによるリモート・コントロールが可能なM32 Mixや、スマートフォンでウェッジ・モニターのミックス調整ができるM32-Qといったアプリも完備している。
感覚的に使える操作子のレイアウト
シルキーで彩度が豊かなサウンド
今回のテストは弊社のライブ・ハウス“原宿ストロボカフェ”で敢行。実際の公演でPAオペレートを行った。音質はシルキーで、音の彩度が豊かな印象。チャンネル・ストリップのレイアウトやつまみ、ボタンのサイズ感などが絶妙で、ストレス無く音作りが行えた。各セクションに配置されたVIEWボタンを押すと、瞬時にパラメーターをディスプレイに表示できる。また、卓全体の視認性が高いため、暗くなる本番中でも微調整がスムーズに行えた。
エフェクトはUREI 1176LN、TELETRONIX LA-2A、FAIRCHILD 670など、クラシック・アウトボードを模したものを用意(画面①)。そのほか5バンドのマルチバンド・コンプレッサーなど、現代的なエフェクトも収録されている。エフェクト・スロットは全部で8つで、スロット1~4はインサートとサイド・チェイン・タイプのエフェクトに対応し、スロット5~8はインサート・タイプのエフェクトのみ使用可能。8スロットもあるのでアウトボードを必要とせず、本機のみで完結できた。
次にSDカードへの録音をテスト。ディスプレイ右横にあるスクリーン・セレクション・ボタンのSET UPから、Cardタブに入ると録音ボタンがある。SDカードに録音をしていたものをAVID Pro Toolsにインポートすると、各トラックのWAVに1から順に番号が付けられ、読み込むだけでセッション・ファイルに展開できる。SDカードの仕様で1時間半の公演が4つほどに分割されてしまっていたが、そのままつなげると問題なく再生できた。ライブ盤をリリースする際も後でじっくりミックスができるだろう。
実際に触ってみると音楽的に豊かなサウンドで、直感的に操作できるコンソールだというのが実感できた。多機能で自由度が高いため、イン/アウトのルーティングの初期設定は多少難航したが、さまざまなリクエストに制限なく応えられるのはとても心強い。このクラスのデジタル・コンソールとしては価格が抑えられているのも魅力的だ。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年8月号より)