
入力にピッチ補正エフェクトをアサイン可
100種類以上のインプット・プリセット
トップ・パネルには、サイズ156(W)×90(H)mmのTFTタッチ画面とパラメーターの選択用ジョグ・ダイアル、各種ボタン、入出力端子、ヘッド・アンプのゲイン・ツマミなどが並んでおり、操作性/視認性共に良くレイアウトされています。すぐに触ってみようという気になれますね。20アナログ・インの内訳は、クラスAヘッド・アンプ内蔵の16マイク・イン(XLR×12、XLR/TRSフォーン・コンボ×4)と2つのステレオ・ライン・イン(TRSフォーン)。全入力チャンネルに4バンド・パラメトリックEQとハイカット/ローカット、ゲート、コンプ+ディエッサーなどを備えているほか、任意チャンネルにピッチ補正エフェクトをアサインできます。音作りの際、EQやコンプを使うのが難しいという人もいるかと思いますが、プロのエンジニアが開発した100種類以上のインプット・プリセットを搭載する上、ウィザードに従う形で入力ゲイン調整やエフェクトの選択、ルーティングが行えるので、初心者でも比較的簡単にセットアップできるでしょう。さらに2種類のリバーブやモノラル/ステレオ・ディレイ、コーラス、ピッチ・シフターなど、全6種類のDSPエフェクトを4系統まで同時に使用可能。グループは、8DCA+8ミュートが用意されています。
出力は背面のメイン・アウトL/Rに加え、モノラルAUXアウト×6(ステレオ・リンク可)、AUXアウトL/R×2系統などを装備。モノラルAUXアウトが6つあれば通常のバンドのモニター送りの数としては十分ですし、別途2系統のAUXアウトL/Rもあるのでインイア・モニターの接続などに便利ですね。またメイン/AUXアウト共にリミッターやディレイ、ノッチ・フィルターを内蔵しているため、スピーカー保護やハウリング対策も万全です。
どっしりとした太めの音質
強めにかかるEQと自然な効果のコンプ
それでは実際に使用してみます。まず操作性ですが、タッチ画面だけでなく、物理スイッチやジョグ・ダイアルと組み合わせたコントロールなので分かりやすく、説明書などを全く見ずに触り始めてもスイスイ操作できますし、画面内のページ切り替えで悩むこともほぼありません。例えばトップ・パネルの“Mute Groups”ボタンを押すとミュート・グループの設定画面に移り(写真①)、“Phones”ボタンはヘッドフォンの音量画面など、直感的に行きたい画面へアクセスできます。チャンネルの音量やEQなどはタッチ画面でも操作できますが、ジョグ・ダイアルを使うとより快適。フェーダーレスの小型ミキサーにつきものである、操作性の問題をよく解決していますね。

奇数/偶数チャンネルをステレオ・リンクさせ、CD音源を入力しヘッド・アンプやEQ、コンプなどをチェックしてみます。比較的どっしりとした太めの音質ですね。薄っぺらい感じはなく、高域のクセもありません。アナログ・ミキサーを思わせる音です。次にガット・ギターをマイクで拾いモノラル入力したところ、特に低音弦がしっかりと再生される印象。先述の通りEQは4バンド・パラメトリックですが、どのバンドでも周波数ポイントを20Hz〜20KHzまで設定できるので、かなり幅広い音作りが可能です。Q幅は最狭で4.0とやや広めの設定ですが、PAでの使用であれば問題無いでしょう。イコライジングしてみると、ぐいぐい効きます。オールドのアナログEQを触っているような感覚になったほどです。それに対してコンプは非常に自然なかかり方。深くかけてもさほどこもるような印象がないので、思い切って使えると思います。
TouchMix-16はデジタル・ミキサーに必要な機能を網羅し、使い勝手が非常に良いモデルだと思います。PAエンジニアのみならず、ミュージシャンの方にもお勧めです。音質面も含めて、このクラスのデジタル・ミキサーが気になっている人は一度試してみる価値ありでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年7月号より)