「IK MULTIMEDIA Axe I/O」製品レビュー:ギター録音に特化した機能を持つUSBオーディオ・インターフェース

IK MULTIMEDIAAxe I/O
IK MULTIMEDIAから、ギターに特化した機能を備える2イン/5アウトのUSBオーディオI/O、Axe I/Oが登場した。備わっている機能をじっくりと試してみたので、その実力を紹介しよう。

入力インピーダンス調整でサウンドが変化
プリアンプ回路は2種類を切り替え可能

Axe I/Oは、ギター録音に便利な機能を詰め込んだオーディオI/O。フロント・パネルにはギター/ベース入力用のフォーン端子を2系統(ch1、ch2)備え、切り替えでリア・パネルのマイク/ライン入力端子(XLR/フォーン・コンボ)×2を使うことも可能だ。出力はライン(フォーン)×4とヘッドフォン・アウトのほか、AMP OUT(フォーン)という出力も用意。各ゲインやボリューム・ノブのほか、付属するアンプ&エフェクト・シミュレート・ソフトAmpliTube 4 Deluxeのプリセット切り替えなどに使用できるPRESETノブや、チューナーも装備している。

フロント・パネルには、ピックアップのタイプに合わせて切り替えるPASSIVE/ACTIVEスイッチが備わっている。チェックに使ったエレキギターのピックアップはパッシブなので、今回はスイッチをPASSIVEに切り替えて使用した(ACTIVEにした場合は入力インピーダンスが10kΩに固定され、後述のZ-TONEとJFET/PUREスイッチは機能しなくなる)。

▲︎リア・パネル。左からMIDI OUT、IN、USB、外部コントロール用端子(スイッチ型&ペダル型:フォーン)、ライン・アウト(フォーン)×4、マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)×2 ▲︎リア・パネル。左からMIDI OUT、IN、USB、外部コントロール用端子(スイッチ型&ペダル型:フォーン)、ライン・アウト(フォーン)×4、マイク/ライン・イン(XLR/フォーン・コンボ)×2

まずは最も興味深い機能であるZ-TONEを触ってみた。Z-TONEでは、入力インピーダンスが1MΩ〜2.2kΩの間で連続可変する。ツマミを極端にSHARP(1MΩ)に回しきった状態だとギラつきが強く硬めの音で、これまでのオーディオI/Oでも体験してきた“ラインっぽさ”を強く感じるサウンドになった。そこから少しずつBOLD側(2.2kΩ)にツマミを回していくと徐々に音が落ち着き、12時前後で聴きなじみのあるサウンドに変化。それはまさに“楽器的”な感触そのものである。程良くキラキラしていて弾力があり、密度の高い部分と薄い部分がバランス良く入り混じった立体的なサウンド。とにかく弾き心地が素晴らしく、ライン入力特有の演奏時のストレスから解放される。BOLD側に回し切ると太さや丸さ、弾力感が強くなり、極端なサウンドになるのだが、ここまでインピーダンスを調整できるのはとても安心感がある。演奏者はギターやピックアップに合わせて、直感的にちょうど気持ち良いところにツマミを合わせるだけでよい。

次にJFET/PUREスイッチを試してみる。このスイッチではキャラクターの異なるプリアンプ2種類を切り替えることが可能だ。JEFTモードは有機的でオーガニックなエッセンスがほんのり香る。PUREモードに比べて音の一部分にクッションが入っているような感覚で、弾いていてわずかな弾力や柔らかさを感じる音だ。また、アタックとサステインの音量が比較的近く、ピッキング直後すぐにリリース部分が膨らむため、全体的に太く感じる。一方、PUREモードはクリスピーで音像がはっきりとし、自身の演奏と直結しているかのような感覚が得られた。はっきり出過ぎて弾きづらいとか、聴こえてくる音がキツく冷たい印象というわけではなく、エレキギターに求められる温かさや丸みは維持したまま解像度が高まり、演奏から音が出るまでのプロセスがスピーディに感じられる。サステイン部分に比べてアタックがより目立つので、歯切れの良い状態に信号を整えて録ることが可能だ。イメージしたギター・サウンドや弾き心地に近付けるため、入力の段階でこれほど選択肢があるのは非常に心強い。

このように、インピーダンスのマッチングやプリアンプの選択により、エレキギターの本来の持ち味を最大限に生かしリアルな鮮度を保った音をDAWまで届けられる。ライン録音によるギタリストの長年の悩みを解決する決め手になりそうだ。

簡単にリアンプができるAMP OUT
楽器本来のサウンドを維持して録音できる

Axe I/Oの特徴の一つ、リアンプ機能をチェックする。リアンプ方法はとても簡単。まずは録音したギターの素の音を先述のAMP OUTから出力するように設定する。その出力を実機のギター・アンプに入力してキャビネットを鳴らし、マイクを立ててAxe I/Oに入力して録るだけだ。AMP OUTはフローティング・アンバランス出力仕様となっており、ギター・アンプとのマッチングが図られているため楽器本来のサウンドを維持したまま録音できるとのこと。リアンプ・ボックスなどを新たに購入する必要も無く、極めてシンプルなアクションのみでリアンプ作業が可能だ。ペダル・エフェクトをつなげて、効き具合を調節しながら再録音するといったこともできるだろう。

▲Axe I/Oのほとんどの機能を操作できるソフト、Axe I/O Control Panel。入出力やサンプリング・レートの設定のほか、外部コントローラー接続時のMIDIチャンネル設定などが行える。外部コントローラーはAmpliTube 4 Deluxeのエフェクトのオン/オフなどで活用可能 ▲Axe I/Oのほとんどの機能を操作できるソフト、Axe I/O Control Panel。入出力やサンプリング・レートの設定のほか、外部コントローラー接続時のMIDIチャンネル設定などが行える。外部コントローラーはAm
pliTube 4 Deluxeのエフェクトのオン/オフなどで活用可能

Axe I/O Control Panelという、Axe I/Oをコンピューター上から操作できるソフトも付属している。非常にシンプルで見やすいながらも必要な情報はしっかりそろっており、信号の入出力やMIDI関連の状態が一目で分かるのが便利だ。そのほかにも多数のソフトが付属しており、それぞれが実にハイクオリティで実用的。ギターとベースにおけるリアルな演奏性とサウンドを追求した高品位なアンプ&エフェクト・シミュレーターのAmpliTube 4 Deluxe、ミキシングやマスタリングで活躍する高性能ソフトのT-Racks 5から厳選した10種類のエフェクト、そして音楽制作のプラットホームとなるABLETON Live 10 Liteまでもバンドルされ、演奏から録音、作曲、ミキシング、マスタリングと、楽曲制作の工程に必要なすべてが最初からそろっている。

Axe I/Oはエレキギターの録音に対して真摯(しんし)に向き合って開発されたデバイスだ。ギターの可能性を広げてくれる、ギタリストにとってはこの上なくありがたいオーディオI/Oである。ぜひとも体感してもらいたい。

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年8月号より)

IK MULTIMEDIA
Axe I/O
オープン・プライス(市場予想価格:45,000円前後)
▪接続方式:USB 2.0 ▪ビット/サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪入出力数:2イン/5アウト ▪周波数特性:3Hz〜32kHz ▪マイクプリ数:2 ▪ダイナミック・レンジ:116dB(マイク・イン1&2、ライン・イン1&2)、117dB(インスト・イン1&2) ▪電源:付属ACアダプター ▪外形寸法:238(W)×53(H)×211(D)mm ▪重量:1.3kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.11以降 ▪Windows:Windows7以降(64ビットのみ)