広範なダイナミック・レンジ
PADとリフト/アース・スイッチを搭載
まずベースでDI 10Aを試してみた。実際に音を聴いてみると、低域と高域の伸びが感じられ、中域は少しおとなしい印象だ。続いて、パッシブ・タイプのDI 20Pを試してみると、デフォルメされた雰囲気の無いナチュラルな音色に感じられた。どちらもゴリゴリとする中低域というよりは、奇麗なサウンドという印象であった。
次に、ピエゾ・タイプのエレアコにて使用を試みた。素で聴くと、DI 10Aのレンジの広さが的確にピッキングの音をとらえている。この滑らかさはMIDASのトランスによるものだろう。DI 20Pも同様の印象であったが、パッシブのため低域や高域には少し物足りなさも感じた。しかし、ピエゾ・タイプではないエレアコにはこちらの方が良いかもしれないとも思った。
続いて、ライン・レベルのデジタル・ピアノに使用した。DI 10Aは、フル・レベルに対してはクリップを感じたが、2段階のPADを使うことで対応できる。音色は同様に低域と高域に力強さを感じた。ステレオ・ソースを入力できるDI 20Pは、ステレオのライン楽器には容易に対応できる。音色もトランス色を感じるナチュラルなものだった。
全体の印象としては、広範なダイナミック・レンジを感じ取ることができた。それぞれのDIにはPADとリフト/アース・スイッチが付いているので、ひずみ/ノイズ対策も万全だ。
また別の機会に、現在行われているコンサート・ツアーの本番で使っているアコギにDI 10Aを使用してみた。マイクとピエゾがミックスされた音源である。滑らかでしっとりとした感じであった。やはり奇麗な印象だ。
ステレオ・ソースのバランス化に便利
トランスを利用したノイズ対策
RCAピン入力のついたDI 22PにはCDソースを入力して、DIを通さないアンバランスでの入力との比較を試みた。アンバランス入力で出てくる暴れた感じのハイとローが適度に抑えられ、滑らかな印象であった。またRCAとともにステレオ・ミニ/フォーン入力も可能なので、多様な再生機器に対応できる。多少のコンプ感があるのは、トランスによるものかと思われるが、効果的ともとらえられる。サミング・モノになるDI 10Pの音色は、DI 22Pの流れを汲む滑らかな印象。2イン/1アウトの簡易ミキサーにもなるので、レベルの違うモノラル・ソースをミックスするのに便利かと思われる。
民生用のCDプレーヤーなど、アンバランスのままミキサーに入力して使うことも多々あるが、DIを通してバランス出力にすることは、本来正しいことだ。電源を必要としないパッシブ・タイプであれば手軽に使うことができる。また、XLR入力のあるDI 10Aは、そのトランスを利用して、ホール送りなどのノイズ対策として使うこともできるだろう。FETタイプのDIが主流となっているが、トランス・タイプにもその良さがある。アクティブとパッシブの音色の違いも、それぞれの楽器の特徴によって使い分けることで、より引き出せるのではないだろうか。
DIシリーズのほかに、MIDASトランスを備えたパッシブ1入力/2出力信号スプリッターのDS 20と、パッシブ1入力/5出力信号スプリッターのDS 50も発売されている。コスト・パフォーマンスも良く、重量も負担になるものではないので、手軽に合ったものをチョイスするという使い方も良いのではないかと感じた。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年12月号より)