
16個の堅牢なパッドを装備
ノブやボタンでDAWやプラグインを操作
Atomは16個のパッドと多数のボタンやノブを備えたUSBパッド・コントローラーです。本体の大きさは202(W)×20.75(H)×195(D)mm、重量は450g。大き過ぎず小さ過ぎず、ちょうどいいサイズ感になっています。机の上でたたいていて動いてしまうこともなく、安定感も高いですね。
パッドの感触は、僕が今まで触ってきたパッド・コントローラーと比べると若干硬め。しかし、余裕もあって長時間たたいていても手が痛くなるようなことはありません。打ち込みではかなりの回数をたたくことになるので、パッド部分のタフさはとても重要ですが、Atomのパッドは堅牢そうです。
早速、Studio Oneを立ち上げてAtomを接続してみます。USBケーブルでつないでみると、トップ・パネル中央上部のインジケーターが青く光って、早くもセットアップが完了しました。煩わしい設定が一切無くすぐに使えるのは、面倒くさがりな僕にとって非常にうれしいポイントです。また、Atomは電源ケーブルが必要無く、USBバス・パワーで動作します。余計なケーブルを少なくできるというのは、どんなクリエイターにとっても重要でしょう。
接続時に光るインジケーターは、使用するDAWがStudio Oneのときは青色、そのほかのDAWのときは緑色に光ります。Studio Oneとは完全統合し、ブラウザーの表示/非表示、インストゥルメントやプリセットの選択のほか、ソングの再生や停止などのトランスポート操作はもちろん、ループの設定などもAtomから行うことが可能です。実際に作業してみたところ、ループ範囲へのズーム・イン/アウトまで操作できるのは非常に便利でした。
本体上部にある4つのノブには、立ち上げたプラグインなどに合わせて特定のパラメーターが自動でマッピングされますが、操作したいパラメーターをアサインすることも可能です。もちろん、ノブを動かしてオートメーションを描くこともできます。マウスだと動かしづらいパラメーターがある場合、このノブはとても便利ですね。

パッドは精密にベロシティを検知可能
音階を演奏できるキーボード・モードも用意
では、Studio One上で実際に使ってみましょう。Studio One付属インストゥルメント、Impact XTを立ち上げてみます。Impact XTのパッドに割り振られているカラーとリンクし、Atomのパッドが同じ色に光りました。実際にたたいて録音してみると、精密なベロシティ検知に驚かされます。パッドのベロシティ・カーブは3種類用意されており、細かく設定ができるので、好みに合わせてカスタマイズも可能です。
次に、僕がよく使用している生ドラム系の音源を立ち上げてみました。僕の使っているMIDIキーボードよりもベロシティの感度が良いので、かなりリアルに演奏&録音できます。繊細に録音されている音源のサンプルをしっかりトリガーしてくれて、“あれ、この音源はこんなに音が良かったっけ?”と感じてしまうほどでした。ノート・リピートという機能では、パッドを長押しするだけでロールを簡単に打ち込むことが可能。ビート・メイクには必要不可欠ですね。音価は1/4〜1/32まで選択できます。
ドラム音源に適したドラム・モードだけでなく、音階を演奏できるキーボード・モードも備わっています。1オクターブ分の演奏ができ、オクターブの移動も可能なので、簡単なフレーズの打ち込みならAtomでもできるでしょう。
そのほか、パッドはMIDIの打ち込みだけでなく、さまざまな機能の操作にも使います。例えば、本体左上の“SONG”という枠内の“Setup”ボタンを押して“ソング設定モード”をアクティブにすると、14番のパッドをたたいてテンポの検出が可能です。
最近では、自分のサンプル・フォルダーやSpliceのブラウザーから、サンプルを直接トラックにペタペタと張ってリズムを作ったり、ループを組んだりするクリエイターが多いでしょう。しかし、こうしてサンプラーやソフト音源を実際にたたいて鳴らすだけで、グルーブに大きな差が出てきます。ループ素材と違って無駄な音が省けるので、使用するサウンドもしっかり精査できる感じがしました。
Atomは見た目がかっこいいので、スタジオ内だけでなく人前でパフォーマンスするときにも重宝する、とても素敵なアイテムです。僕も、アーティストや作家たちが集まるコライティング・キャンプなどにAtomを持っていきたいと思っています。ぜひ、みなさんも試してみてください。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)