「LEWITT LCT 450」製品レビュー:アッテネーターを搭載した単一指向性コンデンサー・マイク

LEWITTLCT 450
LEWITTはオーストリアのマイク・メーカーで、真空管とFETの切り替えが可能だったり、ダイナミック用とコンデンサー用の2つのダイアフラムを1つのマイクに仕込んだりとユニークな製品を作っています。我々の制作拠点“SCRAMBLE STUDIO”でも、ドラム用のマイクにLEWITT DTP Beat Kit Pro7を愛用しており、ほかのLEWITT製マイクにも非常に興味がありました。

アッテネーション/ローカットを
ノイズレスでコントロール可能

今回レビューするLCT 450は、ラージ・ダイアフラムを搭載した単一指向性のコンデンサー・マイクで、最大入力音圧が158dB。公式Webサイトに最適な用途としてボーカルや打楽器、アコースティック楽器と書いてあるように、さまざまなソースに対応できそうです。ボディは亜鉛ダイキャスト製で、意外とゴツく迫力がありますので、同じような形をしたAKG C414を想像しているといい意味で裏切られます。コンデンサー・マイクは、ふとしたときに落としてしまうとすぐ凹んだりして、音質も精神もショックを受けることがあるので、耐久性のある作りだととても安心です。

本体にはボタンが2つ付いていて、片方がアッテネーション(20dBアッテネート)、もう片方が2段階のローカット(12dB/Oct@80Hz)です。この機能はライトでオン/オフを視認でき、押したときのノイズもありません。長押しするとロックがかかるようになっているので、不意のトラブル防止に役立ちます。

本機には、上位機種に搭載されているLEWITTの独自技術“オートマティック・アッテネーション”(音圧レベルをマイクが自動設定する機能)が付いていますので、急に大きな音が入っても大丈夫です。このようにさまざまなトラブル防止機能があるので、クリエイターとしてすぐ何かしたいときにすごく助かります。また付属品として、ショックマウントやマイク・ホルダー、ケース、ウィンド・スクリーンのほか、ラバー・バンドも入っていて、このような遊び心はクリエイターとして楽しくなりました!

中域にどっしりとした特徴があり
太い音質で録音できる

肝心の音についてですが、今回は、多人数のアイドルのボーカル録音で使用し、検証してみました。最初に抱いた印象は、とても音が太いということです。AKGのマイクはキラっとした印象でしたので、同じ感じかなと予想していましたが、中域にどっしりとした特徴があり、ボーカルに迫力を与えてくれる正反対の音質でした。我々が音を録るときに最重要事項として考えているのは“音が太いかどうか”なので、かなり好印象でした。

歌う人がたくさんいるとボーカルの声質もさまざまですが、声質はざっくりと二通り考えられると思っています。一つは低音に特徴がある基音タイプ、もう一つはソリッドな倍音タイプです。基音タイプはどっしりとしていますが声の抜けに問題があったり、対して倍音タイプは抜けがいいものの芯が出にくかったり耳に痛くなりがちです。ボーカリストの声質によって、マイクやマイクプリなど、録音するときのルーティンを変えたり、EQで調整したりしていきますが、LCT 450ですと1台で両タイプを非常にバランスよく録れると思いました。つまり、基音タイプはローカットなどを使用すればすっきりさせつつ前に出すことができますし、倍音タイプは声に芯を出し、存在感を作れるのです。

SCRAMBLE STUDIOではボーカル・マイクに、SONY C-800Gを使用するのが基本ですが、特に倍音タイプの声質のボーカルにはLCT 450の方がいい結果になることもあり、面白いなぁと思いました。

続いてアコースティック・ギターにて検証。いつもマイクを立てているネックとボディの中間を狙ってみました。声と同様太い音質で録れ、コード感が非常に奇麗でした。トランジェントが素晴らしく、ストローク時のピッキングのアタック感がはっきりと分かります。アルペジオ系のフレーズも上下が鮮明に伸びており、音が引っ込むことなく存在感を出してくれました。アコギを処理する際はEQでローを切ることが多いですが、ローを切っても存在感が無くならないので、曲によっていかようにも対処できるかと思います。

低価格帯のコンデンサー・マイクですと、抜けを重視したために、ハイに過剰なEQをかけたような耳に痛い音質になりがちですが、本機は芯を大事にしたマイクですので、我々のような太めな音が好きな人や、自分の録った音で芯が出ないと悩んでいる方にオススメできるのではないでしょうか。エレキギターなどに試しても面白そうなので、機会があれば試してみたいところです。このようなマイクが5万円弱というのは、非常にコスト・パフォーマンスに優れた素晴らしい機材だと思います。

▲LCT 450はラージ・ダイアフラムを搭載したコンデンサー・マイクで、3μm極薄ゴールド蒸着マイラー・ダイアフラムを採用している。ハウジングには1インチ・カプセルを搭載 ▲LCT 450はラージ・ダイアフラムを搭載したコンデンサー・マイクで、3μm極薄ゴールド蒸着マイラー・ダイアフラムを採用している。ハウジングには1インチ・カプセルを搭載

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年3月号より)

LEWITT
LCT 450
オープン・プライス(市場予想価格:48,889円前後)
▪形式:コンデンサー・マイク ▪指向性:単一指向 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪感度:18mV(ー35dBV) ▪SN比:85dB-A ▪最大SPL(THD=0.5%):138dB(アッテネーション・オフ)、158dB(20dBアッテネーション) ▪定格インピーダンス:150Ω未満 ▪等価雑音レベル:9dB-A ▪電源:48V±4V ▪外形寸法:52(W)×138(H)×36(D)mm ▪重量:357g ▪付属品:ショックマウント、マイク・ホルダー、ウインド・スクリーン、ケース、ラバー・バンド